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転生侍女は推しを死なせたくない ~気づいたら推しにも騎士にも暗殺者にも愛されていた~  作者: 村沢黒音
第4章 推しと冒険の旅に出ます

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48.誘拐イベント発生


 あっという間に時間が過ぎて、運命の時が近づいてきた。

 ゼナ誘拐イベントが起きるまで、あともう少し。


 私たちが立てた作戦はシンプルだ。

 今回のイベントは街中で発生する。


 ゲーム中で流れるムービーシーンは、こんな感じだ。


 街中でゼナにフードをかぶった謎の人物が接触する。その人物は「神子の件で話がある」と告げて立ち去る。神子のことでコンプレックスを抱えるゼナは誰にも相談できず、その男に指定された場所に1人で向かう。そこで突然、背後から襲われて、ゼナは意識を失う。

 そしてフェードアウト、場面が変わり、ユークたちのシーンになる。ゼナが帰って来ないと勇者たちは困惑し、彼女を探すことにする。


 と、イベントの流れはこんな感じだ。


 私が初めてこのシーンをプレイした時、ゼナ側の背景が全くわからないから、すごく戸惑ったんだよなあ。「何で急にゼナちゃんがいなくなっちゃったの!?」って、びっくりしたっけ。


 まあ、今回は状況をすべて把握してるから、このイベントはスキップさせてもらうわけだけど!


 そして、イベントが発生した。


 ゲームと同じように、謎の人物がゼナに接触を図った。

 他のメンバーは気付かぬふりを続ける。ゼナはさり気なく、パーティーメンバーから離れ、1人で行動を始めた。


 それを見届けてから、ユークたちも動き始めた。

 ゼナが呼び出された場所は私の予言でわかっている。そこに先回りして、ゼナの誘拐を食い止める。それだけだ。


 そして、その作戦は驚くほどスムーズに展開した。


 ゼナがパーティーから離れ、人気のない裏路地へ入る。


 それを着け狙う敵――を、更に背後から見張る勇者一行! さながら二重尾行のような配置によって、敵は一網打尽だった。何が起こったのか理解する間もなく、ユークたちに取り押さえられた。


「さすがだよ、ルイーゼ! 本当に君の言う通りになった!」


 敵を一斉に叩きのめした後で、ユークが目をキラキラとさせながら私の方を見る。


「ルイーゼの助言がなかったら、ゼナがさらわれて危険な目に遭っていたかもしれない……!」


 いや、本来なら、さらわれるのが正史なんだけどね!


「ありがとう、ルイーゼ。君の予言の力には、本当に救われている」


 ユークに続いて、他の仲間たち(ゼナを除く)も感心した眼差しを私へと送る。


「ルイーゼさんのおかげで、順調に旅が続けられています。あなたは女神さまが私たちに遣わしてくださった希望の光なのかもしれません」

「ここまで正確に未来を言い当てるとは、見事なもんだね」

「すごい! すごいよ、ルイーゼお姉ちゃん!」

「本当に便利だなあ、予言の力っつーもんは! ついでにワシの嫁さんの姿も予言してほしいくらいだ!」

「いえいえ、そんなー。私の力が皆様のお役に立つのであれば~」


 と、控えめに言葉を返している私。内心ではちょっと得意気です。少しだけ天狗です。こんなに褒められて、感謝されたら、そりゃ鼻高々にもなるよ。


 祝福ムード全開の勇者一行。ゼナ以外のメンバーはすっかり浮かれていた。目の前の危機を回避できたことで、気がゆるんでしまっていたのだ。


 だから――すぐに気付くことができなかった。


「ほう……貴方が噂の予言師ですか」


 別の第三者の声が、驚くほど近くから響いた。

 私の背後だ。

 その声は底冷えするほどの冷気をまとっていた。


 一瞬で背筋が凍り付いて、私は急いで振り向こうとして――でも、できなかった。背後から伸びた腕が体をがんじがらめにしていて、身動きが取れない。


 え、うそ。

 何これ。

 っていうか、誰!?


 こんな登場人物、ゲームにはいませんでしたけど!?


 辺りの空気が一瞬で張りつめて、緊迫した物に変わった。

 ユークたちは武器を構えて、私の背後に立つ男と向き合う。


 が……。


「予言師は私が貰い受けます」


 男が冷静に告げた、次の瞬間。

 ぐにゃりと周囲の空気が歪んだように、私には見えた。


 え……なに、これ!

 こんなの、聞いてません。

 攻略ノート(自作・レオンとの共著)には、こんなこと記載されていませんでした。


 と、考えていられたのもそこまでだった。

 がつんと首の後ろを叩かれて、頭の中で火花が弾けた。


 遠くでアイル様が私の名を叫んでいるのが聞こえる。

 その声がどんどん遠ざかっていって……私の視界は真っ暗闇に包まれた。




 +




「彼女を離せ!」


 一番に飛び出していったのはアイルだった。


 ルイーゼをとらえているのは、フードを目深にかぶった謎の男だった。

 どこからどのようにして現れたのか、アイルたちには見当もつかない。彼はまるで風のようにするりと吹きこんで、気が付けばルイーゼの背後に佇んでいたのだ。


 男はあっという間にルイーゼの体を捉えた。

 そして、もう片方の手を掲げる。


 と、男の頭上に光り輝く輪が現れた。その輪が下がり、男とルイーゼの体を呑みこんでいく。

 アイルは地面を蹴り上げ、ルイーゼに手を伸ばした。


 しかし、その手が捉えたのは何もない空間だけだった。


 男とルイーゼの姿が消えている。気配も感じられない。突然、目の前から消えたのだ。


「ルイーゼ……!」


 どこにもいない。

 彼女も、男も。


 一瞬の間に消えてしまった。

 アイルたちは唖然と立ちすくんだ。


 そして――


「ゼナじゃなくて、ルイーゼがさらわれた―――ッ!!?」


 ようやく事態を認識して、一行は大混乱に陥るのだった。


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