第三十二話 素盞嗚神社
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廃神社については僕なりに図書館で調べてみたんだけど、創建年代は不詳となっていて、江戸時代までは御祭神が宇賀神とされていたんだけど、明治の廃仏毀釈により祭神名を改めることとなったらしい。
江戸時代まで祭神だった宇賀神の宇賀は仏教語の宇迦耶(財施)に由来するとも言われている。人頭蛇身で蜷局を巻く姿で表される。
配神は宇迦之御神という素戔嗚の娘とされる穀物の神様。
明治以降は、祭神が素戔嗚命になり、配神を宇迦之御神、大蛇の靈に改められている。境内には供養塔が建てられ、水害や疫病から人々を助けようと人柱となって祈願した人々を弔ったとされている。
熊埜御堂社長も言っていた通り、災害から村人を守るために山の主に会いに行き、自分の娘を生贄として捧げたという話からも分かるとおり、生贄文化があったんじゃないのかな?僕には良く分からないけれど。
それで、明治以降は生贄とか人柱はダメ!となって、しばらくは自分の指を供物として捧げていたんだけど、それもどうなんだろうという事になって、修験者に頼んで何とかしてもらったっていう話なんだよね?
まず、神社で分かったことをまとめると・・
・供養塔があるし、人柱とか生贄みたいなことが行われていたお土地柄なのでしょうね?
・素戔嗚命と大蛇の靈をセットで祀る、ちょっと変わった神社だったということ。(通常、廃仏毀釈した神社は、大概、天照大神を持ってくることが多いんだよね)要するに、素戔嗚命は建前で、本命は蛇様の方ってことなのかも。
・四十年前までは、一応、いろいろな神社を梯子状態の神主さんが、素戔嗚神社の面倒を見ていたわけだけど、熊埜御堂吾郎くんの失踪、熊埜御堂郁美の自殺を機に、神社本庁に廃止の手続きが行われることになる。
・この廃神社は酒巻山の中にあるんだけど、以降、使われることなく放置されたままの状態となっているため、廃墟マニアやオカルトマニアの間では有名となっているらしい。
「行くなら、きっちりと準備をして、明日とか明後日に向かった方がいいんじゃないんですかね?」
「お客様が迷子になっているのかもしれないですし?」
「ここら辺は、猪や鹿も出るので、動物に襲われたりしたら大変じゃないですか?」
「それじゃあ、捜索する際に、猟友会を頼んだほうが良いんでしょうかね?」
「いやいや、秀吾さん、とりあえず私たちで神社の方を見に行かなくちゃ、話にならないんじゃないかな?」
「それじゃあ、皆さんで見に行ってもらって、僕はどんなことになっていたのか、後でお話を聞くという感じで」
「何を言っているんですか!私たちはもう仲間でしょう!ねえ!」
「そうですよ!そうですよ!仲間ですよ!ねえ!」
何で僕はおじさん二人に両腕を掴まれて引っ張られなければならないんだ?正直に言ってやめて欲しい。
「俺も行きます!足には自信があるので捜索の手伝いはできると思います!」
「俺も!」
「俺も行きます!」
「昨日のリベンジもしたいんで!」
僕がおじさん二人に引っ張られている間に、意欲満々といった様子の赤峰と、音響、照明担当の男どもが僕の方へと近づいてきた。
「私もまこと君と一緒に行きますよ?どこら辺で絢女を見たとか教えられると思うんで!」
「うん、うん、俺たちも行った方がいいよな」
サークル部員のカップル二人、こちらは善意から申し出てくれているんだな。
「それじゃあ、妹を探すために、俺も一緒に行きます!」
兄の陸守邦斗が覚悟を決めた調子で、一歩前に出て言い出したんだけど、
「「いやいやいやいやいやいや!」」
と、おじさん二人が言い出した。
「君の妹さんが行方不明なんだよね?」
「怖いからやめておこう!お兄ちゃんの出番はないと思う!」
兄がラブ過ぎる怨念ズの『アアアアアァ』を聞いている二人は、真っ青な顔となって邦斗の参加を止めようとしている。確かに、脱衣所には女の幽霊まで出て来て、
「抱いて・・・」
とか言ったんだろ?マジで怖えわ!
「いや、でも!俺の妹が居なくなったんですし、俺が喧嘩さえしなければこんなことにはならなかったのかもしれないし、皆さんにだけ迷惑をかけてもいられないですよ!」
変な責任感とか要らないって!
お兄ちゃんは要らない、本当に、要らない。色々と怖いから本当に要らないって!
すると、天野さつきが噛んで含めるようにして言い出した。
「もしかしたら、絢女さん、喧嘩しちゃったし、勝手に出ていく真似をしちゃったし、申し訳ないって思って、お兄ちゃんに謝らなくちゃって思って、ホテルに帰ってくるかもしれないじゃないですか?」
『それはあるかもしれない!絢女ちゃんはお兄ちゃんラブだから、やっぱりお兄ちゃん居ないと寂しいって言って帰ってくるかも!』
萌依子がフリップに書いて掲げているけど、だから、その文言が怖いんだって!ゾワゾワしてくる〜!
「探すのは男子たちに任せて、私たちはホテルで待ちましょう!カードゲームをしてたら、あっという間に時間も過ぎますよ!とりあえず、ホテルで皆んなが神社から帰ってくるのを待ちましょうよ!」
爽やかに言いながら、サークルの女子部員の方へと向かおうとする天野さつきの肩を、僕はガッツリと掴んだよ。おじさんたちの手を振り切ってさつきの両肩を掴むと、さつきは心底嫌そうな顔をしながら振り返る。
「今回、ラスボス臭(神様とか精霊とか、上位のスピリット的な何か)がぷんぷんするので、私はここで待っていようかと」
「冗談じゃねえぞ!だったら僕も行かないよ!」
「それは困ります!」
「ニコイチで効果があるんでしょ?だったらお嬢さんも行ってくれなきゃ困りますよ〜!」
僕らが揉めている間に、赤峰たちはいそいそと、アクションカメラやハンディカムを用意し始めている。なになに?まさかこの後に及んで、心霊動画を撮りに行くわけじゃないよね?
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