表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
屍の声  作者: もちづき裕
水の嘔
57/104

第四話  

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。


「死ぬ〜?」

 意味が分からない。

「私が死ぬってことですか?」

 スケキヨマスクを被った先輩は目を左右に走らせながら、挙動不審となって言い出した。

「君、今日はバイトも入れていないだろう?」


 確かに、今日はバイトを入れてはいないけど。

「生き霊となって取り憑いている奴が、君が住むアパートの前で待ち構えているんだよ」

「えええ?」

 正直言って信じられないんだけど。

「何処かの誰かが生き霊として私に取り憑いているとして、一体、誰が私の住んでいるアパートの住所を知っているっていうんですか?」

「それは・・」

 先輩は挙動不審となりながらも、

「君がバイト先に書いて出した履歴書には、君のアパートの住所が書かれているだろう?」

 モジモジしながら、

「事務員が席を外した隙に見られて、住所や携帯番号、大学名まで覚えられちゃっているような状態だよ」

 全く意味不明なことを言い出したのよ。


「えーっと」

 私は軽いめまいを感じています。

「えーっと」

 ぐるぐると目の前が回転していく感じです。

「もしかして、その生き霊とやらは五十代近くの小太りのおじさんじゃないですかね?」

「そうそう」

 先輩は生唾をごくりと呑み込むと、

「情念が凄すぎて、完全に犯罪者、とにかく気持ちが悪い」

 と、言いながらスケキヨマスクの口元を抑えて、ウエッウエッと吐き気をもよおしだしたみたい。


 先輩が個人で使っている部室には、多種多様なゾンビだけでなく、ドラキュラやフランケンシュタインなどのクラシカルなホラーマスクも飾られているし、作業する台には何だか良く分からないものが整然と並べられていたんだけど、

「とにかく、一旦、落ち着こうか」

 先輩はそう言って近くにある椅子に座るように私に勧めると、温かいコーヒーを淹れてくれたのよね。


 親切な先輩は私の前にコーヒーカップを置くと自分が作業用に使っている椅子をゴロゴロと移動させて来たんだけど、スケキヨマスクがあまりにシュール過ぎて言葉が出て来なくなってしまったわ。


 スケキヨってあれよ、あれ。犬神家の一族に出てくる白塗りマスク姿の男で、ビルマ従軍中に顔に大火傷を負ったということで頭にマスクをかぶっているあのマスクよ!


 通販でも買える代物だっていうのは知っているんだけど、スケキヨマスクって口が開いていないのよ。口が開いていないマスクでどうやってコーヒーを飲むつもりなんだろうかと眺めていると、後ろを振り返りながらマスクを持ち上げて自分が用意したコーヒーを飲んでいるみたい。


 お陰で由美ちゃんが言っていた国宝級イケメン顔は顎先すらもチラッと見ることが出来なかったんだけど、

「性的な目で見られる気持ち悪さっていうのは僕も良く分かるし、性的な対象として想像を働かされる気持ち悪さっていうのは僕も十分に理解している」

 スケキヨマスク姿の先輩は、随分としんみりした様子で言い出したんだけど、

「性的な目ってなんですか?」

 ちょっと意味が分からないかな?

「もしかして生き霊となった佐竹さんが?私を性的な目で見ているってことですか?」

「そこからなの?」

 スケキヨ先輩はガックリした様子でため息を吐き出すと、

「男は誰もが獣と同じなの!職場に若くて可愛らしくて愛想も良い女の子がやって来たら、俺にもワンチャンあるかもしれないとか考えちゃうような生き物なの!」

 怒りの滲む声で言い出したのよ。


「それで言ったら先輩も性犯罪者」

「ちょっとやめてくれる〜?勝手に人の部室まで押しかけて来ておいて、君は何を言っているのかな〜?」

「すみません」

 私は潔く謝る道を選びました。

「前から怪しいおじさんだなーとは思っていたんですけど、ガチ中のガチって感じの人だったんですね?生き霊まで発生させちゃうって言うのなら、ヤバイの極みに達しているということですもんね?」

「そうだね」

「それで、この雨の中、のこのこと家に一人で帰って行ったら私は死ぬと?」

「そうだね」


 思わず私とスケキヨ先輩は同時に雨が降りしきる窓の外を眺めちゃったんだけど、

「佐竹さんってシリアルキラー的な犯罪者だったんですか?そんな風には見えなかったんだけどなあ」

 そこまで極まっているおじさんには見えなかったんだけど、

「何処にもヤバイ奴はいるし」

 先輩は外を眺めながら、

「僕だって痴漢防止のためにスタンガンを持ち歩いているからね」

 と、言い出したのよ。


「え?スタンガン?」

「そう、スタンガン」

「えええ?本当にスタンガン?」

「本当にスタンガン」


 誰がスケキヨ相手に痴漢なんか働くのだろうか・・こんなマスクを常習的にかぶっている時点で危険人物認定されているだろうに、痴漢防止のためにスタンガンを持ち歩くって!

「自意識過剰が過ぎませんか?」

 私の言葉にスケキヨ先輩はチッと舌打ちをすると言い出した。

「日本は性暴力に対してとっても寛容過ぎる国なの!男が痴漢にあった、男が危ない目に遭ったと言ったところで、ああ、そうなん?女性にお尻を触られるなんて役得だったんじゃない?とか言い出すし、男の癖にだらしないなんてことを被害にあった僕に対して平気で言い出すような国なんだから!」

 スタンガン片手に、

「自衛だよ!自衛!」

 と、言い出すスケキヨ先輩は変態にしか見えないけど、

「先輩!お願い!お願い!そのスタンガンを持って私の家まで一緒に来てください!」

 と、拝み倒すことにした。


「だってね?帰ったら死ぬって言われたっていずれは自分の家に帰らなくちゃならないわけですよ。イカれたおじさんが私の家の前で待ち伏せしているかもしれないですけど、先輩さえ付いて来てくれれば!絶対に佐竹さんは私に悪さなんかしようとは思わないですって!」


 スタンガンを片手に持つスケキヨが一緒に居たら!絶対に!絶対に!佐竹さんの方がビビって逃げ出すのに違いない!

「えー〜?」

 明らかにやる気がない先輩は、その後もグズグズ言い続けていたのだけれど、

「先輩!ここで私が死んだら!絶対に先輩を恨んで取り憑いてやりますからね!」

 という言葉が決め手となったようで、

「大学から徒歩圏内だっていうし・・ハー・・なんで僕がわざわざ出て行かなくちゃならないんだよ〜」

 ブツブツ言いながらも私の家まで付いて来てくれることになりました。



さつきとたくみの出会いはこんな調子ですが、心霊なのか?ヒト怖なのか?懲りずに最後までお付き合い頂ければ幸いです!!毎日十二時に更新していきます!!

もし宜しければ

☆☆☆☆☆ いいね 感想 ブックマーク登録

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