第68話 渇え殺し一日目
一日目。
やばいな、と市生は思った。
「おい、完全に閉じ込められたぞ……。篠田、壁を壊せないか?」
「だめっす。何回か試してみたけど、この壁かなり硬いっすよ」
くそ、たかが地下四階でこんなピンチになるとは。
部屋の大きさは3メートル×3メートルほど。
床も壁も天井も硬い石づくりで、破壊はできそうになかった。
と、その時。
壁を調べていた遊斗が叫んだ。
「おい、見てみろよ、ここ! なんか文字が書いてある……」
みなで集まってそこを見る。
ほこりで薄汚れたその壁をこする。
「暗くて見えないな……。瑞葉、魔法で照らしてくれ」
「うん。太陽の輝きよ、地の底まで照らせ! 照光!」
そして浮かび上がった文字は。
『性行為をしないと出られない部屋』
それを見た瞬間、パーティ唯一の女性である瑞葉が、
「ひィィィィィッ!」
と悲鳴をあげた。
市生と篠田、遊斗が振り向いて瑞葉を見る。
瑞葉は顔を青ざめさせて、
「無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理!!」
それを無視して、市生は言った。
「悪い、瑞葉。妹のためなんだ……。我慢してくれ。よし、俺がヤる。篠田、遊斗、瑞葉を押さえていてくれ」
「待って待って待って待って無理無理無理無理無理無理無理」
市生はすでに股間が熱くなるのを感じていた。
瑞葉をねめまわす。
好みより胸が小さい女だが、腰が細くてケツがでかい。
「瑞葉、すまん……俺のは規格外にでかいんだ……。俺の相手はみんな裂けちゃってさ……病院送りになった女もいる」
「やだやだやだやだうそうそうそうそうそでしょ? 待ってやめて落ち着いて」
同じパーティメンバーとして、パーティ全体が助かるためなら仕方がないだろう。
それに、こんな地下で仲間を無理やり犯すなんて。
……最高に気持ちいいだろうな、と市生は思った。
「遊斗、たぶんすっげえ血が出るから、あとで治癒魔法頼むぞ」
「やめて! やめて! お願い! エグいって! やめて!」
そのとき、まだ壁を調べていた遊斗が言った。
「待て! 文章に続きがあるぞ……。ええと、『ただし、同性同士の性行為に限る』……なんだこりゃ?」
★
「あーはっはっは! あいつら、あたしが適当に書いたいたずら書きを真に受けてるで! 面白いわー」
ご先祖様の言う通り、奴らはけん制しあっているようだ。
四角い部屋の四隅にそれぞれ背中を預けて離れて座っている。
どうやら、男同士でいかがわしいことをするのはさすがに抵抗があるらしく、誰もお互いの目を見ない。
いや、襲われかけた瑞葉だけが怒りの表情で男どもを睨んでいる。
うーん、悪党どもが仲間割れする姿は美しいなあ。
「で、どうやったらこの部屋出られるんですかね?」
俺が聞くと、ご先祖様はTIMUで買った中華製スマホをポチポチしながら言った。
「まあ、力で壁壊すしかないやろな。一応あいつらでもやれると思うで。あの魔法戦士の男と攻撃魔術師がバフ魔法を格闘家のデブにかけて、攻撃魔術師と僧侶が壁に思いくそ魔法ぶちかましてからデブが全力で壁に突っ込めば壊せるんちゃうか。ま、それには仲間を信頼するチームワークが必要やけどな」
まあ仲間内でレイプしかけたあとにチームワークなんて無理に決まってるよな。
攻撃魔術師の瑞葉は襲われかけた女子だから、その子がわざわざあのデブにバフ魔法をかけるわけがない。
「まだ一日目だから気づいてないやろけど、あの部屋、食糧も水もないからな。ふふふ、そのうち地獄がやってくるで……」




