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屍の声  作者: もちづき裕
水の嘔
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第十四話

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

 地球温暖化を全世界の人々が実感している中、

「本当に今日も暑いな〜」

 と、思わない日は無い中で、交通誘導の仕事ほど大変なものはないと僕も思うもの。

 一番身近にある仕事、道路を歩いていれば目にすることがとっても多い、とにかく暑くて辛くて大変そうなお仕事。古くなった水道管の工事、道路工事、ガス管工事、工事、工事で交通誘導員はいくらいたって問題ないくらいなんだけど、

「あんな大変そうな仕事、やってられないよな〜」

 と言って、若い子なんかは見向きもしなかったりするんだよね。


 それじゃあ外国人労働者を採用して・・となると、

「交通規則も分からないような人間に交通誘導なんか出来るのか!大丈夫なのか!」

 というクレームの電話がかかってくる。

 最近、重労働と言われるガテン系の仕事やコンビニエンスストアでは外国人がたくさん働いているというのに、

「交通誘導に外国人はちょっと〜」

 というんだから仕方がない。それじゃあ、辛い仕事でも辞めずに真面目に続けてくれる人を大切にするしかないって状況に陥るわけだ。


 大学まで包丁やらナイフやらバールを山ほど持ってやって来た佐竹文彦さんは、交通誘導警備員Aの資格を持っていたんだってさ。これは国家資格にもなるんだけど、この資格を持っている人が一人でもいるだけで事務所としては非常に重宝することになる。


「あの・・佐竹さんなんですけど・・なんだかあの人・・気持ち悪いんですけど」

「すみません、私、佐竹さんが苦手で」

「佐竹さんとシフトが重ならないようにして欲しいんですけど」


 そんなことをアルバイトの女の子たちが言って来たとしても、

「気をつけてはいるんですけど、このおじさん顔がやっぱり警戒されちゃうみたいです〜」

 と、言われてしまえば、

「まあ、佐竹さんのその顔じゃね!」

「それで言ったら他のおじさんもほぼ同格でしょ?」

笑い話に変えて終わらせてしまうんだ。


 女の子たちが顔を真っ青にして、

「やっぱり無理です!」

「私、この仕事辞めます!」

 と、言い出したところで、すぐに辞めそうな大学生と長年働いてくれる佐竹文彦の仕事の比重は明らかに違うので、

「こちらとしては残念ですが、それは仕方がないことですものね」

 と、言う選択肢しかなかったのだろう。


 アルバイトを辞めた女の子たちがその後、どうなったのかなんて知る由もないし、また別のアルバイト希望の子はやってくるし。

「佐竹さんなんですけど・・やっぱりおかしくないですか?」

 職場の人間が声を上げたところで、

「でも、あの人に抜けられたら大変なことになるからね〜」

 と言って、取り合おうともしないんだろう。


 人手不足が叫ばれる中、地下に埋まっているあらゆる物が老朽化していく今の世の中では交通誘導員はいくらでも雇いたいような状況だ。ギリギリの中で人手を回しているというのに、ここで常勤スタッフに抜けられるのは痛すぎる。だからこそ都合の悪そうなことには目を閉じて、粛々と仕事を回すことだけを考えて・・


「佐竹文彦という男がここで働いていたとお聞きしているのですが?」

 事務所に二人の刑事が訪れた時、対応に当たった事務員は何かの間違いではないかと考えた。

「あの佐竹さんが?」

「あの人、誤解されやすい人なんですよ」

「また、若い子に誤解されたんじゃないですかね?」

「「いやいやいや、そうじゃないんですよ」」

 二人の刑事は声を揃えて言った後に、

「彼には殺人の容疑がかけられています」

 と、年取った刑事の方がはっきりとした声で言い出した。


「おそらくこちらの職場で物色をしていたのでしょう。被害者のDNA鑑定待ちというところでもあるのですが、とにかく、非常に深刻な事態だと言えるでしょう」

「深刻な事態って・・」


 その後、警察によって女子更衣室に仕掛けられた隠しカメラ、トイレや事務所に仕掛けられた盗聴器などが発見されることになり、

「いやいや・・まさか・・あの佐竹さんが・・」

 呆然とした様子でその事務員は椅子に座り込んだみたいだけど・・お前は気が付いていたよな?あの男が完全に怪しいって気が付いていたよなあ?


 毎年、毎年、怯えた女の子から相談を受けていたんだろうから、流石にあの男は怪しいって思っていただろ?だけど夜勤シフトでも嫌がらずに入るし、文句も言わずに働くしで、

「事務所では第一線で働いているような人だったんですよ・・」

 重宝していたから見逃し続けていただけだろ?


 構造がアレだな。小学校の性犯罪の構造とまるで一緒だよ。

 空前絶後の教員不足、ギリギリの中で仕事を回しているような中で、ここで一人抜けられれば大きな痛手となるのは間違いない。

「あの先生は優秀な先生だし」

「嫌がらずにどんな仕事でもしてくれるんだよ」

「だからこそ・・」

「「「単なる勘違いってことじゃないのかなあ?」」」

 出た〜!言い出した奴の方が悪いんだという雰囲気を作り出すやり口!天野さつきが事務所で何かがおかしいと訴えたところで、

「「「神経が過敏すぎるんじゃない?」」」

 で終わらせたあれだよ!あれだよ!


 とにかく日本って性犯罪に対して寛容すぎるほどに寛容な国なんだよな。これが国外だったら、

「まず、何があったのか話してくれる?」

 と、被害に遭ったと思われる人間の話を親身になって聞くだろう。その話を聞いた上で、問題となる人物や周りの人間の聴取を進めた上で、問題となった人物の進退の検討に入るだろう。


 それがまともな対応って物だと僕でも思うんだけど、

「あの人が仕事を抜けることになったら困るから」

 まず第一に来るのがその考えだから、良い結果に結び付くわけがないんだよな!

 

 


さつきとたくみの出会いはこんな調子ですが、心霊なのか?ヒト怖なのか?懲りずに最後までお付き合い頂ければ幸いです!!毎日十二時に更新しています!!

もし宜しければ

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