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屍の声  作者: もちづき裕
水の嘔
69/116

第十六話

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

 どれだけ長い間、犯行を繰り返して来たかなんてことは僕にはちっとも分からないけれど、殺害された女性の数は十名、そのうち警察の捜査で判明することになるだろう。

 行き当たりばったりのように見せかけて用意周到な容疑者は、今までスピード違反ひとつしたことがないし、痴漢で捕まったなんてことも一度もない。


 ただ、ただ、職場の人間からは、

「あの人、悪い人じゃないんだけど、とにかく、なんだか怪しい人なんだよなあ」

 というミステリアス枠に収まっているようなおじさんだったわけだ。


 今回のことがきっかけで自宅を捜査されることになり、大事に集めていたコレクションを警察の手によって奪い取られることになってしまった。それだけでなく、

「あの人は死刑確定でしょう」

 と、裁判が始まる前から言われる始末。


 日本では二人以上殺したら死刑判決がほぼ決定という暗黙の了解みたいなものがあるから、

「だって今わかっている限りでも七人でしょ?」

 そりゃ死刑は決定でしょ!みたいな感じなっちゃうよね!


「嘘だ!嘘だ!嘘だ!死刑なんて嘘だ!」

 佐竹文彦が驚き慌てている姿が目に見えるようだよ。もちろん国に要請されて自分の所へとやってきた弁護士にも尋ねただろうけど、

「そんな・・そんなあぁあ!」

 この人、自分が捕まった後のことなんか全く想像もせずに生きてきたみたいだね。


「何故だ!どうして!なんで俺が死刑にならなくちゃいけないんだよ!」

 まだ裁判も始まっていないんだけど、

「どうしてだよ!どうしてだよ!」

 自分が悪いことをしたなんて欠片も思っていやしないんだよな。

「そうだよ、全てはさつきちゃんの所為じゃないか」

 そういえばあのゾンビの男も居たな、くらいには考えていそう。


「そうだよ、さつきちゃんさえ僕の言うことを聞いていれば・・」

 膝の上に自分の爪を食い込ませながら、

「そうだよ!さつきちゃんさえ!僕の言うことを聞いていれば!こんなことにはならなかったんだよ!」

 鬼のような形相で天井を睨みつけたんだよね。


 生き霊っていうのは何なんだって言われたら、何なのか僕にはちっとも分からないけれど、佐竹文彦の生き霊は渦を巻いて天井を突き抜けて行ったわけだ。漆黒の渦を巻いて飛び立った怨念は自分の不幸の元凶でもある天野さつきの元めがけて飛び立ったわけだけれど・・


「ブラヤジエルブラヤジエル(こっちへ来い) ヒズリカ・ヒズリカ・ヒズリカ(早く早く) ブラヤジエル パッパ  ブラヤジエル  パッパ 」

 出た!良く分からない呪謳!良く分からない言語、良く分からないリズム、聞いたことなどあるはずもないのに、何故か謳の内容が分かるんだ。


 椅子に座った天野さつきは目を瞑ったままの状態でぶつぶつ歌を歌っているんだけど、向かい側に立っている僕の耳鳴りと圧迫感と頭痛が大変なことになっている。それにしても何で呼ぶんだよ!生き霊を呼んでどうするんだよー!


 そうこうするうちに本当に生き霊の渦が怨念となって離れ屋へとやって来た。天野さつきはぶつぶつ歌いながら机に突っ伏してしまったんだけど生き霊はそんなさつきに飛び掛かることも出来ずにウロウロした挙句、部屋から飛び出して行ってしまったんだ。


すると震度五の地震くらいの揺れが起きて、足元もふらつく中、地震なんかものともせずにさつきが部屋を出て行ってしまった。

 どうするって・・追いかけるしかないよな?追いかけるしかないよな?ああ〜―いやだー!でも、仕方がないのでスケキヨマスクをきっちりとかぶりなおして天野さつきを追いかけたんだけど、すでにさつきは離れ屋の裏に広がる森の方へと移動をしている。


 僕には彼女の後ろ姿しか見えなかったんだけど、黒い渦の中に埋もれている彼女は身動きも取れないような状態だ。だけどさ、だけどだよ?その漆黒の渦はどんどんと小さなものになっていて、渦の中からは人の魂のようなものが浮かび上がっている。


「ああ・・そうか・・そうなんだよな・・」

 彼女は巫女の家系に違いない。巫女の家系は浄化を得意とする者が多く、危機的状況に陥った際には自衛本能として魂に染み込んだ力を呼び覚ますこともあるだろう。


 今、天野さつきが歌っている謳は水の謳、哀れな魂の鎮魂を願ってあの世へと通じる呼び水を言葉で紡ぎ出しているのだ。十を数える哀れな光は回転するように空へと消え、森の闇の中に沈澱するかのように、一人の男だけが残っている。


 怒りと焦り、情欲と羨望、嫉妬と悲哀、恐怖と戦慄。

 黒々としてドロドロした塊は佐竹文彦の形をしているけれど、まるで蛙のように地面に這いつくばっている。

「よし!ここで古代の巫女様に生き霊は退治してもらおう!」

 後ろからこっそり眺めていた僕は、

「頑張れ〜!巫女様―!」

 と、応援をしていたわけなんだけど・・

「あれ?」

 呆然と立ち尽くした天野さつきは、

「なっ!なっ!何これ!」

 と、目の前のドロドロとなった生き霊を眺めて驚きの声をあげている。


 その姿をちょっと離れた場所から眺めていた僕は思ったよ。

「マジかよ、そこはきちんと除霊をしてから目を覚ましてくれよ!」

 ってね。


さつきとたくみの出会いはこんな調子ですが、心霊なのか?ヒト怖なのか?懲りずに最後までお付き合い頂ければ幸いです!!毎日十二時に更新しています!!

もし宜しければ

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