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セックスorレイプ 4


   みなと


 少し早いけど、とっても素敵なクリスマスプレゼントを貰ったような気分に。

 それも、これまでの人生で一番素晴らしいものを。

 ああでも、結城くんの紙芝居の完成までには時間がかかるかもしれない。クリスマスプレゼントというよりも時期的にはお年玉になるのかもしれない、その先の私の誕生日プレゼント、あるいはバレンタインのプレゼントになる可能性も。

 そんなことを考えながらもすごく楽しみになってくる。どれだけ時間が経とうが絶対に観るつもりだし、そう約束したから。

 この形はないけど、最高の贈り物をいつまでも心の中で愛でていたい気分になる。

 けど、どうしよう。

 結城くんのする紙芝居で楽しくなるつもりだったのに、観る前にすでに楽しくなっちゃった。



   こう


 落ち着かないままで、ちょっとだけ藤堂さんの傍を離れる。

 報告しないと。

 ヤスコに。

 あの紙芝居を書きなおして、藤堂さんに観てもらう、そんな決意を。


「決めた」

「決めたって二時の最初の紙芝居? ああ、あの子が来てるもんね。それじゃまた一番手は航に任せようかな。ああ、それよりも全部アンタが上演したほうがいいかもね」

 俺の後ろにいる藤堂さんの姿を見ながらヤスコが言う。

 けど、それは勘違いだ。俺が決めたのはあの紙芝居でいくこと。

 それにいくら藤堂さんが観てくれるといっても全部一人でするのはゴメン被る。というか、サボろうとせずにお前もしろよ。という、突っ込みの一つも入れたいところだけど、それどころじゃない。今はそんなおふざけをしている場合じゃない。

「違う。そうじゃない、……そうじゃなくて」

 言うべきことは決まっているはずなのに、なかなか言葉が出てこない。

「だったら何よ? 前も言ったけどちゃんと主語を言いなさい」

「だから、紙芝居」

「紙芝居は今からするんでしょ。違わないじゃない」

「そうじゃなくて、えっと、あれに決めた。……あの紙芝居を創ることに決めたから」

 ようやく言えた。

「……いいの、あの作品で?」

 そう言いながらまたヤスコは後ろの藤堂さんをチラリと見る。

「うん」

「本当にいいの?」

 念を押すように聞いてくる。再度質問される。

「うん」

「もしかしたら、あの子のことを傷付けるようなことになるかもしれないのに。こんな場所で言うのもなんだけど……レイプに、傷付けてしまうことになるかもしれないのよ」

 後半、レイプという言葉は声を潜めて。それからいつもよりも少し低い真剣な声で。

 再度ヤスコが忠告をする、これは、けして俺を困らせるための質問ではない。俺のことを案じているからこそ出ているものだ。そのことはちゃんと理解している。

 この従姉様は普段は鬱陶しいとも思える存在だが、こんな時は優しい従姉になる。

「判ってる。けど、それでも俺の創った紙芝居が観たいって言ってくれた」

「そうか」

 そう言いながらまたヤスコは藤堂さんへと視線を送る。

「それじゃアレで創るか。せっかく創るんだったらアンタの目的通りに彼女が元気になれるような紙芝居にしよう」

「うん」

 ヤスコの言葉に俺は力強く肯く。

「それじゃ、今から作戦会議は無理だけど。今夜はとことん話し合おう」

 この後まだ上演を残しているのに、気分は創作について向かっていた。


 全ての上演が終わってから二人で夜遅くまで会議を

 どうすればもっと面白くなるのか。どんな絵にすればいいのか。どう紙芝居を上演すれば藤堂さんに確実に届き楽しませることができるのか。ちゃんと目的通りにセックスをして彼女の中に何かを受胎させられるのか。

 後から振り返ればけっこうな時間が経過していた。でも、話し合っている間はすごく短く感じた。そしてなにより楽しかった。


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