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屍の声  作者: もちづき裕
船の謳
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第三十六話

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

 田舎に行くと本家とか分家とか、何処どこの家の人とか、何処どこの家の分家筋の人という話題が出てくるよね。詞之久居町では菅原家の本家の人々が昭和のリゾート開発に乗っかったは良いものの大火災を起こして一家離散状態になったそうだけど、その後も分家の人たちは町で幅を利かせていたみたい。


 漁業が盛んな詞之久居町では漁業組合の力が大きかったんだろうけど、その漁業組合を牛耳っていたのが菅原清さん。

『お前らは禁忌を犯したんだ』

『絶対に呪われるぞ』

『間違いを犯したお前らには天罰が下るだろう』

 と、記した文面を詞之久居島で僕に見せてきたおじさんになるんだけど、この方は朝方になって顔を真っ赤にして苦しみ、七転八倒を繰り返した末に、玄関まで這いつくばるようにして移動した挙句に死んでしまったというんだよ。


 後に検死を行って明らかになったんだけど、清さんの腸は尋常ではないレベルで捻れまくり、腸の一部が捻れ切れ、内容物が腹腔内に溢れ出したことと大量の出血によってショック死をしたみたい。


 清さんのお仲間とされているのが佐田治郎さん、並木秀治さん、菅原健一さんという三人も清さん同様、もがき苦しみながらバターンと倒れて死んでしまったんだけど、四人とも朝の七時ぴったりに絶命をしたものだから、

「ヒィイイイイッ!」

 高峰茂さんというボスの腰巾着的存在だったおじさんがパニック状態になって警察に飛び込んだんだって。


「昨日!昨日!詞之久居島で!」

「あれだ!あれ!呪いなんだよ!天罰だ!」

「死にたくない!死にたくない!」

「全部聖上大学の学生の所為なんだ!」


 高峰茂さんの言っている言葉は支離滅裂だったんだけど、

「全部!聖上大学の学生の所為なんだ!」

 というところで警察署の人たちはピーンと来たっていうんだよね?

 突如、同時刻に死んでしまった四人の遺体は死亡確認のために病院に運ばれたっていうんだけど、これだけでも十分に事件性を感じさせるもんね。更には高峰茂さんの証言で他所から来た大学生が関わっているとなったらさ・・

「大学生が何かしらのドラッグを詞之久居町に持ち込んだんじゃないか?」

「それを奪い取った清さんたちが訳もわからず利用して、挙げ句の果てに中毒死をしたのかもしれない」

「十分にあり得る話だよな?」

 ということで早速、問題の大学生に事情聴取をしてみようってことになったみたい。


 巫女さんショックで(勝手に命名)眠ったままの天野さんを勇さんの家に放置するわけにもいかないので、

「とりあえず僕一人で警察署に行ってきます」

 と、言って僕はお出かけをしようとしたんだけど、

「いや、勇さんにも来て貰わないと」

 問題の大学生を立ち入り禁止の島まで連れて行ったのは勇さんだということで、勇さんまで警察の事情聴取を受けなければならないみたいなんだ。

「それじゃあ実家に帰っているうちの嫁さんに家まで戻って来てもらうから、嫁さんが帰って来次第警察署に行くようにしますよ」

 勇さんは飄々とした様子で言い出したんだ。


「実はこの玉津君と一緒に女の子の学生さんも来ていて、昨日のショックで未だに寝込んでいるような状況なんですよ」

「昨日のショックって、一体昨日、何があったんですか?」

「それはこれからの事情聴取で玉津君が教えてくれることと思いますけど」

 勇さんは肩をすくめながら言ったんだ。


「都会から若い女子大生が来るってことで悪いことを考える人間がうちの町にはいるでしょう?そんな状態でよそ様のお宅から預かったお嬢さんを放置して行くわけにもいかないでしょう」

「いや、でも」

「嫁さんが戻って来たら警察に行くって言っているじゃないですか?それとも何ですか?うちに放置して行った女の子が万が一にも悪戯をされたとして、警察はきちんと責任を取ってくれるんですかね?」


