第64話 体重25キロ
モニターの中では、市生たちのパーティがゆうゆうと地下三階を進んで言っている。
「おいレイシア」
俺はレイシアに話しかける。
ちなみにレイシアはご先祖様の椅子になっている。
「は、はい、なんでしょうかぁ……」
「地下三階だとなにが呼べる?」
「はい、ジャイアントインプですね……」
「それ、強い?」
「インプよりは……。でも、あの清野市生たちのパーティ相手では全然歯が立たないかと」
うーん、しょうもないダンジョンだなあ。
「ほかになんかいないのか、なんか。あと椅子が足りない」
桜子とほのかさんは立ちっぱなしだ。
「せやな、椅子足りんなあ……。しょうがない、ほのか、ここ座れここ」
ご先祖様がレイシアの上ずずいと身体をずらす。
「あ、じゃあお邪魔しまーす」
どすん。
レイシアの上に、ご先祖様とほのかさんが並んで座る。
「お、二人座ってもけっこう頑丈やな。さすが淫魔とはいえ悪魔の一族や。ほれ、桜子はそっち座れ」
「うん、慎太郎、もうちょっと場所空けて」
それを聞いたみのりが声を上げた。
「ま、待って……一人でも重いの……二人なんて……無理……」
ま、レイシアと違ってみのりは人間の女子高生だからな。
「構わないよ、桜子ちゃんは軽いもん。ほら座って座って!」
みのりに誘いだされてレイプされそうになったほのかさんは、もちろんみのりに容赦などしない。
桜子も、
「うふふ。慎太郎とくっつけるならいいかもね。ほんとは、温泉に二人で泊まる予定だったのに、こいつのせいで台無しになったんだもんねー」
と言いながらみのりの背中にどすんと座って、隣にいる俺の肩に頭を乗っけてきた。
桜子のショートボブからリンスのいい匂いがする。
うーん、いいなあ。
とか思っていたら、椅子がガクンと傾いた。
腕で支えきれなくなったみのりが四つん這いからうずくまる体勢になったのだ。
「おいおい、お前、頑張らないとまた電源とっちゃうよ?」
みのりは喉の奥から絞り出すようにか細い声で言った。
「も、もう許して……謝りますから……ごめんなさぁい……」
「でもお前、人間の赤ちゃんをあのレイシアのエサにしてたんだろ?」
俺は冷たくそう言う。
人類史上それ以上おそろしい罪なんてほかにないくらいだぞ。
「そ、そんなことしてないですぅ……」
などとぬかすみのり。
「おいレイシア、どうなんだ? 嘘ついたらミカハチロウと交尾してもらうぞ」
俺がそう言うと、レイシアは四つん這いのままミカハチロウの方をちらりと見る。
象の体をしているミカハチロウはやることもなくて飽きたのか、鼻から生えているタコの足をうねうねさせながら横たわって寝ていた。
タコの足、一本一本がでかくてちょっとキモい。
直径二十センチ、長さ三メートルくらいあって吸盤だらけ。
しかも伸び縮み自由だ。
「ちなみにな、ミカハチロウの生殖器はあのタコの足が兼ねてるやで。嘘ついたらどうなるかわかってるな?」
ご先祖様の言葉に、レイシアはガクガク震えながら、
「た、食べましたぁ……そこの清野みのりの手引きで人間の赤ちゃんを食べてしまいましたすみませぇぇん……。私は人間専門のサッキュバスなんです。ミカハチロウさんは無理ですそれだけは許して」
うーん、これはみのりも有罪。
俺は姫カットのみのりの髪をひっつかむと、ぐいっとひっぱって言った。
「おい、ミカハチロウと交尾して子供産むのと、今頑張って椅子の形を保つのとどっちがいい?」
「モ、モンスターと交尾なんてできません……」
「いや、ミカハチロウはもともと俺の命を狙った女とモンスターのあいだの子供だし。美香子ちゃんっていうんだけど、かわいい子でさ。最後には首だけになっちゃったけど」
「ひぃぃぃ……」
俺の言葉に恐怖したのか、まさに火事場の馬鹿力、みのりはぐぐいと腕を伸ばして再び四つん這いになった。
おお、すげえ、やればできるもんだな。
俺の体重が60キロ、桜子の体重が40キロとして……。
「60+40で100キロか。人間、やる気になれば支えられるもんだなあ」
俺がそう呟くと、隣で桜子もうなずいている。
「桜子ちゃんくらいの身長の女の子の体重が40キロとか夢見すぎ……童貞かな」
ほのかさんがぼそりと呟く。
「チクチク言葉はやめろ」
「そうだよ、私は39キロ!」
ほのかさんはぷっと吹きだして、
「ほとんどスケルトンじゃん」
「ほのかちゃんも同じ女の子だから! デリカシー! ほのかちゃんは体重何キロなの?」
「ま、過去最高記録だと25キロくらいのときあったけど」
言われてみれば、ほのかさんは一度和彦たちに殺されて胸から下がスケルトンになっていたこともあったなあ。
今となっては懐かしい。
さて。
「おいレイシア、もっとほかに呼び出せるのいないのか?」
「えーと、そうですね、蠅の王ベルゼブブ……」
「おお! すげえ、ラスボスクラスの悪魔じゃないか!」
「に、まとわりついてる蠅なら呼べます」
うーん、まじでしょうもないダンジョンだな。




