第三話 霊感少女に霊感少年
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神主の息子である僕は、親の職業が関係しているのかどうかは分からないけれど、幼い時から幽霊は見えるし、心霊現象に出くわすことも度々で、しかも実家の神社には、呪われた人形やら曰く付きの着物やら山ほど持ち込まれるし、お祓い希望の人々が多く訪れるような有名神社。
幸いにも後継予定の兄が居るから、神主になるための大学に通わずに済んだわけだけど、
「たくみ、大学にいくなら人文学部民族学科に行きなさい」
と、親に強要されることになったわけ。
うちの神社は、曰く付きのものが山ほど持ち込まれている関係で、民俗学に詳しい人を求めていたらしい。山村部の過疎化が進み、文献にも残されずに失われゆく文化みたいなものが今の日本には山ほどあるんだけど、その、消えゆく文化の中から発掘される呪物みたいなものが、回り回って、うちの神社に持ち込まれる。
「聖上大学の人文学部民族学科だったら、お前だって文句はないだろう?」
「聖上大学か・・」
聖上大学といえば、大学祭で行われるハロウィンパレードが有名で、特殊メイクを施した学生によるダンスパレードはテレビでも特集されるほどなのだ。
「お前、特殊メイクを極めたいとか言っていただろう?」
親のその一言で、大学を決めた僕は、明らかに安易に決めすぎた。
この世の中には幽霊というものは確かに居る。呪いに引きずられるようにして昇華出来ず、この世に残ってしまった思念体みたいなものなのだけれど、僕は昔からそいつらの姿を見ることが出来る。その点については実家の影響を受けているのかもしれない。
大学の後輩である天野さつきは、僕としては有り難い存在でもある。何せ彼女は、強い力を体の奥底に秘めている関係で、雑多な幽霊なんかは近寄って来ないからだ。
いつでもマスクをかぶって幽霊が見える世界から自分を遮断しているような僕だけれど、彼女がそばに居る時はマスクが外せる。雑多な幽霊が近づいて来ないから、嫌な思いをしないで済むからだ。
その代わり、強力な霊は彼女に関わりを持とうとする。あまりに強烈な霊だと、彼女はその霊の言葉を歌として感じ取ることが出来る。更に強力な霊になると、その姿まで見えるようになる。見えるレベルの思念体に出くわすことはそうそう無いから良いんだけど、一度だけ、そいつに取り込まれて死にそうになったことがあるんだよな。
危うくトラックに轢かれて異世界転生するところだったけれど、そんな僕を助けてくれたのが後輩の天野さつき。彼女さえいれば、僕は幽霊にとり殺されることもないのかもしれない。わからんけど。
「先輩!うちがこのボロアパートで、隣が事故があった町工場になるんです!」
大概、大学のキャンパスって緑の木々に囲まれていたりするんだけど、僕が通う聖上学園も、ちょっとした小高い丘の上にあって、豊かな緑に囲まれている。
大学が一つの都とするのなら、その中心地から見て丑三つの方向に天野さつきのアパートがあった。今のこの世の中で方角を気にするのは、神主の息子ゆえのことかもしれないけれど、意外に、方角とか風水とか侮れなかったりするんだよね。
「先輩!今日は私、隣の町工場に、毎日指が飛んで来て困りますと苦情を言いに行こうと思っているんです!」
「マジで?」
「マジです!」
そんな話は聞いていないのだが、カレーを食べるだけの話じゃなかったのか?
「作業をする時には、アパート方面の窓を閉めてくれないかとお願いするつもりなんです!毎日、毎日、指が飛んできたら堪ったものじゃありませんよ!」
「そこで、何で僕が必要になるのだろうか?」
「だって、女の子一人だと舐められるかもしれないじゃないですか!」
今日は、後輩のアパートに霊障が起こっていないか調べに来たはずなのに、知らない間に工場へのクレームに同行することになったらしい。
『熊埜御堂金属加工株式会社』
銅板で出来た古いフレームが飾られている門扉を潜って敷地の中へと入ると、トタンで出来た古い工場が二棟あり、プレハブで出来た事務所の前には車が二台、停車していた。
「すみません〜、すみませ〜ん」
躊躇なく、プレハブの事務所の扉をさつきが開けると、目の前がぐらぐらと大きく揺らぎ出す。
まるで世界中が暗転したように真っ暗となり、扉の奥から何かの群れが、大きく身動きするようにしてこちらに向かって鎌首をもたげる。
巨大な蛇の周囲には百匹以上の蛇が絡み合い、こちらに向かって威嚇するように鎌首をもたげている。
「はい!どちら様でしょうか?」
「あの、すみません、隣のアパートに住んでいる者なのですが」
突然の来訪者に驚いた様子で立ち上がる事務の女性に、朗らかな笑みを浮かべながら答えている天野さつきは、蛇の霊体には気が付いていない。
彼女が気が付いていない時点で、それほど大きな霊ではないのだろうけれど、
『シューシュー』
威嚇音を出しながらこちらに来るのは何故だろう?
「天野さん、出直した方が良いんじゃないの?」
「先輩、そんなことを言って、明日も指が落ちていたらどうするんですか?せめて窓は閉めてもらえるようにお願いしないと!」
さつきの言葉で、女性の事務員の人も何かに気がついた様子で、
「もしかして、指が飛んでいった?アパートの方?」
と、尋ねてきた。
指とかどうでも良いんだけど、とにかく、この巨大な蛇は、白だ、純白だ、純白の蛇は神の遣い手とも言われたりするらしいんだけど、神々しさゼロ、怨念の塊のようにしか見えない。
「ちょっ・・天野さん?僕、ダメかもしれない・・」
「え?先輩?一体どうしたんですか?」
思わず後ろから天野さつきに抱きつきながら、蛇が近くに寄らないように移動を開始していると、
「あんた、その蛇が見えるのかね?」
奥の部屋から顔を出した小太りのおじさんが、驚いた様子で僕らの方を指さしたのだった。
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