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屍の声  作者: もちづき裕
船の謳
93/108

第二十二話

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

「やっぱりうちの町で町おこしなんて無理な話だったのかなあ」

 車を運転する佐藤さんは落胆を隠せない様子でいたんだけど、そこで天野さんが言い出したんだ。

「あのおばあさんがあれだけの拒否反応を見せたのって、絶対に先輩が理由ですよ」

「え?何で僕が理由になるんだよ」

「だって先輩、ゾンビマスクを付けたままだったじゃないですか」

「・・・」

「先輩が、ゾンビマスクを外さずに車を降りたりするから、おばあちゃんはそんな先輩に対して塩をまいたんですよ」

「た・・確かに・・」

 佐藤さんまで言い出した。

「人と会う時にはマスクは外しますって言っていたはずなのに、ソンビマスクを付けたまま車を降りていたよね」

「今だってゾンビマスクを装着したままですよ」


 車内のピリピリした空気に耐えられず、僕はゾンビマスクを脱ぐことにしたよ。

「今更感が凄いんですけど」

 天野さんの圧が凄いんだけど、

「それじゃあマスクを脱いだし、今からもう一度フクさんのところへ・・」

 佐藤さんが今すぐにでも車をUターンさせそうだったから、僕は声をあげたんだ。

「あのですね、今から行っても無理ですよ。これ、菅原家が絡んだ怨念の話になるみたいなんで」


 佐藤さんに連れられて僕は分家のフクさんの家に行くことになったんだけど、彼女の家には呪いの残滓がそれは色濃く残されていたんだよな。

「フクさんの家は事故が多いんじゃないですか?少なくとも一人や二人は事故でお亡くなりになっていると思うんですけど」

 佐藤さんは一瞬だけ黙り込むと、

「なんで分かるのかな?」

 と、驚きを隠せない様子で言い出した。


「二年前になるけど、娘さん家族が帰省する途中で車の事故に遭って全員がお亡くなりになっているし、五年ほど前にもフクさんの義理のお兄さんに当たる方がバイクの事故で亡くなっているし」

 佐藤さんは生唾をごくりと飲み込みながら言い出した。

「あそこの家は交通関連の事故が多くて、単独事故なんかしょっちゅう起こしている印象があるんだよ」


「血統にまつわる呪いがあるのは間違いないですし」

 その呪いは詞之久居島の中に居る何かと深い関連があるみたい。

「まずは詞之久居島に上陸をして、中がどうなっているのかを確認しないと町おこしどころではないと思うんです」

「先輩ったら・・」

 天野さんは両手で自分の口を覆って大きく目を見開きながら言い出した。

「また何かが見えたってことですか?」


 すると車を運転していた佐藤さんが恐る恐るといった調子で言い出した。

「何かが見えたって・・要するに霊感的な?」

「そうです、そうです。先輩は神社の神主の息子なので霊感がそれは強いんですよ」

 お前よりは霊感弱いけども!と、思うけど、守られている力が強すぎる天野さんは大概のものが見えないんだよなあ。


「それじゃあ菅原家が呪われているって話?」

「それは間違いないですよね」

 僕は湾岸線を走る道路からも見える、森の中の大きな空き地を眺めながら言ったんだ。

「本家が没落して屋敷があった場所が売りに出されたと言っていましたけど、結局、その土地で何かをしようとしても事故が多くて今は放置状態なんじゃないんですか?」

「えええ!なんで分かるの!」

「言ったじゃないですか、事故が多い家系だって」

 僕は上空を無数のカラスが飛び交っている空き地の方を眺めながら言ってやったよ。

「素戔嗚尊は八岐大蛇を倒す時に、クシナダヒメを櫛の姿に変えて自分の髪の毛に刺しこんだ。あの土地はこの櫛が大きな災いとなって、今もなお呪いを撒き散らしているような状態なんだと思います」

「「櫛?」」

 天野さんと佐藤さんはほぼ同時に同じことを言い出した。

「櫛が呪い?」

「櫛が災い?」

 そりゃもう、土地神様を踏みつけにするような行為が遥か昔に行われ続けていたんだから、根深い問題なのは間違いないよ。


「詳細はこの土地の歴史を紐解かないと明らかにならないと思うので、宿に到着したら自治体史を読んで照らし合わせてみますよ」

 まずは江戸時代に何があったのかを知りたいところだけど、詳細な情報が分かるのは昭和の火災からなんだろうなあ。


「それじゃあ、まずは今日泊まる宿に移動するとして・・」

 佐藤さんは役所までやって来た町おこし反対派が民宿にまで訪れていやしないかと恐れていたんだけど、小さな宿の周囲は静かなもので、宿の駐車場にも何の問題もなく車を駐車することが出来たんだ。


 車のトランクから僕のスーツケースと天野さんのボストンバック、そして今は呪われていない木製の船を取り出して、電気が消えた民宿の入り口へと向かうことになったんだけど、

「あら、あら、あら、あら」

 フロントの奥から出て来た宿のお母さんは僕と天野さんを見ると、

「カップルさんのお泊まりだとは思わなかったわ!外の眺めが良い部屋を用意したんだけど、お風呂から近い部屋よかったら移動は出来るから声をかけてちょうだいね!」

 朗らかな笑顔を浮かべながら言い出したんだけど・・

「「・・・!」」

 僕と天野さんは、お母さんの顔が誰かに殴りつけられたように青紫色に腫れ上がっていたものだから、返事もできずに絶句してしまったんだ。


今度は海に移動した霊能力者二人のドタバタ劇をお送りしたいと思います!!

もし宜しければ

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