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見える君と見えない僕  作者: 川端
11/15

叶わない

お待たせしました! それではお楽しみください


「兄ちゃん、好きな人でもできたの?」

休日の朝、いつもより少し遅めの時間に起きて、椅子に座り淹れたてのコーヒーの香りを楽しんでいるところを、愛奏音の質問でそれらは破壊された。

「……え?」

「いや、最近やけに楽しそうにスマホ眺めているからそうなのかなって。もしかして付き合ってるとか?」

女性というのはこういうとき妙に鋭いのはどうしてなのだろう。

「まあ、そうだよ」

もったいぶって伝えると後々面倒な事になりそうな予感がしたので、なるべく素っ気なく、感情を込めずに言った。

「え、は、マジ⁉」

「なんで聞いてきた本人がびっくりしているのさ」

「んー、もうすぐ死ぬ人の事を好きになる人がいるのかぁって」

「……………………いるんだな、それが」

愛奏音には聞こえていなかったかもしれないけど、別にそれでも良い。

「彼女さんには伝えたの?」

「伝えたというより、知られてしまったって言葉の方がしっくりくる」

「へえ………………そっか」

と言うと、妹はソファに倒れこんだ。

「まだ………生きてくれるよね…?」

「うん、まだ死なないし、死ねないよ」

愛奏音のためにも、芽唯、朝陽、それに梨菜のためにも僕はまだ死ねない。病気に負けている場合じゃない。気落ちしているのか愛奏音はクッションに顔をうずめてしまった。そんなときは妹の大好物、カフェオレを淹れてやると機嫌がよくなるのだ。

「ありがと」

遠慮がちにカフェオレを一口飲む。

「…………これ苦くない?」

「あ、バレた?」

少しでも元気づけようと思いいつもより少し濃い目のコーヒーを淹れたのだ。

「これが大人の味ってやつだよ………心配しないでも僕が突然いなくなることは無いから安心して」

「兄ちゃん大人になれないじゃん…………わかった」

シスコンと思われるかもしれないけれど、愛奏音は可愛いから僕が死んだ後彼氏でも作って僕がいたという事を忘れられる時間を増やしてほしい。結婚は、あと八年くらい勘弁してほしい。そのとき、僕はいないけれど。

「彼女さんとデートいった?」

「ううん、まだ行ってないけど」

「付き合って何か月か知らないけど流石にデート無しはキツイわ…引く」

妹にド直球にそんなこと言われると心にくるものがある。

「前から遊びに行く仲だったから今更そんな……」

「前から行ってても、その時は付き合って無かったんでしょ?彼女さんはたぶんデートに行きたがってると思うよ。それが恥ずかしくて言えないだけ…とにかく!今度の日曜はデートね!」

梨菜と出かける予定をなんで妹に決められなければならないんだと言う憤りにも似た感情と、〝初デート〟という言葉が僕を緊張させる。

「分かったよ、行くよ。行くから」

とりあえず、日曜が楽しみになってきた。


「デ、デート?」

ふたりで昼食を食べているときに愛奏音に言われた通り、梨菜をデートに誘った。

「うん、今度の日曜なんだけどもしかして予定あった?だったらそっちを優先してほしいんだけど」

「あ、いやいや……大丈夫!行けるよ。楽しみ。なんだけど、」

「だけど…?」

「なんか私たち前から四人で遊ぶこともあったし、三人とか二人で遊ぶことも結構会ったじゃん?だから今更な感じというか…あ、別に楽しみじゃないわけじゃないよ。実際ここら辺は皆で何回も行ってるし、正直飽きていると言いますか、新鮮さが皆無なんだよね」

