白猫くんは撫でられたい Ver.U
僕は物陰に身を潜めて、狙いを定める。
自慢のしっぽを振りながら……今だ!
『奴だ! シロだ!』
『敵襲! 敵襲! みんな無事か?』
『チュン太が捕まりました……』
『チュン太……ついにお前が……』
スズメ達のざわめきを僕は聞きながら、捕まえたスズメにトドメをさす。
『チュン太ぁぁぁ!!!』
『チュン太さん……』
安全なところから見下ろすスズメ達。僕にはかまわない。
だって、僕にはほめてほしい人がいるのだから。
このおいしいスズメを持ってけば、あの子も誉めてくれるだろう。
きっと、もっと撫で撫でしてくれるんじゃないか。
僕は獲物をくわえて、気分上々であの子の所に向かう。
あの子。人間の女の子。僕はその子に撫で撫でして貰うのが、凄く大好き。もっと撫でて貰いたいから。獲物のご褒美に撫で撫でして貰いたいから。
前はネズミを捕まえていったけど、あの子はそれを見て逃げて行っちゃったからなぁ。ネズミは嫌いだったみたい。ネズミもおいしいけど、スズメはもっとおいしい。
だから、あの子もきっと喜ぶはず。
でも問題は……。
「また来たか!! ドラ猫!!」
居たよ……あのヨボヨボ。あの子の巣に住んでいる、老人だ。
このヨボヨボは、凶暴で僕を見つける度に襲ってくる。
「今日こそは、承知しないぞ! ドラ猫め!! 今日は雀を持ってきたか。全く。だから儂は猫が嫌いなんだ。余計なものを持ってきおって!」
ヨボヨボは何かを叫びながら、僕の元に寄って来た。
シワシワの癖して、動きは早い。何度か蹴られたり、棒で叩かれて、痛い目に見たことがある。
僕はヨボヨボが棒を振り落としてきたのを、とっさに避ける。
ん!? しまった! あの子のおみやげ、落としちゃった。
いや、それより、このヨボヨボを退治しなきゃ!
僕はヨボヨボに威嚇する。毛を逆なでて、思いっきり怖い声をかける。
「お、やるか! ドラ猫!」
『いつもの恨み、晴らしてやる!!』
僕は叫んで、爪入りパンチをおみまいする。
ヨボヨボの腕を捕らえて、僕の爪がえぐる。
まだ浅い!
「痛!! やりおったな! 今日こそは追っ払ってやる!」
『次こそ、深手を与えてやる!』
僕は、牙を剥き出し、ヨボヨボに向き直る。
その時。僕の大好きな声が聞こえてきた。
「おじいちゃん、ご飯よ~」
その声にヨボヨボは、僕を睨みつけながら、答える。
僕もヨボヨボの目をそらさない。威嚇してうなり続ける。
「またドラ猫が来おってな。退治する所じゃ!」
「おじいちゃん! 猫いじめないの! あ、怪我してるじゃない! もう……ちょっかい出すからよ……」
「今日こそは退治してやるんじゃ!」
「やめなさい! ほら、ご飯出来たから行くわよ」
僕はヨボヨボの目から視線を逸らさずに、警戒態勢でにらみ続ける。
ヨボヨボは、あの子に引っ張られて、巣に戻された。
そして、ヨボヨボを巣に閉じこめてから、あの子が僕の所に寄ってきてくれて、僕の頭を撫で撫でしてくれる。
「全く……。おじいちゃんと仲悪いのは分かるけど、怪我させちゃダメよ?」
『撫で撫で嬉しい! 撫で撫で嬉しい!』
僕は喉を鳴らしながら、大好きなあの子に甘える。
そうだ、スズメをおみやげに持ってきたんだ。
けど、僕は撫で撫での心地よさに、あの子にすり寄るのに夢中に鳴ってしまう。
「あら……今日はスズメとってきてくれたのね」
『もっと撫でて!!』
「後で、お墓作らなきゃ。もうおみやげはいらないから、いつでも遊びにおいで」
あの子は、僕に何かを言いながら、僕の捕まえたスズメの方に向かう。
スズメは喜んでくれたみたいだ。
僕はまたいっぱい撫で撫でして貰いたいから。
また、スズメを捕まえてこよっと!