第二十五話
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展望台の駐車場には一台の無人の軽のワゴン車が停車していたんだけど、その車は勇さんが運転して来た車になるらしい。
ビーチだけではなく展望台のゴミ拾いも行っていた勇さんはそろそろ家に帰る予定だったようなのだが、
「詞之久居町の町おこしなんていうのは建前の話であって、君たちは1970年に起こった詞之久居島の大火災を調べに来た大学生なんだろう?」
と、問われることになって、
「「いえ、違いますけど」」
と、僕と天野さんは揃って同時に答えることになったんだ。
「何ていうか、その、正直に言うと、その、呼ばれたんです」
そんなことを言ってもどうしようもないのは分かっているんだが、僕は正直に答えることにした。
「本当は来たくなんかなかったんですけど、呼ばれたんで来たんです」
そこで天野さんが必死になって言い出した。
「先輩は埼玉ではとっても有名な神社の神主の息子でして、幽霊とかそういうのが見えるタイプの人なんですよ!」
こんなはずじゃなかったのに完全に怪しい大学生認定決定だよ。
僕は思わず両手で自分の顔を覆って項垂れたんだけど、そこでいつもは装着しているゾンビマスクをしていないことに気が付いた。いつもは装着しているゾンビマスクをしていないからこんなことになっちゃっているのかもしれない。だけど勇さんはとっても良いおじさんだったようで、
「ああ・・そっち系の理由で来たってわけなのか」
こちらに無理やり合わせるように言い出したのかと思ったんだけど、
「実はうちも今はやってはいないんだけど、元々は神職の家系なんだよ」
勇さんは自分の顎を撫で回しながら憂い顔になり、
「神職と言っても神主をやっていたのは俺の爺さんの代までなんだけど、ほら、菅原の本家が呪われたとか何とかで大騒ぎの時にはうちも巻き込まれる形になったから」
しばらく逡巡した後に、
「え?それで来たの?」
と、言い出した。
「「ええーーっと」」
それで来たのの意味が分からないのだが、
「とりあえず、呪いの根源を何とかしようかと思って来たのは間違いないです」
と、僕は宣言をした。
呪いの根源がどれだけ恐ろしいものだったとしてもだよ?天野さんが居れば何とかなるから大丈夫なんじゃないかな?
「ああ〜、そうなんだ〜」
勇さんはしばらく逡巡した後に、
「それじゃあうちに来るか?」
と、言い出したんだ。
こうしてワゴン車の後部座席に僕らは揃って座ることになったんだけど、
「一応、見つからないようにしておくか」
そう言って勇さんは僕ら二人に体を縮めるように指示をして、上からブルーシートをかけたんだ。
「先輩、ここまでする必要があるんですかね?」
隣に座る天野さんが小声で囁いて来たのだが、
「そうだねえ、ここまでする必要があるのかなあ」
車は走り出したので僕らはブルーシートの下で縮こまっているしかないようだ。
こうして狭くてクネクネした道を軽自動車は降りていくことになったんだけど、右に曲がって左に曲がってしばらく行ったところで、
「止まれ!止まれ!止まれ!」
男の人の怒鳴り声が響き渡ったんだ。
この時点で僕らは座席から降りる形で小さく縮こまることにしたんだけど、
「なんだ!勇さんか!丁度良かった!あんた、展望台の掃除をして来たところだよな?」
運転席の窓を開けたようで、男の声がより明瞭に聞こえてくるじゃないか。
「二人の大学生が展望台に行ったかもしれないんだが、勇さん、あんた、大学生の姿を見やしなかったか?」
「いいや、俺がゴミ拾いをしている時には誰も展望台まで上がって来やしなかったけどな」
すると最初に声をかけてきた男性とは別の男性の声が響いてくる。
「勇さん、あんた、前にも、自転車で日本一周をしているとか言う中学生を家に泊めたことがあっただろう?まさか情け心を出して、大学生も保護しているんじゃないだろうな?」
「言われている意味が分からないんだが」
勇さんはしばらく黙り込んだ後、
「お前は菅原の分家は分家でも末端だろう?今、こうやって俺に話しかけているのを清さんは知っての上でのことなんだよな?」
凄むように言い出したんだ。
2番目に声をかけてきた奴は声をうわずらせながら、
「そ・・その!後部座席のブルーシートが怪しいじゃないか!今すぐ外せ!今すぐ外して見せてみろよ!」
と、言い出したんだけど、
「だから、菅原清さんが知った上で、お前はそういうことを言っているんだろうなあ?」
再び勇さんが凄むように言い出したので、二人は黙り込んでしまったんだ。
この町の人間関係が僕にはさっぱり分からないのだが、僕らを覆い隠すブルーシートがめくりあげられることもなく、無事に車は出発することになったんだ。
勇さんは車を運転しながら言い出したんだ。
「詞之久居島が大火災を引き起こした時に、菅原本家は大いに呪われることになって、一家離散。屋敷の跡地は売り払われることになったものの、事故があまりにも多いことから開発事業に使われることもなく忌み地として放置されることになったわけだけど」
本家の屋敷跡地は帰って来る途中で見た場所だろうし、上空にはカラスが何羽も飛来していたもんなあ。
「この呪いを止めるために当時、俺の爺さんが乗り出すことになったんだ。結局、爺さんは死んで、分家まで呪いは渡らずに阻止することが出来たらしい。俺には呪いが何なのかなんて分かりもしないんだが、辰野家に何かをすると災いが再び訪れることになるぞ!と町中に噂として広めているから、あいつら何も出来やしないんだよな!」
うわ〜、僕たち、とっても良い人に拾って貰ったのかもしれない!
今度は海に移動した霊能力者二人のドタバタ劇をお送りしたいと思います!!
もし宜しければ
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