第73話 カニパ
いきなり襲い掛かってきたパーティメンバーに向かって瑞葉は叫んだ。
「ちょ、ちょっとなに? なにするの?」
血走った目で市生は言った。
「いいか、このままじゃ俺たちは全滅だ。だがな、いい手を思いついたんだ」
そして剣を抜く。
「ひぃっ」
瑞葉は恐怖で身をすくませる。
「な、なに……?」
「俺たちは、今からお前を食う」
目を見開き、口を半開きにして驚愕の表情を浮かべる瑞葉。
「心配するな、遊斗は一流の僧侶だ。殺しはしない。ただ、足の一本を食わせてくれ、ってだけだ。大丈夫だ、すぐに治癒するさ」
「馬鹿言わないでっ! いやよ、いや! 食べるなら自分の体を食べなさいよ!」
「そこも話し合ったんだがな、やっぱり食うなら女の肉の方がうまいよな、ってことになってな。すまんな、瑞葉。みんなの命のためだ、その太ももの肉と血……俺たちにくれ」
「バカ!!! バカ!!! バッカ!!!! なに言ってんの、やめて、やめてよ、本気なの、あんたたち? や、やめなさいよ、やめ……」
瑞葉の両腕を篠田と遊斗ががっしりとつかむ。
足をばたつかせる瑞葉。
「あんまり動くなよ……致命傷になるぞ……」
そして市生が剣をふりかぶった瞬間――。
瑞葉は早口で呪文の詠唱を行った。
「地獄の炎火よ、我が敵を焼き滅ぼせ! 火炎!」
巨大な炎が市生の全身を覆った。
市生は火だるまのままあとずさる。
「あち! あち! くそ! あち! やりやがったな! このクソ女! パーティメンバ―を攻撃しやがったな!」
「あんたが先でしょーが!」
瑞葉が怒鳴ると、その腹に篠田のパンチが突き刺さった。
「ぐふっ……」
血を吐いて気を失い、床に倒れこむ瑞葉、その瑞葉の袖をまくると、やわらかそうな二の腕に篠田がかみついた。
ブシュッ! と血が噴き出す。
その血を喉を鳴らして飲み込む篠田。
「ジュル、グビ、グビ、グビ……! うめえ! 久しぶりの水分だぁ!」
それを見た遊斗も、瑞葉に噛みつく。
そして猛獣のように肉を食いちぎった。
全身にやけどを覆った市生は憎しみを隠しもせず、床に倒れている瑞葉の太ももに剣を突き立てた。
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「……人間ってこんなに醜くなれるもんなんだ……」
あまりに凄惨な光景に、俺はモニターから顔をそむけた。
「やっぱり、食い物くらいはあげなきゃいけないよな……」
そう言って、俺はみのりの口の中に俺が食べ残したエビフライの尻尾を投げ入れる。
みのりはそれをくちゃくちゃと音をたてて咀嚼し始めた。
もうみのりは俺たちに逆らう気なんてこれっぽっちもないみたいだった。
「あはは、みろや、カニバリズムパーティや! 略してカニパやな!」
ご先祖様は満足そうにそれを見ている。
と、そこにレイシアが口を挟んできた。
「あのですね……もう一組、このダンジョンに侵入者が来ているみたいなんですけど、どうします?」




