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サキュ俺㉔ きゃっとふぁいと!

「す、すまん! これは事故なんだ! うっかり男湯と女湯を間違えてしまって……!」


 絶賛混乱中の俺は、自身のみすぼらしいイチモツを隠すことすら忘れ、むしろそれを思い切り振り乱しながら退避を試みた。だが……


「うおっ!?」


 俺は濡れた床にあっさりと足を取られ、思い切りすっ転んでしまったのだ。俺は自身の身体がスローモーションのように、ゆっくりと地面に落下していくのを感じていた。


「アレンさん!?」


 そしてそんな俺に対し、自分だって恥ずかしいはずなのに、アイギスは手を伸ばし助けようとする。しかし……


「って、きゃああ!?」


 案の定と言うべきか、彼女も俺と同じように足を取られ、無残にもその艶やかな身体は宙を舞ったのだ。

 強い衝撃と共に脳みそが揺さぶられるような感覚に襲われる。この身体は痛みを感じることはないが、それでもこれだけの衝撃は身体にとってはなかなかに辛いものがある。


「……エラい目にあった」


 頭がふらふらすると同時に、背中にひんやりとした感覚が広がっていく。どうやら俺は浴場の床に背中をくっつけているようだ。だが感覚はそれだけではなく、俺の身体の正面には冷たさとは対照的な温かみのある柔らかいものが乗っかっているようだったのだ。俺は状況を確認する為にとりあえず目を開いた。


「「え?」」


 すると、なぜか俺はアイギスと再び目があったのだ。そして俺の胸の辺りに柔らかい膨らみが完全に密着しているのが目に入ったのである。


「こ、これは、まさか……」


 そう、もはや言わなくても分かるだろう。俺にのしかかっているのはアイギスで、そして柔らかい膨らみはアイギスのおっぱいだったのだ! そして、なぜかこのタイミングで、一番この状況を見られたくないあの少女が姿を見せたのである。


「五月蝿いわね。ちょっと、あんた風呂で1人で何を騒いで……………………って、はあ!?」


 果たしてこんな間の悪いことがあるだろうか。俺たちの声を聞きつけやって来たのは、他でもない俺の妹、シエル・ダイその人だったのだ。シエルはタオルなどで身体を覆うことはせず、スレンダーで相変わらずスタイルがよい身体と、3年前と同じくつつましやかなその胸を露にしたまま、俺たちを見つめ立ち尽くしていたのである。


 シエルは折り重なっている俺たちを見て明らかに怒りを滲ませている。そりゃ、兄貴のこんな様子を見せられたら怒りたくなる気持ちもわかる。

 シエルは相変わらず身体を隠すことなくこう叫んだ。


「あんた何やってんのよ!? 早く兄さんから離れなさい!」

「ちょ、ちょっと待て! シエル、これは誤解だ! 別に俺がアイギスに何かされたとかそういうことはないわけであって……!」

「うるさーい! やっぱり兄さんはそいつのテンプテーションにかかっていたんだわ! そのせいで正常な思考力を失っているのよ!」


 いやいや、正常な思考力を失っているのはお前だ! と俺は言いたかったが、それを言ったところで状況が悪化するばかりで、何一ついい結果を招くことはないだろう。

 すると、キレるシエルはあろうことか全裸のまま剣を魔術で形作り、アイギスに向かってこう叫んだのだ。


「この淫乱サキュバスが! やっぱりそうやって兄さんを誘惑するつもりだったのね!? これだから人間以外は信用ならないのよ!」


 シエルはしこたま暴言を吐くと、剣を構えたまま走り出す。だが、今の言葉にはさすがのアイギスも黙ってはいなかった。


「人間とかそういうのは関係なくないですか!?」


 アイギスはすぐさま立ち上がると、シエルに対しそう怒鳴り返したのだ。


 この状況は明らかにまずい。アイギスもこの数日の間にシエルに対するストレスを溜め込んでいた。そこに更にサキュバスへの差別発言とくれば、アイギスがキレるのも仕方がないと言えば仕方ない訳だが、だからといってそれを黙って見ている訳にもいかない。俺はことがこれ以上大きくならない内に事態の沈静化を図るべく、アイギスに遅れて浴場の床から立ち上がった。


「おい二人ともやめろ! こんなところでそんな騒ぎは……」

「兄さんは黙って!」「アレンさんは黙っていてください!」

「えー……」


 なぜか二人に同時に怒られる俺。シエルはともかく、なんでアイギスにまで怒られないといけないのか。いやまあ、思い切り裸見ちゃったし、身体にも触っちゃったから怒られても仕方なくはあるんだけどさ……。


「もうあなたには容赦しません!」


 普段は積極的に攻撃は行わないアイギスまでもがロッドを取り出し、攻撃態勢に入る。


「上等よ! かかってきなさいよ!」


 一方シエルも完全にその気になっている。俺の制止は何の効果も発揮せず、二人は風呂場で裸のままバトルを始めてしまったのである。


「あんたなんか、あたしの魔術で燃え尽きちゃえばいいのよ!」


 さっそくシエルが得意技の火球攻撃を仕掛けようとする。いや待て、あんなのここでやったら大変なことになるんだけど!?


「待て! お前ここがどこだかわかって……」

「食らえええええ!」


 案の定無視される俺。そしてシエルは、サイズこそ小さめながら、本当に火球を数個アイギスに向かって放ったのだ!


聖なる盾ホーリーシールド!」


 するとそれに対しアイギスはロッドを掲げ、身体の前に光のシールドを創り出す。それは補助技が苦手な俺でも知っている、相手の属性技を倍にして弾き返すという強力な防御魔術であった。


 火球がシールドに命中すると、それらはなんとシールドに吸収されてしまったのだ。

 それを見てアイギスがニヤリと笑う。


「自分の攻撃でやられてください!」


 アイギスがそう言うと、今度はシエルが放ったはずの火球がシールドから照射される。そのスピードは、シエルの放ったものの倍はあるように思われた。


「きゃあああ!?」


 自分の攻撃など当然食らったことはないのか、シエルは火球の雨に慌てふためく。だがそれでも彼女はそれらを躱したり、剣で弾いたりしてしのいだ。


 直線的なシエルに対し、アイギスはやはり頭を使っている。いつもなら炎で押し切るシエルも、鉄壁の守りを誇るアイギスには苦戦しているようだ。


「くー! ちょこざいな!」


 攻撃が通らないことに苛立つシエルは剣を構え、直接切り込みにくる。もはや裸であることへの羞恥心がまったくなさそうなあたり、近くに俺がいることすら忘れているのかもしれない。


 アイギスが慣れないながらも攻撃用の魔術弾で迫りくるシエルを狙い打つ。だが俄仕込みの攻撃など彼女には通らない。シエルはすぐさまアイギスへの接近を果たすと、剣で思い切りアイギスに切りかかった。


「食らえ!」

「これぐらい防げます!」


 だがアイギスも負けていない。シエルの剣戟を彼女はロッドで受け止めたのだった。

続きます!

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