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屍の声  作者: もちづき裕
水の嘔
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第二話

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

 私が賃貸で借りているアパートは一応、備え付けのエアコンがついているんだけど、

「なんだか寝苦しいんだよなあ〜」

 毎日、雨、雨、雨で、とにかく夜に眠れない。

 仕方がないからスマートフォンを手に取ったり、動画を見たり、なんだかんだしている間に外から新聞配達をするスクーターが走る音が聞こえてきて、

「環境が変わったからなのかな?本当の本当に、最悪!」

 枕をベッドに叩きつけても眠ることが出来ず、そのまま朝を迎えることになってしまうのだった。


「はあ〜眠い〜」

 こんな状態だから授業に集中することも出来ず、疲労感ばかりが積み重なっていっている中で学食があるホールに向かって歩いていると、

「君・・君・・」

 と、背後から声をかけられることになったわけ。

 その声は若い男性の声だったんだけど、

「何でしょうか?」

 振り返った私は大きく目を見開いたまま、

「ギャーーーーーーッ!」

 と、悲鳴をあげることになったのよ。


 人通りがあまり多くない第三校舎から第二校舎へ移動する廊下の影から、私の方に向かって出て来たのが目玉が飛び出たゾンビのマスクをかぶった男で、

「シイッ!静かにして!叫ばないで!僕は決して変態じゃないんだから!」

 見上げるほどに背が高い、腰が引けた状態のゾンビマスクの男が言い出した。


「変態って、自分は決して変態じゃないと言うらしいじゃないですか!」

「そうじゃない!そうじゃない!」

 変態はしどろもどろとなりながら、

「君、人文学部民族学科の一年生の生徒だろう?」

 と、言い出した。

「僕は君と同じ学部の先輩にあたるんだ」

「は?同じ学部?」


 私が通うことになった聖上大学は大学祭が名物で、

「聖上大学といえば特殊メイクやホラーマスクを使ったハローウィンパレードが有名です!今年も多くの学生が仮装をしていますねえ!」

 という感じで、テレビで特集されるほどのものだとか。


 関西の有名なテーマパークのハロウィンイベントで大学として参加したとかしないとか。とにもかくにも特殊メイクとホラーマスクが凄い!と話題にもなっているし、

「そのホラーマスクを制作している先輩が、マスクを装着した状態で大学生活を送っているんだよ〜!」

 という噂話を聞いたことが確かにある。

「あの〜、同じ学部だというのは理解しましたけど、噂で聞いていたマスク先輩が私に何の用事があるのでしょうか?」

 その日の先輩は目玉が飛び出ているゾンビマスクをすっぽりと頭から被っていたのだけれど、

「君には生き霊が憑いている」

 と、意味不明なことを言い出したのよね。


「え?生き霊?」

「そう、生き霊」

 私と先輩が目と目を見つめ合わせること三秒ほどだったとは思うけど、

「あの・・先輩・・私、宗教とか興味ないので〜」

 と、言いながら一歩、先輩から離れて言いました。

「遠方から上京して来ていますし、お祓いにお金を使う余裕もないので、勧誘するならもっと金持ちそうな人を誘った方が良いですよ」


 マスク先輩はというと、

「そうじゃない!そういう勧誘とかじゃないんだって!」

 慌てふためきながら言い出した。

「僕が他人に対してこんなことを言うだなんて、本当の本当に!珍しいことなんだ!」

「珍しいとか言って、またまた〜」

「本当!本当なんだって!」

「はい、はい。生き霊が取り憑いているっていうんですよね?」


「さつきー!まだご飯行ってなかったの〜?」

 私がゾンビ教の勧誘を受けているのを察したのか、同じ学部の由美ちゃんが声をかけて来てくれたので、

「先輩、すみません!お友達が待っているので失礼します!」

 ぺこりと頭を下げて、脱兎の如く逃げ出した。


 都会の大学では宗教の勧誘が多いみたいだから気をつけろって親に言われていたんだけど、まさか本当に?私ったらゾンビ教の勧誘を受けちゃったってことなのかしら?


「由美ちゃん!あのねえ!」

「さつき!玉津先輩と何を話していたの?」

 由美ちゃんと私が言葉を発したのはほぼ同時で、

「由美ちゃん、あのゾンビ先輩の名前を知っているの?」

「凄いじゃない!人見知りが激しいと噂の先輩に声をかけられるなんて!一体何をやらかしたの?」

 再び、ほぼ同時に言葉を発してしまったので、私は一呼吸置いて、由美ちゃんの肩を両側からがっしりと掴んだの。


「由美ちゃん、あのゾンビ先輩は玉津先輩という人なの?」

「そうよ!聖上の名物学生じゃない!」


 ソンビ先輩は私たちの方をちょっとだけ眺めていたんだけど、ゾンビのマスクを被ったまま、廊下の奥の方へと去って行ってしまったのよね。とっても、とっても不気味だわ。


「ねえさつき、もしかして先輩のマスクを外した姿を見たの?」

「はあ?マスク?」

「ねえ!ねえ!マスクを外した姿を見たのかどうなのか尋ねているんだけど?」

 なんでそんな勢いで訊かれるのかが理解出来なかったんだけど、

「玉津先輩はね!とにかく物凄いイケメンなのよ!」

 由美ちゃんは胸を張って言い出した。

「そんじょそこらのタレントさん程度なら、平伏して拝み倒してしまう程の素晴らしいお顔の持ち主なのよ!」

「ええ?あのゾンビが?」


 私が知る先輩は、目玉がポロリと落っこちかけている肌が緑色に変色して、髪の毛が禿げ上がったゾンビ姿しか見ていないので、ゾンビがイケメン、全然想像なんか出来ないって!


「さつきはあの至近距離でお話をしたんでしょう?マスクは剥がした?こう、下から少しずつ顔が顕になるような形で!ねえ!出来たの!出来なかったの!」

「だいぶ前のス◯イダーマンじゃあるまいし」

 思わず呆れ返っちゃったわよね。

「覆面プロレスラーのマスクをはぎ取るみたいにビリーッとやるならまだ想像がつくけど、初対面の先輩に対してお色気たっぷりにそんなことをするわけがないでしょう!」

「ええー!私だったらやる!やる!」

「いやいやいやいや」

「イケメン顔見たい!イケメン顔見たい〜!」


 由美ちゃんは興奮して暴れているけれど、ゾンビの下にある顔がそれほどのイケメンなわけがないでしょうに。

「それで?さつきは先輩から一体何を言われたわけ?」

「いや、それが・・」

 私は真面目な顔で由美ちゃんを見て、

「生き霊が取り憑いているって言われた」

 と、答えたんだけど・・

「嘘でしょう!今すぐにお祓いに行った方が良いよ!」

 由美ちゃんは予想外の反応をして来たんだよね!



さつきとたくみの出会いはこんな調子ですが、心霊なのか?ヒト怖なのか?懲りずに最後までお付き合い頂ければ幸いです!!

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