それは僕も思っていたことだ。長くこの街にいるのと皆で何回も一緒に遊んでいるのとで、この街のいたるところに四人での思い出が色濃く心に残っているのだ。

「じゃあ、思い切って県外でも行く?」

先日、愛奏音に言われてから考えていたことだ。

「梨菜と同じような事を僕も思っていて、だから少し遠くなるけど行ってみない?まだ具体的な場所は決めてないんだけど、梨菜が行きたいところがあればそこで、」

「はい!」

急に大きい声で挙手した梨菜に驚きすぎて声も出なかった。

「私、行きたいところ、あります!」

スマホを取りだし、一生懸命に指を動かす梨菜を見ながら、手を付けていなかった弁当を一口食べる。

「ここです!ここに行きたいです!」

叩きつけるようにスマホを置き画面をどこかの黄門様かのように見せつけてくる。

「………水族館?」

「そう!水族館!」


「んんんんんんんんんんんんん着いたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼‼‼‼‼‼‼」

「テンション高いね」

まあ来たかった場所なら当然テンションは高くなるか。というか、

「その四角いバッグはなにを入れてるの?」

「ふっふっふ……それは秘密だよ……」

悪魔のような笑い方をしている梨菜は放っておいて入場チケットを買いに行く。日曜なのと人気の水族館というものが合わさって、チケットを買うだけで一苦労だった。僕らの地元でこんなに混むことなんてほとんどないのに、さすが都会だ。

「お待たせ、かなり混んでたから早速行こうか」

「うん!少し待って…今準備中だから…………」

先ほど指摘した四角いバッグから何かを取り出している。

 梨菜が荷物を出しているあいだにこの水族館にいる動物についてもう一度おさらいすることにした。なんと言ってもこの水族館の目玉の一つとなっているのは、イルカのショーだ。光や映像を駆使しているらしく又、昼夜でショーの内容も変わるらしくとても楽しみだ。あとはどんな魚や生き物がいるのか調べようとしたところで梨菜の準備が終わった。

「ごめん、ごめん。時間かかっちゃって」

「ううん、全然大丈夫だ………けど、ごめん、なにそれ?」

数分ぶりに見た梨菜の手には黒い筒が握られている。

「あ、これ?これはねぇカメラだよ?」

筒と思っていたそれには何やら長方形のものがくっついていた。

「これがレンズで、これがカメラのボディ。少し古いカメラんだけど、使いやすくてずっと使ってるんだとね」

梨菜がカメラを手に取っている姿を、僕は初めて見た。

「前からカメラで写真撮る趣味ってありましたっけ?」

「うん、別に隠していたわけじゃないんだけど、聞かれることも無かったから」

因みにこんな写真撮ってます、と少し自慢げに見せてきた写真はどれも綺麗で美しい風景ばかりだ。

「まだまだプロの方々に届くレベルじゃないけど、それでも頑張ってるの。だから死ぬってことが分かる前は写真に強い大学に進学しようかなって思ってたの。今は夢なんて見るだけ無駄になっちゃったけどさ……」

自嘲気味に言う梨菜に僕は何も言えなかった。

「さて!しんみりとした空気になっちゃいましたが、早速行きましょう!イルカのショーが見たいの。ほら、行くよ!」

さっきの空気を打ち消すように明るく振る舞う。せっかくの初デートだ、楽しまなければ損する。

「よし、行こう!」

「とは言っても、ショーまで時間はまだまだあるので最初は普通に魚を見ましょう。何か見たい魚いる?」

「べたなところで言うとペンギンとか?」

「良いね!じゃあそこに行きましょう!」

カメラを構えながらルンルンで歩いている梨菜の後ろ姿がどこか愛らしく見えたので、バレないように梨菜を撮影する。写真を撮り終え、確認をしているとこっちに梨菜が向かってきた。

「ちょっと、早くいかないと混んじゃうから。急ぐよ?」

一瞬バレたと思い、ドキッとしたが、そうではないようで良かった。

「ほら、早く!」

そこそこ離れたところから呼ばれたので小走りで向かう。

「わぁ……!可愛い!」

といって見ていたのはタラバガニだった。可愛いの…か。魚介類が好きな僕は美味しそうという感想を口にしてしまいそうだったが、なんとか堪える。ここにいるとカニが食べたくなって仕方ないので次の展示に目を向ける。

「あ!見てみて!クラゲ!」

ユラユラと揺れ動いているクラゲは優しく淡く光るライトと相まって、いつもより幻想的に見えた。クラゲに見惚れて足を止めていると

「かーなたー!ペンギンいるよ!」

と、梨菜が報告してくれたがそんな大声で言われると少し恥ずかしい。

「分かった、今行く!」

目の前のクラゲに小声でバイバイと呟き梨菜の方へと歩き出す。薄暗いところにこれでもかとたくさんの人がいるせいでなかなか前へと進めない。急いで行って自分がケガするのも、見知らぬ誰かをケガさせるのもどちらも嫌なので魚を見ながらゆっくりと進む。

