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19歳ニート、山形で農業はじめました!  作者: 羽火
第一章 農家の日常は大体こんな感じ
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前日談   とある農業高校生の作文


 僕は、農業が好きです。


 畑仕事が好きです。畑で採れた野菜も、米も果物も花も好きです。

 畑の周りで見られる動植物も好きです。四季折々の田んぼや畑の風景も好きです。


 春に咲く桃の花、夏の水田で育つ稲の苗、秋に波打つ稲穂の海、冬の田んぼで羽を休めている白鳥の群れが特にお気に入りの景色です。

 農業をしている人たちも好きです。僕たちの育てた農作物を喜んでくれる人たちの顔も好きです。

 つまり、僕は『農業』が包みこんでいる全てが大好きで、これから先もずっと農業に関わって生きていきたいと思っています。


 しかし、この田尾農林で学んでいく内に、農業が抱える数多くの問題点を知りました。

 僕の住んでいる地域でも、良く通る道に耕作放棄地と思われる荒れ果てた土地があります。

 このまま農業従事者の高齢化が進んでいけば、どれだけの田畑が手入れもされずに放置されていくのだろうと想像するとぞっとします。

 また、この間販売実習で訪ねたお宅のお母さんが


「うちは米農家なんだけど、娘が絶対継ぎたくないって言うの。どうしたらいいと思う?」


 と聞いてきて、「さあ、どうしたらいいんでしょうかね」と一緒に困ってしまいました。


 まともな神経をしている若者なら、田舎で農家を継ぐよりも都会に出て企業に就職し、安定した収入を得たいと思うでしょう。

 農家の収入を増やすためにはどうすればいいのか。日本の農業がもつ魅力を若い世代に広め、少しでも関心を持ってもらうには何をすべきなのか。

 今の僕にはまだ見当もつきませんが、新潟を愛する県民の一人として、新潟の農産物の良さなら伝えることが出来そうです。

 

 かきのもと、大口れんこん、八色すいか、黒崎茶豆、弥彦むすめ、ル・レクチエ、越後姫、やわ肌ねぎ、おけさ柿、そしてコシヒカリ。

 もし僕が将来家庭を持つようになったら、子どもに食べさせてあげたいと思う物ばかりです。

 

 これからもこの学校で一所懸命に勉強して、子どもの頃から間近で見てきた、越後平野に広がる綺麗な水田をいつまでも守っていけたらいいと強く感じています。


  新潟県立田尾農林高等学校 二年二組 草花コース 天見とうま




「農業を多面的にとらえた視点が素晴らしい! 皆さんも天見くんを見習いましょう!」


 高二の夏休み。生徒の一人が作文セミナーで書き上げた作文は、感動屋の教師に過剰なほど褒めちぎられ、コピーされて二年生全員に配られた。


 書いた本人は「こういう素敵っぽい文章でも書いとけば教師に気に入られるだろう」と、肩の力を抜いて適当な言葉を書きつらねただけなのだが。


 結局彼は「いい子ぶってうぜえ」「意識高いアピールきもい」と二年生全体から反感を買い、じわじわとクラスからのけ者にされ、とうとう学校に来なくなった。その後、彼がどうしているのか知る者はいない。

 


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