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屍の声  作者: もちづき裕
船の謳
99/116

第二十八話

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

 こういうピカピカ系の霊現象的なものを見るのは初めての私としては、

「私が思うに・・」

 私は輝き続ける神棚を見上げながらおじさんに言いました。

「やっぱり詞之久居島には行かなくちゃいけないんだと思います」

 するとおじさんは短く切った髪の毛をワシワシとかきむしりながら、

「やっぱり君もそう思うかい?」

 と、言いだしたのですよ。


「さっき、うちのお母さんが自分の母親の介護の為に隣町に行っていると言ったけど、実際問題、この家に帰って来るかどうか怪しいところがあるんだよ」

「え?もしかして詞之久居町では離婚が許されないから、とりあえず別居から始めてみるってことですか?」

「いや、離婚とかじゃなくて・・」

 おじさんはモジモジしながら言い出した。

「うちのお母さん、死んだうちの爺さんが枕元に立つって言うんだよ」

「死んだうちのお爺さん?」

 仏間にはお亡くなりになった遺影が飾られているんだけど、誰がどれなのか私にはちっとも分からない。


「とにかく、うちの爺さんが枕元に立って何かを訴えているらしいんだけど、それが何なのか分からないって言うんだよな」

「そのお爺さんっていうのは、元は神主だったという?」

「そう、そう」

 そこでおじさんが一つの遺影に視線を向けたので、命をかけて悪霊をお祓いしたというお爺さんが誰なのか分かったわけ。


「うちの先祖は代々神官をしていたらしいんだ」

「先輩の家も由緒正しい神社の家ですよ?」

「それで、今は神職からは退いているんだけど、問題の詞之久居島に出入りが出来たのは神官の血筋である辰野家だけだったらしいんだ。なんだか色々あって他の人も出入り自由になったわけで」

「昭和の時代にホテルが建設されていたんですもんね?」

「そう!そう!」


 おじさんは視線を左右に彷徨わせながらごくりと生唾を呑み込んで言い出した。

「そのホテル建設に関わった菅原家の本家は没落しちゃったわけなんだけど、分家は今でも島は自分たちの物だとでもいうように思っているみたいで」

「それじゃあ詞之久居島って誰かの所有なんですか?」

「いや、本家が没落した時点で国有地になっているんだけど」

「島の呪いで胴体分断したり、熊から半殺し状態で数日放置とか言っていましたよね?気味悪過ぎて関わりたいとは思わないものなんじゃないんですかね?」

「そうなんだけど、本家は落ちぶれても血筋正しき菅原家と言いたいっていうの?俺だって枕元に爺さんが立ったなんて話を聞いた時には、本土にある大元の神社の方か、島の方にある社に行かなくちゃいけないのかなあとは思ったんだけど、無断で島に渡っても面倒臭い奴らが騒ぎ出すのが目に見えていて」

「それで面倒になって行っていないんですよね?」

「そうなんだ」


 辰野家に伝わる伝承によると神の使いである白鷺が本土から島に向かって神渡りをするという日にちが決まっていて、その日には必ず御神酒を用意して島渡りの準備をする習慣があったものの、

「息子が独り立ちをして立派な世帯を持つようになってからは、そういった儀式的なものはやっていないんだよね」

 と、おじさんは肩を小さくすくめながら言い出した。

「ちなみになんですけど・・その神渡りの日っていうのはいつなんですか?」

「それが実は今日なんだ」

「あらまあ」

「爺さんが枕元に立ったというのなら、正式なものを今日中にやらなきゃなんだけど、分家の連中がやたらと煩いのは目に見えているだろう?だからさっき、展望台から島を拝んで御神酒を捧げておいたんだけど、感謝の気持ちがこもっていればそれで大丈夫だよね?」

「うーん」

 私は神社に行くのは旅行と年始が限定という生活を送っていたから良く分からないんだけど、

「いや、やっぱりそれってまずいんじゃないんですか?」

 正式なものが何なのかわからないけれども、呪いがどうのと言っている時に略式はまずいんじゃないのかなあ。


      ◇◇◇


 メチャクチャ長い夢を見ていたような感覚なんだよなあ。

 勇さんのご先祖は間違いなく神官の家系で、それこそ二百年とか三百年とか、長い間、この地を先祖代々守り続けて来た血筋の人ということになるんだけど、その間に神聖なる詞之久居島が何度も貶められることになったってわけ。


 一度目は菅原家という中央から移動をして来た血筋も正しき人と自らを呼ぶ人たちが移動をして来て代官の地位に就き、最初でこそ神官の血筋である辰野家と上手くやっていたんだけど後に決裂。どうやら辰野家の美しい娘を妻として迎えいれようとしたんだけど、それが上手くいかずに殺してしまったという過去があるみたい。


 詞之久居島は風待ち港として非常に使い勝手の良い場所にあったし、地元の人々にとっては信仰の場所でもあったんだけど、その後の歴史が暗澹とし過ぎてもう吐きそう。


「はあ〜、色々と分かって来た、分かって来たぞ〜」

「先輩!先輩!目が覚めたんなら起きてくださいよ!」

「ええ〜、なんで〜、めちゃだるいんだけど〜」

「先輩!大変なんです!今日が神渡りの日なんです!」

「はあ〜?神渡り〜?知らんがな〜」

「先輩!災害級なんでしょ!先輩!」


 目を覚ましたら何処かの家の仏間で、僕を見下ろしている天野さんと勇さんの顔を見上げた僕は自分の顔を両手で押さえつけたんだ。

「僕のマスクは?」

「ああ〜・・」

 天野さんはボロボロに破れたゾンビマスクを僕の視界に持って来ながら言い出した。

「先輩はバターンと倒れて舌根沈下しそうだったらから!ゾンビマスクが破れてしまったのはやむなしの処置です!」

「マジかよ」


 丹精込めて製作した僕のゾンビマスクは顎の下から鼻の上を切り割るようにしてビリビリ状態になっているんだが、なんなんだ?舌根沈下って?

「いや、すまん。うちの神棚は人によっては衝撃が強いみたいで君のようにバタンと倒れて窒息寸前になる人もいるんだよ。入る前に注意をしておけば良かったなあ〜」

「きっと注意をしても先輩は仏間に突進していましたよ!窒息しないように処置をしてあげたんだから褒められることはあれ!怒られるなんてことはないですよね!」

 なんなんだ?

 知らぬ間に勇さんと天野さんが随分と気安い感じになっているんだけど・・

「僕、どれだけ失神していたんですか?」

 僕の問いに二人は顔と顔を見合わせると、

「「1時間」」

 と、言ったんだ。1時間、まじか。 



今度は海に移動した霊能力者二人のドタバタ劇をお送りしたいと思います!!

もし宜しければ

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