 思ったより時間はかかったが何事もなく目的地に着いた。それとほぼ同じタイミングでペンギンのショーが始まったみたいで、どこからかちらほらと「かわいい!」「こっち向いた!」という歓声が聞こえてくる。

「いたいた奏多。探したよ?それより、今ちょうど、ペンギンのショーが始まったの。ほらこっちこっち!ペンギンさんが良い感じに見える場所があるから!」

梨菜に手を引かれるがまま、ペンギンがよく見える場所へと案内される。テトテト歩くペンギンを眺めているとなんだかのほほんとした気持ちになる。一方梨菜はカメラを構え、ペンギンを真剣に撮影している。どんな写真が撮れたのかはあとで見せてもらう事にして、僕はまた写真を撮っている梨菜を撮る。ペンギンを撮っている瞬間、撮った写真を笑顔で確認しているとき。カメラを構えている梨菜を見ることは新鮮で、楽しそうな顔して写真を撮るんだなと一つ、発見した。ショーの時間は意外と少なくすぐに終ってしまった。

「次どこ行こうか…奏多行きたいことろは?」

「ペンギン見れたから後は大丈夫かな。梨菜は撮りたい写真とか魚ある?」

「あ~………じゃあさ」

少し緊張した声を発しながら僕の目を見る。

「奏多を撮りたい」

「僕を?」

もうすぐ死ぬってことを除けば、何の変哲もない僕を撮って面白いのだろうか、そう聞こうと思ったときだった。

「風景とか動物とかは撮りなれているんだけど、人物はあまり撮ったことなくて練習したいの」

そういう事なら協力しよう。

「良いよ、どこで撮るの?」

梨菜の顔がパっと明るくなった。

「えっと、じゃあまずここに行って、背景はこの建物。陽がもう少しで出てきそうだかその時を狙って撮る。上手く光が入れば最高の写真になると思うの。そしたら次はここ。今日の奏多の服装は少し暗めだからそれと対比するような色のここで撮る。あ、伝え忘れていたけどポージングとかしなくて良いからね。自然な感じの奏多が撮りたいからあんまりカメラを意識せずにいてもらえるとすごく助かります」

