縋りの回想
それはいつか、とある公園での出来事。
「オマエさ、コンビニでアイス買ってこいよ!」
小学生の頃の俺は、弱かった。虐げられる側の人間だった。
ピアノに、勉強に。昔から品よく育てられてきた俺は、抗う方法というものを知らなかったのだ。
……にも関わらず、幸い、と言うべきだろうか。俺はただ一方的にやられる存在というワケでもなかった。
「アンタたちっ、なにしてるのよ!!」
「げっ出たよ……ほんと情けねーヤツ!」
当時こそ彼らに対しては恨むだけであったが。今になって思えば、向こうの言い分にも一定の正当性はあったかもな……なんてことを考えてしまう。
確かに、俺は情けなかった。
「大丈夫?そーくんっ」
「あ、ありがとう……なっちゃん」
振り返ってこちらを心配そうに見つめる少女……小学生時代の朝霞奈緒である。
俺はなっちゃんに手を引かれ、その場を離れた。
「も~っ! アイツら、そーくんのコトをなんだと思ってるんだろうね!?」
小学生の頃の俺は、弱かった。虐げられる側の人間だった。
「大丈夫だよっ。何があっても、私はそーくんの味方だから!」
……でも、なっちゃんがいてくれたから。守ってくれたから、平気だった。
なっちゃんは俺の”光”と言っていい存在だった。
そして俺の……初恋だった。