 勇さんの家には制服姿の警察官が二人でやって来ていたんだけど、結局、何かをモゴモゴ言い続けた挙句に僕一人だけを連れて警察署に戻ることにしたみたい。

 僕はパトカーの後部座席に座るのはこれで二度目なんだけど(天野さんが佐竹さんというシリアルキラーに誘拐されそうになった時に、僕は事情聴取のためにパトカーで移動することになったのだ)二度目ともなると緊張感とか薄まっちゃうものなんだな。


     ◇◇◇


 なんだか長い夢を見ていたような気がします。

 何の夢を見ていたのかはちっとも覚えていないのですが、

「ああ〜、体が痛い〜」

 全身の節々が痛くて目を覚ますと、見たことがないマダムが私の顔を覗き込んでいることに気が付きました。

 うちの母親よりも年上に見えますが、顔立ちがはっきりした美人のマダムは、

「あら!刑事さん!お嬢さんが起きたみたいですよ!」

 と、言い出した。


「ええっと・・」

 聞き違いじゃなければ『刑事さん』という単語が耳に入って来たんですけど。

「まさか、ここでも佐竹さんの事件の事情聴取を受けなくちゃいけないとかですか?」

「ええ?佐竹さん?」

 マダムはコテンと小首を傾げた後に、

「刑事さん!起きたばかりだからまだこの娘、寝ぼけているみたいよ!」

 と、居間に向かって声をかけているみたいです。


 昨日、船酔いに苦しみながら詞之久居島に移動をした私はそのまま島で気を失ってしまったらしく、島から戻って来てからは勇さんの家でご厄介になっていたみたい。時計を見ると夕方の十八時、随分と眠っていたみたいです。


 私を覗き込んでいたのは勇さんの奥さんで、

「大変なことが起こったから急いで帰って来いと言われて帰って来たら、本当に大変なことになっているから驚いちゃったわよ〜!」

 と言って明るく笑っているのですが、

「大変なことってなんなんですか?」

 さっぱり分からないんですけれども。


 何がなんやら分からないのですが、事情を聞きたいということで二人の刑事さんが勇さんの家まで訪れて私が起きるのを待っていたみたいです。

「あの〜、一体、何がどうしたんでしょうか?」

 佐竹さんによる殺人事件が明らかとなって以降、夏休みの半分を消費したんじゃないかと思うほどしつこく警察の事情聴取を受けることになった私ですが、

「佐竹さんの事件でまた進展があったんですかね?」

 私が二人の刑事さんの向かい側に置かれた座布団に腰掛けながら問いかけると、

「その事件と本件とは全く関係はないんです」

 と、若い方の刑事さんが言い出した。


「佐竹さんの事件と本件は関わりないと言いますけど」

 最凶のシリアルキラー事件に巻き込まれて以降、警察のご厄介になるようなことは無かったと思うんだけどなあ〜と、そんなことを考えていると・・

 バリバリバリバリバリバリッ 

 ヘリコプターが上空を移動する音がバリバリ聞こえて来るのは何故でしょう?


「もうマスコミが嗅ぎつけたみたいですわね〜、テレビのニュースで取り扱っているのかしら〜?」

 私の前にお茶を置いた奥さんが居間に置かれたテレビをつけようとしたので、

「奥さん、奥さん」

「テレビはちょっと困ります」

 と、刑事さんたちが慌てた様子で止めている。


 ところでなんですけれども・・

「一体、何があったんですか?」

 先輩は居ないみたいだし、勇さんも居ないみたいだし。先輩と勇さんの代わりに勇さんの奥さんと二人の刑事さんが居るわけですが、何がどうなったのかさっぱり分かりません。

「うーんとね」

 勇さんの奥さんは私の隣に座りながら、

「詞之久居島から女性の遺体が発見されたのよ」

 と、言い出したんだけど、

「「ちょっと!奥さん!余計なことは言わないでください!」」

 二人の刑事さんが慌てているのは何故なのだろうか?



今度は海に移動した霊能力者二人のドタバタ劇をお送りしたいと思います!!

もし宜しければ

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