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前編

全2話構成。

 はじめから思っていたわけじゃない


「お前はこんなこともできないのか!」


 普通に生きていた・・・それだけなのに・・・


「何度言ったらわかるんだこのクズが!」


 なぜ・・・こんなにも・・・


「お前はクビだ! 何処へでも消えろ!」








 ――死にたいと思ってしまうのだろう――










 気づくと僕は森にいた。

 自然と・・・自分の意思で向かったわけではない。

 ただ無心に・・・独りになれる場所を求めて車を走らせた。

 そうしてたどり着いた場所がこの森だ。

 てきとうに車を止めて歩く。



 歩く・・・



 歩く・・・



 歩く・・・




 ちょうどいい大きさの木を見つけた。

 僕の手にあるのはロープと、遺書。


「あの枝なら折れそうもないか・・・」


 独り呟いたその声は、小さく発したはずなのに、この森全体に響き渡る。

 ロープを枝に巻く音がやたらと大きく聞こえる。


 さぁ、死ぬ準備はできた。

 あとは首を吊るだけだ。





 大丈夫

 恐怖はない

 何も怖くない

 感じるのはこの世界から解放されるという喜びのみ

 思い残すこともない

 友達も居ない

 家族はもうすでに他界した

 僕が死んで悲しむ者は居ない


「死ぬ・・・死ぬんだ・・・!」


 さぁ、吊れ!


「僕は・・・ここで!」










 死ぬんだ!





















「・・・お独りで逝かれるつもりですか?」




 首を吊る寸前に何処からともなく声が聞こえた。

 その声に反応し、死ぬのをやめて声の方向に目を向ける。


 そこには、漆黒のタキシードに白い皮手袋をはめ、髑髏の仮面を被った長身の男が一人立っている。

 男だとわかったのは、声が低かったからだ。


「な、なんだお前は・・・!」


 訊くと髑髏の男は「おっと失礼」と言い、懐から一枚の紙を差し出す。

 どうやら名刺のようだ。


「私は闇会社”死援” 代表取締役社長、死神と申します。

 あなたの死をプロデュースしに参った次第です」


 し、死神?

 闇会社?

 それに死をプロデュースって・・・。

 いったい何を言っているんだこいつは。


「おや? 身に覚えがないという顔をしていますね。

 ほら、1週間ほど前に当ホームページに書き込みになられたでしょう・・・”死にたい” と」


 その言葉に僕はハッと思い出した。

 ネットを見ていて、偶然見つけたサイトに投稿した。

 あの時にはもう精神的にも限界がきており、疑いもせずに自分の気持ちを書いたのだ。

 まさか、本当にあるとは思いもしていなかったが・・・。


「確かにそれを書いたのは僕だ・・・」


 僕の言葉を聴いた髑髏の男――死神は嬉しそうに喋り出す。


「やはりそうでしたか!

 実はあなたが当会社の最初のお客様なのです。

 これを記念して、この度は我が社が最高の死をプロデュースさせていただきます!

 何かご要望はありますか?」


 最高の死・・・か。


 胡散臭く怪しさに満ちた言葉。

 だが僕にはもうどうでもいいことだ。


 要望か

 そうだな・・・。



「どうせなら――」




 そして僕は・・・人生最高の死を望んだ――

これ書いてる時に、「あれ? 俺もしかして病んでる?」と思ってしまった。

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