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屍の声  作者: もちづき裕
船の謳
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第十八話

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

 町史とは町を治める地方自治体が古代から現代までの歴史、出来事、文化、産業、民族、人物などさまざまな資料をもとに調査・編纂したものとネットで検索すると出て来ます。自治体史と呼ぶこともあるのですが、これって古い物であればあるほど手書きでまとめられていたりするんです。


「えーっと・・えーっと・・」

 中村さんと佐藤さんはダンボールに詰められた自治体史を持って来たんですけれども、

「町おこしと自治体史ってセットなんですか?わざわざ調べる必要ありますか?」

 もちろん古い物は手書きの物です。

「私はそんな必要ないと思うんですけど?」

 私の質問に二人は笑顔になって言いました。


「神村ゼミでは忘れられていたような歴史や文化などを紐解くことで、全く思っても見なかった形で町おこしをしてくれるっていう話は聞いていますよ」

「文章として残されている歴史と口伝で残されている内容が異なる場合も多いことから、伝承に詳しい年寄りから聞き取り調査をすることになるんですよね?」

「分家のフクさんあたりが良いと思うんだけど」

「田中さんのところのおばあちゃんも伝承については詳しいと思うんだがねえ?」


 分家のフクさんとかよく分からないし、そもそもなんですけれども!

「私はまだ神村ゼミのゼミ生というわけじゃないんですし!」

「だけど人文学部民族学科の生徒だよね?」

 先輩はダンボールから自治体史を引っ張りだしながら言い出した。

「いずれはこういった手書きの文書を山ほど読むことになるんだからさ、練習だと思って頑張って目を通してみようよ!」

「いやです」

 無理、無理、無理、無理。

「先輩、今の時代は何でもネットで検索すれば一発でAIが教えてくれるんですよ!」

「うん、うん」

「だから私はネットで検索をして詞之久居町の歴史を調べてやりますよ!」

「うん・・うん・・」


 ゾンビマスクを装着した先輩は空返事をしながら資料に目を落とし、中村さんと佐藤さんと何やら話をしているんだけど、

「中村さんと佐藤さん、先輩のゾンビマスクに慣れ過ぎてないですかね?」

 順応力が凄すぎるように思えるんだけど。


 一応、私なりに手書きの自治体史を手に取ってみたものの、

「無理・・無理ですって」

 達筆すぎて読めないって!

そもそもボランティアでここまで来ているようなものだもの、

「私は私に出来ることをしよう!」

 私は早速スマホ片手に検索を始めたのだけれど・・


 詞之久居島は元々、風待ち港として使われていた。風待ち港って風や雨が酷くなった時に避難する小さな入江や湾のことを指すんだけど、私が住んでいる秋田県の男鹿市にある風待ち港も昔は栄えていたとおばあちゃんから聞いたことがあるなあ。


 そんな風待ち港として利用していた詞之久居島に目をつけた江戸時代の藩主が流刑地として利用することになったんだけど、その後、幕末を迎えて流刑地としての利用は終わり、戦後の旅行ブームで宿泊施設がこの島に建てられることになったみたい。1970年に起きた不審火による火災によって島内の建物は全焼。その後、詞之久居島に居住する人はおらず、無人島になっている。


 詞之久居島の沖合に浮かぶ首切り島は、悔悟を知らぬ罪人が首を切られた場所と言われているが、刑場の跡などは残されていない。


「先輩、やっぱり怪しいのは首切り島じゃないですかね?だって、悔悟を知らぬ罪人が首を切られた場所だと言われているじゃないですか」

「いやー・・そっちじゃなくて、確実に詞之久居島の方が問題みたいだよ」

「首切り島じゃなくて?」

「首切り島はおまけみたいなもので・・」

 そこで外がやたらと騒がしくなって来たんですよ。


 バタバタと走るような足音と壁をドンドンと叩く音と共に、

「聖上大学の生徒が来ているって本当かー!」

 大声をあげる濁声が聞こえて来たってわけ。


「俺たちはインバウンドなんか求めていない!」

「何を勝手なことをやっているんだ!」

「大学生を連れて来たんだろう?」

「何処にいるんだ!今すぐ追い出してやる!」

 確実に複数人が役場で大騒ぎをしているんだけど、ゾンビマスクをかぶったままの先輩は一冊の自治体史を手に持ったまま、

「これを手にした途端に騒ぎが起こるって、やっぱり災害級が関わっているってことじゃん!本気でドン引き状態なんだけど!」

 と、言い出したところで佐藤さんが部屋に飛び込んで来て、

「奴らにバレたみたいだ!今すぐに逃げないと!」

 と、言い出したんですよ。


 うーん、訳が分からない。

「佐藤さん、中村さんはどうしたんですか?」

「今、中村さんは清さんたちを止めている」

「今、大騒ぎをしているのが清さんという人なんですか?」

「菅原の分家の人たちで、その筆頭が菅原清さんという漁協のボスみたいな人なんだ」

「それで漁協のボスが?」

「今すぐ大学生をここに連れて来い!俺たちに町おこしなんてものは必要がないことを説明してやるから!」


 怒鳴り声を共にバッタン、バッタン。何かを倒すような音が聞こえてくる。

「要するに反対派が来たってことですよね?」

 先輩はゾンビマスクをきちんとかぶり直すと、

「それじゃあここは逃げ出した方が良いということになりますよね?わかりました、必要そうな自治体史はちょっと貸出してもらう形にしますから」

 と言って逃げ出す準備を始めている。


「先輩、私も一緒に逃げなくちゃいけないんですか?別に私、町おこしとかあんまり興味がないんですけど?」

「天野さん、一緒に行くよね!うちの両親に頼まれていたし!ね!そうだよね!」

「ここに残ったら危ないから!一緒に行きましょう!」

 佐藤さんと先輩の圧がもの凄いんですけど!


まだまだ残暑が続く日々の中、今度は海に移動した霊能力者二人のドタバタ劇をお送りしたいと思います!!

もし宜しければ

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