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水属性の魔法で、やろうと思えば洪水にだってできる。
そう思ってした提案だった。
「無理しなくていいのだぞ?」
「無理してないです」
魔力には自信ある。たぶん。
この世界の人がどれくらいあるかわからないからなんとも言えない。
けど、ここの人達よりあるのはわかる。
「ではお試しで……あの畑に降らします」
「?まぁ、やってみるがいい」
雨、雨雲、想像するのはこの畑の地を潤す程の水の雨。
「ネイローレイン」
狭い範囲に雨を降らす魔法。
持ってはいたけど、使ったことない魔法だ。
こんなところで役に立つとは……。
「こ、これは……っ」
「ちゃんともくもく出てるなー」
ゆっくりと灰色の雲が空中に集まり、畑を覆う。
そこからゆっくりと雨が降り出す。
「天の恵み……!」
「どうでしょうか?」
「ま、まさかこれほどのっ」
聞いてないな。
驚いてるみたいだし、いいか。
雨は降り注ぎ、勢いは止まない。
これ以上の大きさも量も多くならないが、勢いも衰えない。
これはやばいか?
これ以上降ると、溢れてしまうか。
「よっ、と」
魔力をコントロールし、自然に終わるはずだった魔法を自力で終わらす。
「えっと、少し降らし過ぎました……ね?」
「うおおおおおおっ、これは奇跡だあああああっ!」
「ビクッ」
村長は号泣していた。