秘密を知る人
死ぬのって怖いのか。昨日梨菜に聞かれて思わず怖いと答えたけど、考えて見れば僕は今まで死ぬという事に対してなにも考えたことなかった。病気になって数年。死ぬと言われてからも数年たったが未だに自分が死ぬと心のどこかでは受け止めきれてないのかもしれない。
「え、僕が病気?」
信じられるはず無かった。徐々に受け入れていけたが、発覚して数日はなにも出来なかった。なにかをやる気も起きなかった。自分が大病を患ってると言われて何をすればいいのだろうか。断捨離と遺書とか残したほうが良いのだろうか。彼らには手紙を残すとして後はどうしよう。
死ぬなんて急に言われても、覚悟なんて出来てない
「どうした、すげー顔暗いぞ。なんかあったか?」
流石に付き合いが長いとバレるようだ。今日は梨菜にどんな顔で会えばいいのか分からない。何も悪くない梨菜になんであそこまで暴言を吐いてしまったのだろう。
「梨菜となんかあったんでしょ」
なんでそこまでバレてるのか。
「昨日梨菜から電話あって芽唯どうしよ~って。なにかあったかは詳しく聞いてないけど…らしくもなく喧嘩したんだって?」
少し違うがあながち間違いでも無いので訂正はしない。
「ちゃっちゃと仲直りしちゃいな。仲間がぎくしゃくしていると嫌だからさ」
頭では分かっているのだが、どうにも行動に移れそうにない。
「あ、梨菜」
なんていいタイミングで…
「朝陽、ちょっと良いか?」
拍子抜けした声を発した彼についてきてもらった。
「なに、どうしたん?」
「梨菜と仲直りできないかもしれない」
「凄い重大な悩みでもあるのかと思っていたが安心したわ」
重大な悩みが無いわけではないが誰に相談しても解決しない問題なので話すだけ無駄である。
「まあ、そこまで悩んでるならお前の好きにしたらどうだ?」
今度は僕が拍子抜けする側だった。絶対に仲直りしろと言われると思っていたから。
「お前が考えて出した結論なら芽唯も納得するだろう。俺的にはすぐにでも仲直りしてほしいがそこまで強要する気はないしな」
仲間思いな友達がいると困る。死ぬ事がどんどん嫌になってきてしまう。朝陽に感謝を伝え教室に戻る。梨菜を呼び移動する。周囲からの視線が少し気になったが気にしてないふりをしながら準備教室に向かう。行きながらどう伝えようか考えた。仲直りなどきちんとした事が無かったから。
「梨菜、昨日は悪かった。梨菜は悪くないのに暴言を吐いてしまって。本当に申し訳ないと思っている。ごめんなさい」
言葉が詰まるところもあったが、なんとか伝えられたと思う。数秒沈黙があり、失敗したかと思ったが、梨菜の言葉でそうでないと確信した。
「私もごめん、考えればすぐに分かることを無神経に聞いて。奏多が辛くないはずないのにね。本当にごめんなさい」
ひとまず安心した。この後は普通に教室に戻るものだろうと思っていたが梨菜に引き留められる。
「あ…のさ、昨日も聞いたけど皆に言う気はないんだよね?」
再度確認するように聞かれた。
「うん、絶対に誰にも言わない。しないと思うけど芽唯にも朝陽に言わないで。お願い」
「分かった。じゃあさ、私からもお願い一つ、良い?」
「良いよ。なに?」
「奏多がもうすぐ死ぬって事は皆に言わない。けど、私も未来が見えるってことは言わないで欲しいんだ」
だろうな、と思った。そんな事言ったら自分の未来見てとか、明日何があるの?とか聞いてく輩がごまんと出てきそうだ。しかし、未来が見えるなんて羨ましいなと梨菜に言おうとしたところでふと思った。未来が見える。しかも、昨日の地震をピッタリ当てられるくらいはっきりと分かるという事だろう。頭を回転させ考えた。そして、僕の脳はある一つの結論にたどり着く。
「あのさ、梨菜。授業中寝てるばっかりの君がテストの点が良い理由はさ…答え、未来からカンニングしてるから?」
状況を知らない人は僕が何を言ってるのか分からないと思う。この言葉で伝わっているのか分からないけど、要するに未来が見えるなら、うちの学校はテスト返却の際に模範解答も一緒に配られるので、そこの未来を見て答えをそこで覚えちゃえば授業中に寝ていてもテストで高得点を取れてしまう、という事だ。
「バレた」
少し悔しそうにぼそっと、しかしはっきりと呟く。思わずため息が出てしまった。
「少し見損なった」
「奏多にはバレたから、これからはちゃんと勉強するよ。多分…」
これまでカンニングしかしてこなかった梨菜が果たして今から高校の勉強についていけるのだろうか。
「20世紀初頭にヨーロッパの火薬庫と呼ばれた場所はどこだ?」
こんな問題同年代の人なら即答だ。さて、梨菜はと言うと…
「え~っと、ちょっと待ってね。うんうん…………えっとねぇ、オアフ島?」
ああ、終わった。と思った。
「梨菜、勉強したことある?」
「高校受験から何もしてない」
そこを自信満々に言うな。この後も五教科様々な問題を出したがどれも不正解だった。流石の僕も
「真面目にやってる?」
と聞いてしまった。梨菜は真面目にやってるらしいが、この状況では来年度の進学が危うくなってしまう。僕みたいに先の短い人間ならば良いが、梨菜は違う。これからまだまだ先がある人間だ。ここでつまずくとこの先も全部つまずいてしまう危険性がある。どうにかしてここでつまずきを解消しないといけない。どうしようか。
「とりあえず今日から授業は真面目に受けること。受けていないようだったら梨菜が未来見えることをバラす。良いか?」
渋々と言った感じで梨菜は了承してくれた。だが、この条件はなかなか厳しいと僕も思う。なので、
「あのさ、僕が勉強教えても良い?」
と提案した。自分が頭がそこまで良いとは思って無いが平均以上に頭は良いと思っている。人に教えた経験はそこまで無いがそこらへんはどうにかなると思う。まあ、梨菜が首を振る方向で今後が決まるのだが、果たして。数秒の沈黙の後に言われた言葉はと言うと、
「うん、お願い。お願いします。だけどさ、良いの?残り五か月しかないのに。こんなことに時間使っても」
確かにと少し思った。だけど、これと言ってやりたいことは何も無いので別に良い。
「良いんだよ別に。その代わり僕が死んだら勉強は教えられないけど」
それくらい分かってると少し怒られながら教室に戻る。芽唯と朝陽は僕らの顔を見て何となく察したのだろう。彼らの顔から笑みがこぼれていた。この日の放課後から梨菜に勉強を教える日々が始まった。
推敲してた時にあれ、短くね?と。
個人的にはそこまで気にしてませんでしたが現在四話まで制作出来ているのですが今のところダントツで短いです。
あ、こんにちわ作者です。昨日投稿しようと思ってpcの前に座ってたら朝でした。
三話もそのうち投稿するかもです。
それではまた。
追記:タイトル二人の秘密から変更しました。