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私と出会ってご愁傷様

作者: 美亜

今更、過去は変えられないし、もし過去に帰れたとしても、同じ思考で多くの時間を無駄にするのは分かり切ってる。あなたにしてきた私の思わせぶりな態度や言葉使いを許してほしい。生きるために必要なことだったの。




 「七瀬さんって、背が小さいですね。」そう隣に立っていう大学の後輩は、186㎝の無駄に高い身長で目の前の市民競技場のトラックを見据えながらリュックを持ち直した。こいつは自分の身長が他の男子と比較しても頭一個分抜きんでていると自覚しているくせに、背が平均的な私に振る話題をこれに決めたらしい。

 「あー、高倉君に比べたらそうかもね。」無難にそう返すと、「かわいいですね。」とこちらをみてはにかむ顔を見せてくる。

 「・・・・あー、ほんとに今日は寒いね。」いや、勘弁してくれ。クラスのムードメーカになれそうな顔でもないくせに、何なら初対面の先輩にさらっとかわいいなんて口にするなんて常識あんのか。

 上を見上げれば二月という灰色の寒空に、ポツポツと合成ゴムで作られているトラックに冷たい水が打ち付けている。


 うちの大学は、普通の底辺私立大学だ。医療系の大学であるが、基本的に出席重視の大学なため、頭が特別抜きんでていなくても入れる。出席がものをいうため、基本的に普通の大学生のようなキャピキャピしたキャンパスライフは送っていないが、それなりに満足した生活を送れている。大学二年生という華の世間一般で人生でもっとも遊べる時期は悲しいことにすでに過ぎ去ってしまったが、過ぎたことはしょうがない。彼氏はいないが、友人もいるし、仲をぶち壊すような空気の読めない少女漫画の主人公のようなバカなオツムの持ち主でもない。偏差値の低い医療系大学というのは、出席が重視される。うちの大学がそうであるように、単位がとるため以外に救護ボランティアという誰がそんなめんどくさいところに休日返上で行くかよってことにも参加しなければならないのだ。単位が取れないなんてくそ制度がなかったら誰がこんなとこくる?

 救護バックを背中に背負って、トラックを走る選手を見つめる。救護ボランティアなんて言っても、倒れるような人は一回の大会で一人いるかどうかでほとんどは転んで擦り傷を作る程度だ。救護バックは重いし、耳障りなノイズに相槌を打たないといけないし、寒いし、帰りたい。

私の返答には気にしたことがないように、隣の男は、うんちくや自分の価値観をしゃべり続ける。「いやー、寒すぎるね。」もう一度、つぶやいた。

 あーほんとに帰りたい。





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