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屍の声  作者: もちづき裕
船の謳
87/116

第十六話

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

「「勇さ〜ん!」」

 僕の肩を掴んだおじさんは勇さんという名前の人のようで、

「良かったですよ!勇さんで!」

 中村さんと佐藤さんは安堵の声をあげているのだが・・

「おいおい、お前ら波羽美町から何を持ち帰って来たんだ?」

 勇さんと呼ばれたガタイが良いおじさんは僕の肩を掴んだ手にギューッと力を入れながら言い出した。

「まさかヤケになって変態を連れて来たんじゃないだろうなあ?」

 

「違います!先輩は変態ですけど!そこまでの変態じゃありません!」

 そこで車から降りて来た天野さんが言い出したんだ。

「幼い子には決して興味を持つような人ではありませんから!」

 そういうことじゃないんだよ!天野さん!


「勇さん、その勇さんが捕まえている子なんだけど、ホラーマスク愛好家だって言うんだよ」

 そこで年配の中村さんが言い出したんだ。

「その今かぶっているゾンビのマスクも彼のお手製だって言うんだけど、好きが高じて常にかぶりたくなってしまうっていうんだな」

 すると佐藤さんまで言い出したんだ。

「うちの町に着くまでの間、車の中なら良いってことでかぶらせていたんだけど、玉津くん!到着したからマスクは取らないと!」


 なんなの?僕のことを問題児みたいに言うなんて!

 確かに僕は怖くなって車中でゾンビマスクをかぶっていたけれども!(スケキヨマスクは天野さんから拒否されてかぶれなかったのだ)僕は決して変態ではないのに!


「波羽美町ではかぶっていても問題なかったんです!」

 僕は勇さんと呼ばれるおじさんに向かって主張したんだけど、

「波羽美町は波羽美町!詞之久居町は詞之久居町!」

 天野さんがよそはよそ!うちはうち!みたいなことを言いながら、

「先輩!早く!」

 と、偉そうに急かして来るのは何故?


「もう〜、分かったよ!外せば良いんだろ!外せば!」

 腹たち紛れにゾンビマスクを外せば、

「「「おぉおおおおっ」」」

 三人のおじさんたちが僕の顔を見て声をあげているし、

「わああぁああ!太平洋だ!太平洋!」

 僕に興味がなくなった天野さんは海を眺めながら喜びの声をあげている。


 太平洋、太平洋って、何で太平洋がそんなに嬉しいのだろうかと疑問に思ったんだけど、

「あ!日本海!」

 天野さんの実家は秋田にあるって言っていたし、泳ぐならいつでも日本海で泳いでいたってことになるんだな!


 僕らに声をかけて来たおじさんは辰野勇さんという漁師のおじさんで、

「船を出してもガソリン代の無駄だからな!」

 と言って最近では船を出さずに堤防に漂着するゴミを拾って歩くというビーチクリーン活動を一人で行なっているらしいんだ。


「役所の人間で波羽美町まで視察に行くっていう話は聞いてはいたが・・」

 勇さんは僕と天野さんの方をジロリと見ると、

「まさか波羽美町のあぱっとねえ祭りをうちでもやろうってことじゃないだろうな?」

 と、天野さんの持つ木製の船を指差しながら言い出したんだ。


 波羽美町は奇祭とも呼ばれるあぱっとねえ祭りを外国人インフルエンサーが取り上げてくれたおかげで一気に外国人観光客が訪れるようになったから、同じようなことを詞之久居町でもやるつもりなのかと思われたみたい。


「詞之久居町でもお盆の最終日に船を流してご先祖様への供養をしたりするんですか?」

「いいや、うちは波羽美町とは違って8月盆だし、普通に迎え火を焚いて先祖の霊をお迎えして、最終日は墓までお送りする形になっているが」

「それじゃあ、そこから何かを変えるということは絶対にないので安心してください」


 僕は自分がかぶっていたゾンビマスクを綺麗に畳みながら言ったんだ。

「僕ら聖上大学の神村ゼミは、流行にのっとって何処かの風習を無理やり持って来るようなこともしなければ、ご先祖様から代々引き継いできた風習や歴史を土足で踏み躙ろうとする訳ではないんです」


 聖上大学さんが来ると成功する〜なんて噂が流れている関係で、自分たちの全てを否定され、新しい物に塗り替えられるんじゃないかと恐れる人が意外なほど多かったりするんだよな。


「先輩ってマスクを外すと十割り増しまともな人に見えるんですよねえ」

 そこで天野さんが余計なことを言い出しているんだけど・・

「十割り増しね」

「確かに」

 中村さんと佐藤さんが納得の声をあげているのは何故だろう?


「町おこしのために彼らをわざわざ連れて来たということになるんだよな?」

 そこで勇さんは僕と天野さんの方をまじまじと見ると言い出したんだ。

「あぱっとねえ祭りをうちでもやるって訳でもなく、ここの風習や歴史を踏み躙る訳でもなく、漁業に頼らなくても良いくらいの収益が見込めるほどの町おこしをするってことになるのなら、一体、何をどうやって町おこしをするつもりなんだね?」

「ああー〜、そうですねー〜」


 詞之久居町では波羽美町と同じく近海に島が浮かんでいるんだけど、確かにすぐ近く(と言っても到底泳いでは行けそうにない場所)に島が浮かんでいるのが良く見える。

 江戸時代には流刑島として使われていたと言われるだけあって、想像以上に大きな島に見えるんだけど、今は無人なんだろうなあ。


「先輩、首切り島って何処なんですか?」

 僕と並んで島を眺めていた天野さんが物騒なことを言い出したんだけど、

「首切り島は詞之久居島の真裏に位置するから、ここからじゃ見えないんだよなあ」

 と、勇さんと呼ばれるおじさんが親切にも説明をしてくれているのだが・・


「首切り島、興味がめちゃくちゃ惹かれる名前の島ですよね?行くことって出来ないんですか?」

 天野さんときたら何を余計なことを言っているのだろうか?本当の本当にやめて欲しいんだけど!

 


まだまだ残暑が続く日々の中、今度は海に移動した霊能力者二人のドタバタ劇をお送りしたいと思います!!

もし宜しければ

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