好きな事にはこんなにも熱中して、活き活きとしながら楽しそうに話している梨菜を見ていると、なんだかこっちまで楽しくなってきた。

「よし!じゃあさっそくだけど行こうか!」

カメラバッグを強く握りしめ歩き出す。その後ろ姿が突然小刻みに震え出したので慌てて駆け寄る。大丈夫?と声をかけようと口を開いたところに梨菜の笑い声があたりに響く。

「壊れた?」

「失礼な!」

とそれも、笑いながら突っ込む。

「なんか、今この時間がすごい幸せだなぁってさ」

少し遠くを見つめ名残惜しむように、そう梨菜は言う。

次に梨菜は、重そうに口を開く。

それは、少し衝撃的なことだった。

「実はさ、もう私、未来見えないんだよね」

梨菜が死ぬという事が分かってからなんとなく〝その日〟が来ることは分かっていた。ただ、思っていたより早かった。

「でもさ、これが普通なんだよね。前までの私の方が異常なだけで。でも、怖い。自分がいつ死ぬのか分からなくなっちゃったから」

「だったら」

思わず口から出た言葉だった。その後にどんな言葉を続けようか考えていなかった。

「怖いんだったら僕がずっと梨菜のそばにいる。怖くないように一緒にいる」

だから、梨菜にも

「梨菜にも、一緒にいてほしいんだ。僕も情けない事に、たまに怖くなるんだ、死ぬ事が。だから、そのとき梨菜が隣にいてくれるととっても嬉しくて、安心できるんだ」

呼吸を忘れ、まくしたてるように一気に梨菜に伝える。

「…………………と」

消え入りそうなその声を聞き取ることは出来なかった。

だけど、梨菜のあふれんばかりの笑顔が僕にはどうしようもなく嬉しかった。

〝パシャリ〟

「良い笑顔、いただきました」

してやったりという感情まるだしな笑みを浮かべている梨菜。

〝パシャリ〟

「僕も良い顔、撮っちゃった」

今度はやられたと言う顔になっている梨菜。それも撮った。

消せ―と僕のスマホを奪いに来る梨菜から逃げる。距離をとり、写真をsdカードに移行させて鬼ごっこが再開した。

途中で梨菜が躓いてケガしそうになったときは冷や汗をかいたが、なにもなくてよかった。


「帰ろっか」

鬼ごっこのあとは、予定通り写真を撮り、レストランで食事をして、それぞれ家族や友人へのお土産を購入しあとは帰宅するだけとなった。

「今、ちょうど二時半くらいだから向こうには五時までには着くね」

 駅に向かうとき、どちらからともなく手を繋いだ。最初は指先だけだったが次第にその位置はかわっていった。

初めて恋人とつないだ手は、温かくて心地よかった。

僕らが住んでいる街の駅までその手は離れなかった。

「もうちょっとどこか行きたい」

か細い声で言う梨菜の提案にこたえて、最寄り駅から少し離れた街の駅で電車を降りた。

色んな事があった今日がもう、終わる。

終わらないで欲しいなんてワガママだけれど、叶わないことなんて分かっているけど、願うことくらいは許してほしい。

「……また行こうね、ふたりで」

あと何回、行けるのか分からないけれど、その一回一回を大事に出来たら良いなと思う。「次はどこ行こうか?てか、今度は皆で行こうよ。朝陽と芽も誘って、四人で!」

「それも良いね。じゃあ定期テストが終わってからまた考えよう」

「なんで奏多はそうやってすぐに現実に引き戻してくるのかなぁ……」

「ご、ごめんって。だって赤点抱えて皆と遊ぶより赤点を回避している状態で皆と遊ぶ方がいいじゃん?」

それはそうだけどさぁと頬を膨らませながら梨菜は呟く。未来を見る力が使えなくなった今ではテストは辛いものとなったに違いない。

「分からないところがあったら僕が教えるからさ、だからがんばろ?二人で」

「もうすぐ死ぬ私たちに勉強なんていらないと思うんだけど」

「それを言われちゃあ反論できないじゃないか」

でも事実です~!と子供の様に反論してくる梨菜が面白くてつい笑ってしまった。

「あ、雨だ」

さっきまで痛いくらいの日差しを放っていた太陽は忽然と姿を消した。

「傘持ってる?」

「いや、天気予報が晴れだったから持ってきてない」

今日は一日晴れだと朝のニュースで言っていたのにと少し不機嫌になりながらも濡れすぎると風邪をひきかねないので早歩きで家路につくこととする。けれど、数分もしないうちに雨脚は強まり更に遠くで雷が鳴っているのが聞こえたためコンビニに寄り傘を買う事にした。急な雨で傘を持っていない人が多かったのか残っている傘は一本だけだった。梨菜は雨に濡れないように傘に入れていたら僕の右肩が濡れてきたが気にしない。次第に雨の向きが変わりスニーカーは歩くたびに中で奇妙な音をたてるほどに濡れてしまった。すると今度は風も出てきて歩くことも困難になるほどだったので近くの喫茶店に避難することにした。

「この雨だと家に帰れるかもわからないね」

「ずっとこんな雨だったら迎え呼ぼうか」

人間というのは気にすることが減るとお腹も減るようで時刻は六時前とまだ夕食には早い時間かもしれないが空腹には逆らえないので僕はオムライスを、梨菜はエビピラフを頼んだ。料理が来るまでの時間とくにすることも無いので他愛もない話をしあった。最近あったこと、愛奏音の話や、陽茉莉の話。話がひと段落したところにちょうど、料理が運ばれてきた。最初は各々注文した料理に夢中だったが半分を食べ終わったくらいから会話は再開された。

