第二話
お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。
神社の神主の息子である先輩は霊感が強いみたいで、私には見えないものが先輩には見えるのはいつものことなんだけど、
「これはセクハラで訴えても良いレベルではないでしょうか?」
勝手に人の家に上がり込んだ挙句、私を抱え込み、私の頭に顔を突っ込んで猫吸いのように深呼吸を始めた先輩は変態だと言えるでしょう。
一個上の先輩が突然部屋に遊びに来ることになって急接近!そこからはワクワクドキドキの展開が!なんてことにはならないのは、恐ろしい見た目のゾンビマスクが私の頭に顔を突っ込んでいるようにしか見えないことからも分かります。
「先輩、これだけは言いたいんですけど・・失禁だけはしないでくださいよ?」
先輩の震えがガチ過ぎて、貞操の心配よりも失禁の心配が先に立っちゃうのは・・
「失禁なんかしないよ!」
そうですよね!大学生にもなってシラフで失禁なんかしないよね!
先輩の怯えがガチ過ぎるので話題を変えた方が良いのかも。
私達が通っている聖上大学は公務員への就職率が抜きん出て高いのが特徴です。他大学では見向きもされないような人文学部民族学科の人気がそれなりに高いのも、国家公務員への就職率が高いから。
「神村教授のゼミ合宿で認められると公務員への就職に有利に働くなんてことを聞いていたんですけど」
白髪で白髭の神村教授というのが大学の名物教授と言われる人で、神村教授に気に入られれば一生食いっぱぐれはしない(難易度が高い国家公務員にも伝手とコネで入職出来るという噂あり)とも言われているんだよね!
「ビーチでパリピとはしゃいでいるだけで単位が貰えるなんて!私も来年は絶対に参加しよう!」
「いやいやいやいや!天野さんは大きな勘違いをしている!」
ゾンビマスクをかぶった先輩はようやっと正気になったようで、私を自分の膝の上からそっと下ろすと、正座しながら言い出したのよ。
「全てはお金なんだよ!お金!」
はあ?言っている意味が分からないんだけど?
ここで先輩は初心に立ち返るようにして人文学部民族学科について説明を始めたんだけど、何でそこから説明を始めるんだよとも思ったんだけど、先輩が冷静になるためのステップを自ら踏んでいるのだと判断して、私は黙って聞くことにしたわけです。
先輩が言うところによると、日本だけでなく世界的に都市部への人口流入が進んでいるため、都市部からも離れた遠隔地に残された信仰・伝説・生活習慣が瞬く間に失われているような状況なんですって!
「ブラジルのサンルイスなんかはアフリカから連れて来られた黒人奴隷の市場があったことでも有名だし、街には黒人博物館なんかもあるんだけど、地方に残る祭りの展示が有名だったりするわけさ。黒人奴隷が多く入り込んだ場所にはアフリカから持ち込んだ文化が祭りとして残っていたりするし、場合によっては悪魔を信仰しているとしか思えない祭りが残っていたりするんだけど、結局それも、後世に伝えることが出来ぬまま消えていくというのが問題になっていて」
私も勉強していて分かっていますよ?最近の民族学科は日本だけでなく世界にも目を向けているってことをね!
「人々の間で伝承されてきた文化は、何処の国に行っても口伝という形で受け継がれている場合がほとんどで、この口伝というものが断絶される危機にあるというのも共通していることで」
私と先輩、正座で向かい合っているんだけど、まるで説教されているみたいなこの状況は何なのだろう?
「この口伝をどれだけ文章にして残せるのかというのが課題でもあるんだけど」
この話、一体いつまで続くのだろうか?
「天野さん?ちゃんと聞いてる?」
「聞いてます、聞いてます」
「そこでお金の話になるんだよ!お金!」
「はあい?」
少子高齢化は何処の国でも同じで、次の世代に伝えられぬまま失われていく伝承や文化を文字として残す、オブジェとして展示をしながら残すにしてもそれなりの予算が必要になるわけで、
「今回、神村ゼミが文化や伝承を残すために挑戦をしたのが、明確な収入増が見込める形の村おこしというもので、低予算の中、現場にある資材を利用してどれだけ集客を見込むことが出来るのかというものだったんだけど」
伝承を残すなら、そこにお金を絡めなくちゃ・・みたいな話は講義でも聞いた覚えがあるけれど・・
「今回、鄙びた海水浴場がある鄙びた漁村と協力をして、村おこしをすることになったんだけれども、漁村と海水浴場自体は問題なかったんだよ。僕だって呪われるのが怖いから事前に調査とかするし、調査をした上で問題ないと思ったから行ったんだし。だけどさ、海は繋がっているんだよ」
大学の講義を聞いているような話から急に核心へと進み出したことに私は気が付きました。
「海はね、水と水とで流れが繋がっているわけで」
ゾンビマスクの先輩は前のめりになり出したので、私は正座のまま後に仰け反ってしまいましたとも。
「はしゃいで海に入った時点でおびき寄せられていたとも言えるだろう!」
正座姿の先輩は前のめりになりながら、声を細めるようにして言い出した。
「普段の僕が、何の考えもなしに海にはしゃいで飛び込むなんてことをするわけがない。いくらアルコールが入っていたからってそんなことをマスクもなしにする僕じゃないんだけど」
ゾンビマスクで海水浴場に現れたら・・想像しただけでウケるんだけど・・
「飛び込んでしばらくして気がついたんだよ」
何に気がついたのだろうか?
「無数の女性の手がさ、僕の足をグイッと引き摺り込むように引っ張って来たことにさ」
先輩は正座のまま、茶化すでもなく真剣な様子で言い出したのよ。
「本当にあの時は驚いたよ、無数の手が僕の足をグイーッと!」
「はあ、そうすか」
私はまじまじと先輩を見つめたよね。今まで船がどうだ、怨霊がどうだと言って来たものだからどんだけ特異な霊体験をして来たのかと思ったら!
「足をグイーッとですか」
良く聞く話、良く聞く展開じゃないですか!ベタな展開だな!ベタすぎるよ!
せっかくの三連休なのに外にも出れず、家に居るしかないってこともありますよね〜。そんな貴方の暇つぶしに!!今度は海に移動した霊能力者二人のドタバタ劇をお送りしたいと思います!!
もし宜しければ
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