ピンクの魔女は鏡を振り、悪役令嬢の本性を暴く!
*「第3回下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞」参加作品です。
私はオーパーツ魔女のサミ。
いろんな時代に紛れこんだ異物を見つけるのが仕事なの。
ほら、見て、私の特製の鏡。
例えばこのカセットテープを映したら、ぼやんとピンクに光るでしょ?
オーパーツだって証拠よ。
頭に被ったピンクのとんがり帽子を地面に置いて、それを中に入れるの。
鏡振り振り「ハットトリック~!!」と呪文を唱え、反射光を当てれば調整出来上がり。その時代にあった物に代わるってわけ。
「あ、雲!」
帽子の中のカセットは一瞬白いモヤに変わってから、すうっと消えちゃった。
そう、今時保存は『クラウド』よね。
次は真打ち、『ヴォイニッチ手稿』。
「ハットトリック~!!」
何に代わったと思う?
液晶ペンタブぅ~!
中世イタリアにも厨二男子がいたのね~。好き勝手落書きしちゃったみたい。
筆写のフリして文字っぽいもの書き足してもダメ。水浴びする女やカッコいい星座が描きたかっただけ。
さあて、次の訪問先は過去か未来かナルミ国。仲良しの公爵令嬢アメリ様に会いたいわ。
今日の夜会で、重大発表があるって言ってたもの。
「アメリ、ただ今をもって、君との婚約を破棄する!」
なんてこと、王子様がアメリ様を指差してる!
「なぜですか、アキラ様」
姫様のか細い声。
「私はセベスと結婚するからだ!」
あら、ヤバい。
アメリ様は心根のとても優しい方。
セベスは辺境の垢抜けない女よ、とりえと言えば色気だけ!
「君はセベスのドレスを鼻で笑った。世の中誰もが金持ちなわけではない。本心は、自分の容姿がすとんとマッチ棒だから、魅力的なセベスが羨ましかったのだろう?」
マッチ棒なんて、オーパーツ確定物件!
なんて感心している場合じゃないわ。アメリ様が肩を震わせて泣いてる!
「今すぐセベスに謝罪しろ、マッチ棒! そして今日中にこの城を去れ!」
アキラ王子はセベスにそそのかされてしまったのね!
「アメリ様、お気を確かに。お化粧直しに行きましょう?」
ハンカチを離さない姫様に魔法の鏡を貸そうとしたら、セベスの乳牛姿が映り込んだ。
ピンク色に光ってる!
あの女、オーパーツだわ! 異世界転移者?
私は鏡を振り振りセベスに近づいた。とんがり帽子を頭から被せて、窓から差し込む月光を集める。
「ハぁットトリック~!!」
シュウッと音を立ててセベスはかき消えた!
恐る恐る帽子を拾い上げるとそこには、
豊穣のシンボル、土偶――――――!!!!
アキラ王子はショックのあまり乱心、土人形を抱えて廃嫡されましたとさ。
土偶って思ったより胸がない!
ポンキュッポンのイメージ例としては「縄文のビーナス」と呼ばれるもの、見てみてください。
(妊婦像らしいんですが、お肌なめらか)