「雨、まだ降ってるね」

喫茶店に入ってもうすぐ一時間ほど経過しそうなのだがやむ気配は今のところ無い。

街の風景は変わることなく何台もの車が行き来していて、サラリーマンらしき人が駅の方へ走って行ったり、同学年くらいのカップルが相合傘をしながら歩いていたり……

いつもは目を向けることも、向けようともしてこなかったけれど、こんなにもいろんな人がここに住んでいて、その人一人一人にそれぞれの人生があって、

「…………………ずっと一緒にいたいな……」

「え、何?急に。とりあえず、そっちのオムライスおいしそうだから一口もらうね」

と、いってとても一口で食べきれる量ではないものを梨菜は持っていった。無理に詰め込んだためか途中でハムスターの様に頬を膨らませていたのには思わずわらってしまったが。写真でも撮っておけばよかった。

「雨はやまなくても時間は経過していくものなので……もう少ししたらここを出ようか」

見ると梨菜の前に会ったはずのエビピラフはすでになくなっていた。食べたかったのに、エビ。

悠長なことは言ってられないので、僕も急いでオムライスを食べ進める。目の前で梨菜がパフェを食べているのを見ながらやっとの事で僕はオムライスを食べ終えた。

「ピラフの後にパフェって胃、もたれないの?」

「jkの胃は鋼鉄だから、気にしない、気にしない」

お腹いっぱいだぁと呟いてから、窓の方を見て、

「よし!帰るか!」

と強く意気込んで席を立つ。店内に響く美味しかったです!という声に何故か僕の頬が赤くなった。お会計を済ませ傘を持って外に出ようと思ったが、無い。

「傘が、消えている……」

誰かが間違えて持って帰ったのか、それとも意図的にとっていったのか。どちらにせよ、僕らの傘が消えていると言う事実は変わらない。

「どーする?」

「しょうがない、迎え呼ぼう」

互いに互いの親に連絡をとる。

「あ、もしもしお母さん?今さ奏多と○○って喫茶店にいるんだけど、傘が……」

「もしもし愛奏音?母さんに迎え頼みたいことがあるんだけど。今、梨菜と二人で○○ってところに居るから迎え来てほしいんだけど…傘?傘買ったらお店でとられちゃって……」

『迎えに来れない⁉』

「分かったそれじゃあ二人で帰ってくる、うん。分かってるじゃあ」

「うん、了解。なんかあったら連絡するね?うん、それじゃあ」

『…………はぁ……』

ふたりで帰るのが嫌なわけではない(少なくとも僕は)。でも、二人で帰るのならもっといい感じの日に帰りたかったというのが本音だ。それに傘が無いのなら帰ること自体が困難なのだ。

「帰ろう、たぶんこれ以上弱まることも無いだろうし」

「そうだね…ずぶぬれになりながら帰りましょう…」

頭を隠すことがやっとなタオルを準備をしつつ、少しでも弱まることを祈っていたが願い空しく、雨が弱まることは無かった。

覚悟を決め、いざ店を出ようとしたとき、店長さんに止められた。大方、忘れ物か何かかと思っていたら、

「傘、ないんでしょ?これ使っていいから!」

遠慮する時間も無く、店長さんはすぐに奥の方に行ってしまった。ここで傘をおいて帰るのも失礼な気がするので今度来た時に返そう。心の中でお礼を言い店を出る。

一歩進んだだけですぐに足は水に浸かったみたいに濡れた。だけどそれは無視し、ゆっくりと前に進む。時折、車が通ってきて、その勢いではねた水がズボンにかかる。帰ったらそのままお風呂に入ろうと呑気な事を考えていたその時だった。

叩きつけるような雨は、周囲の音をも消してしまう。

僕は気づかなかった。

気がつけなかった。

信号機のない横断歩道を渡ったその時だった。

気が付いた時にはもう遅かった。

車のライトが梨菜のすぐそばまでやってきていた。

「危ない!梨菜!」

直後、耳にしたことのない音と感じたことのない痛みに一瞬だけ苦しんだあと、

僕の意識は、そこで途絶えた。


いかがでしたでしょうか? 

第九話 叶わない でした。

また解説等は後書きで書きます

それでは、また。

追記:イルカのショーを書こうとおもって書いてませんでした。

そのうち加筆するか何かしらしようと思います


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