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第3話

うれしい!

数日でまたお兄ちゃんに会うことができるなんて。

私は飛び上がってこのまま踊りたい気分だ。

そんな気分が私の行動を後押ししたのか、私は今までのことなんかすべて忘れて、思わずお兄ちゃんの所へ駆け寄ってしまった。

「お兄ちゃん、こんにちは。今日はどうしたの?」

今日は、春休み初日。ちなみに高校は中学よりも早く卒業式があるはずだから、お兄ちゃんは今、春休み真っ只中なはずである。いや、大学入学の準備できっと休みというほど休みではないんだろう。忙しいに違いない。

そう思うのに、目の前のお兄ちゃんは公園のブランコで一人さびしく遊んでいた。

「引越しの準備は終わったの?」

うつむいていたお兄ちゃんは私の言葉に反応して、なぜかすがるような表情で私を見つめてくる。

あぁ、気分はマルチーズと初めて対面したときの感じだ。

かわいい、お兄ちゃん。

「美弥子、今日は逃げないのか?」

はい?逃げる?何のことだ。

「今日の俺は臭くないか?香水をつけてみたんだが、美弥子を魅了できるほどいいにおいか?正直言って俺こんなこと全然わかんなくて、とりあえず、おふくろが持っていたのを手当たりしだいつけてみたんだがどうだ?」

香水?魅了?

お兄ちゃんの言いたいことがいまいちわからない。風邪でも引いて脳みそがいかれてしまったのだろうか。

私が首をかしげていると、風がふわっとふいた。そのせいか、そのおかげか、犬並みに敏感だと自負している私の鼻は異臭をとらえた。

「くさい」

とっても小さな声でつぶやいたのに、運悪く聞き取ってしまったお兄ちゃんがショックを受けたのを見て、私はようやくお兄ちゃんが言っていたことを理解した。

「お兄ちゃん、香水をいろいろつけると、いいにおいも逆に刺激臭になっちゃうよ。全くどうしたの?誰かに面と向かって臭いとでも言われたの?」

「お前は俺のこと臭いと思うのか?」

「へ?今までそんなこと思ったことないけど・・・・?」

「そ、そうなのか。じゃあ、今まで俺のことを避けていたのは何でだ。俺の手の異臭でなければ何なんだ。教えてくれ、美弥子!俺なんでもする、何でもしてみせるから、俺のこと好きになってくれ!!遠くの大学にいって、むざむざ見ず知らずの男にお前を奪われて、平気でいれるほど、俺はできた男じゃないんだ。お願いだ!俺に手を洗わせてくれ!」

目が点になった私の前にはいつの間にか地面に額をつけて土下座しているお兄ちゃん。

というか、なんていった?手を洗わせてくれ?それは・・・

「お兄ちゃん、手を洗っていないの?!」

私の驚きの声に明らかに動揺したお兄ちゃんからはいつものりりしい感じは想像つかないほどの、へたれ具合。

「あの・・・・美弥子・・・・俺の告白への返事は・・・・?」

「あーはいはい、告白ね、告白・・・・って告白?!誰が誰への告白?」

「俺がお前への愛の、手洗いをかけた告白だ」

正直、手洗いをかけた告白というのが気になったけど、それよりも愛の告白という言葉に私は思わず赤面してしまった。

「それって、お兄ちゃんは、私のことが好きってこと・・・・?」

緊張しているためか、のどが渇き、思うように声が出せない。

「そ、そうだ。お前が生まれたときから、俺はお前のことが好きだった。俺の天使だった。女神のような存在だった。お願いだ。俺とこれからの人生をともに歩んでくれないか。俺はお前がいないとだめなんだ!頼む、美弥子」

お兄ちゃんのプロポーズまがいの告白に私は、腰がくだけて、その場に座り込んでしまった。お兄ちゃんはそれに気付いたのか、地面との顔面キスをやめて私の方を見たが、あの麗しい顔に砂がつきまくっていてとってもなさけなくみえる。

私は思わず、ふき出してしまった。

こんなお兄ちゃん、知らなかった。それも私限定でこんな格好をしてくれるのなら、女冥利に尽きる。

「美弥子・・・・?」

「私も物心ついたときからお兄ちゃんのことが好きだったよ」

「ほ、ほんとか!?」

お兄ちゃんは信じられないという表情で私を見てくる。そんなお兄ちゃんに私は笑顔で

「うん」

「美弥子!!」

「わっ!」

感極まったお兄ちゃんは、思いっきり私に抱きついてきて、私の首筋に砂だらけの顔をくっつけてきた。それが痛くて、さらに私の鼻にお兄ちゃんの肩が押し付けられてきたため、私は思わず、

「くさい」

この後、ものすごく落ち込んだお兄ちゃんを復活させるのにとても時間がかかったのは言うまでもない。




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