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屍の声  作者: もちづき裕
船の謳
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第十七話

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

 私は交通誘導のバイトをしていたのですが、その時に同じ職場に居た佐竹さんというおじさんがシリアルキラーみたいな人だったんですよ。最終的には生き霊になって現れたとか何とか先輩は言っているのですが、確かに佐竹さんはドロドロとした悪霊みたいな姿で現れましたよ。


 そんなとんでもない生き霊に取り憑かれている最中は一人暮らしのアパートに帰ることも出来ず玉津先輩の住む家で厄介になっていたんです。

 そんな玉津先輩は口を開けば、

「不景気、不景気、あんまりにも不景気なもんだから人間、どうしたって通常ではありえない、不思議でおかしい話を聞いて現実逃避をしたくなってしまうんだろうけど、そんな社会的風潮?も、僕なりに理解出来るけども、君はさあ、暇があれば心霊系のネット配信を見ているよなあ?自分が大変な状況だっていうのに良くもまあ!本当に理解出来ないんだけど!」

 と、言って来るんですよね。


「夏なんだもん!心霊系を見たっていいじゃないですか!」

 みんなはバーベキューとか海水浴とか、夏というものを楽しんでいるというのに、私は生き霊の所為で神社の敷地内から出ることも出来ないんだもの!

「私は霊感ないんでそういう話が大好きなんですよ!オカルト!心霊系!何の問題があるっていうんですか!」

 私の主張に先輩は鼻で笑ってバカにするのが常なのよ。


 心霊ミーチューバーはまめにネット上にアップするので、私も時間があればチェックしちゃうんだけど、

「生き霊で散々な目に遭っているというのに・・」

 はあ〜呆れちゃう!みたいな目で見るのはやめて欲しい。


 生き霊騒ぎの時にはとにかく暇で、暇で。小遣い稼ぎでホラーマスク製作の手伝い(ゾンビの頭に毛根を埋め込む作業)をしていたんだけど、それをやっていたって時間を持て余しちゃうものだから・・

『今日の怖い話は視聴者さんから送られて来たお話になるのですが・・』

 暇があれば心霊系を見ちゃうのよ。私よりも恐ろしい目に遭っている人の話を聞くと安心するというか・・

「はあ〜、この人に比べたらまだマシかも。だって私は死んでないし!」

 比較して安堵しているというか、とにもかくにもそんな私の姿を見て先輩はバカにしているところがあるのよね。


 そんな頭の中が心霊系に毒されている私としては、

「首切り島、なんてすんごい名前の島なのかしら!」

 ワクワクドキドキが止まらない状態よ!


「ああ〜、天野さん悪いんだけど」

 そしたら不審者扱いをされていた先輩が申し訳なさそうに言い出したのよ。

「行くとしたら別の方の島になるかな〜」

「別の方?」

 別の方というと、町の名前にもなっている詞之久居島の方に行くのかな?


「とにかく僕らはこれから役場に行って、資料を読み漁らなくちゃいけないし」

「資料を読み漁るんですか?」

「歴史的背景を知らないと何も出来なかったりするしね!」

「歴史的背景を知るんですか?」


 正直に言って興味ね〜。

「私はもう帰っても良いですかね?」

「なんで?」

「だってもう用済みでしょう?」

「用済みなわけないでしょう!これからが本番だよ!本番!」

 先輩は必死になって訴えているんだけど、何が本番だというのだろうか?


 すると役場に勤める中村さんが言い出したのよ。

「とにかく、人目もあるので今すぐに役場の方へと移動しましょうか?」

「人目ですか?」

 まさしく漁村という感じの場所だし、ビーチクリーンに勤しんでいる筋肉ムキムキおじさん以外に人はいないように見えるんだけど、

「そうだなあ、今すぐに移動したほうが良さそうだなあ」

 と、ムキムキおじさんまで言い出したのよ。


「役場の人間が波羽美町のあぱっとねえ祭りに興味を持っているという噂はすでに広まっているし、そんな状態で若者を連れて帰って来ているんだから、気が付く人間はすでに気が付いているだろうしなあ」

「それはまずいんですけど・・」


 佐藤さんが顔を青ざめさせながら辺りをキョロキョロしている間に、先輩はさっさと車に戻っちゃったのよね。

「先輩、あの〜、本当に役場にある歴史的資料というものを確認する必要があるんでしょうか?」

「やりたくないけど、やらないと呪いは解けないしね」

「先輩だけが呪われているんですよね?」


 私は先輩の美しすぎる顔をじっと見つめながら言いましたとも。

「私、呪われていないし、関係ないですよね?」

「おまっ!」

 先輩は目を見開いてワナワナ震え出したんだけど、

「それでは町役場の方に移動しまーす」

 佐藤さんが後部座席のスライドドアを閉めて助手席に乗り込んでしまったので、私はそのまま先輩と一緒に町役場の方へと移動することになってしまったのよ。


「先輩、本当の本当に歴史的資料とやらを調査するんですか?」

「そりゃ、僕らは民族学科の生徒だからね?君だって今までの授業で、地域住民の間に残されている伝承や風習を聞き取ると共に、その土地独自の歴史や文化を学ぶ必要があるって勉強しているだろう?」

「だからって今ですか?今やらなくちゃいけないんですか?」

「そりゃもちろん」

 先輩はドヤ顔で、

「今でしょう!」

 と、言い出したものだから抱えていた呪いの船を先輩に押し付けてやったの。そしたら先輩は触れたら死ぬと大騒ぎしていた船を平気な顔で受け取って、

「実はこの船の中身なんだけど、ついさっき海に向かって逃げ出したものだから、現状、空の状態なんだよね」

 と、ニヤリと笑いながら言い出したのよ。


 堤防の上からムキムキおじさんはこちらの方に笑顔で手を振っているんだけど、こんなことならムキムキおじさんと一緒にビーチクリーン活動をしていた方が良かったのかもしれない!


まだまだ残暑が続く日々の中、今度は海に移動した霊能力者二人のドタバタ劇をお送りしたいと思います!!

もし宜しければ

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