第70話 カロリーゼロ
「ところで俺たちも腹減りましたね……。なんか食うものないかな……。おい、レイシア、食糧ないか?」
レイシアはへそからチューブを差し込まれて無理やりこんにゃくゼリー(ゼロキロカロリー)を流し込まれている。
チューブの先はジョウゴみたいに開いていて、そこにみのりがひたすらこんにゃくゼリーを詰め込んでいるのだ。
レイシアのやつ、マイクロビキニを着ているもんだから、おなかがぷっくり膨らんでいるのがわかった。
うーん、まるで孕んでいるみたいだな。
苦しいのか、紫色の髪の毛が脂汗で額に貼り付いている。
レイシアは卑屈な笑みを浮かべ、
「えへへへ……これ、苦しいんでとってもらえませんかね……? しかもなんか栄養ないみたいだし……」
それを聞いてほのかさんがこんにゃくゼリーのカップを食べながら言った。
「そこが罠なんだよねー。日本の法律だと、実は100グラムあたり5キロカロリー以下のものはゼロキロカロリーって表示していいことになってるんだよ。つまり、それ、一応少しはカロリーあるんだよねー。体型に悩む女子高生としては、こういうとこにも注意しなきゃだよね」
いやいや、ほのかさんはもう、パーフェクトに近いプロポーションをしてるから。
俺の考えていることが表情に出ていたのか、桜子が俺のわきばらを肘でドンッと押した。
「慎太郎の彼女は私なんだからね。見るなら私を見て」
「え、見てもいいの!? やったー! 桜子の裸が見れる!」
「誰が裸を見ていいって言ったの!? そういう意味じゃなくて!」
「なんだよ……じゃあせめて足見せてくれよ」
「足も恥ずかしいから駄目」
「いや、足の指」
「マジで言ってる?」
「指と指の間を見たい。超興奮する」
「そんな性癖が存在するの、初めて知ったよ……待って、恥ずかしいからそれも絶対駄目」
とかじゃれあってたら、桜子のおなかがくーっと鳴った。
桜子は少し顔を赤らめて言う。
「ね、レイシアさん、ほんとになにか食べ物ないの……? ご先祖様が持ってきた米菓しかない……。これじゃ私たちが兵糧攻めされてるようなもんだよ……」
「へ、へへへへ、ないんだなあ、これが。赤ん坊の骨なら残ってますがしゃぶります?」
それを聞いた瞬間、桜子がレイシアのパンパンに膨らんだ腹にケンカキックをぶちかます。
「ぶほぇぇぇぇっ!」
レイシアの口からゼリーが飛び出した。きたねえ。
「まあ、心配すんなや。そろそろ来る頃や……。と、お、きたで!」
ん、なにが? と思ったら。
「ちわーっす。ウービーイーツでーす」
髪の毛をサイドテールにした小柄な女の子が、特徴的なバッグを背中に背負ってやってきた。
あれ、このパターン前にも見たことあるな。




