第一章;大陸の堅塁1
序章からかなり間が開いてしまいました。
幻想大陸鉄騎録
第一章 雲の道行き
夏とはいえ、まだ清々しい風が気前よく吹いている初夏、皇国領内では珍しいアスファルトで舗装された長い道路を一台のバスが走っていた。
しばらく進むうちに、変化の無かった景色の先に大きな灰色の壁に囲まれた建物が見え始め、やがてバスは正門から500メートルほど離れた場所に置かれた【玉燕基地前】と記されたバス停に止まり、すぐに土埃と軋むような音を立てて発車していった。
バスを降りたのは一人の青年だった。
まだ少年の面影の残る人の良さそうな光を焦茶色の眼に宿した青年、石上和真は今日から自分が配属される白嶺皇国水軍玉燕守備隊の基地を囲む高い壁を見上げた。
異動の知らせが来たのはつい先週のことだった。
皇国沿岸警備を任せられた防人の旅帥としていつもの様に近海や沿岸部に出没する海賊を撃退し、北西部の国府塩濱府に帰還した和真は、塩濱の国司の長官、赤城潮濱守忠典からの突然の呼び出しを受けた。
果たして自分は何か不手際をやらかしただろうかと首を傾げながら、行ってみれば近年最大の内乱、香明の役を生き延びた白髭の老将軍はまるで使い走りを頼むように、
「ちょっと玉燕まで行ってきてチョ。」 などとのたまって下さったのである。
ここで和真の所属する国家、白嶺皇国の地理について説明しておく。
蓬州大陸極東の島国である白嶺皇国は皇土と呼ぶ大島とその周辺の島々、及びその領海の他に、僅かではあるが大陸にも領土を持つ。
そのほとんどが現在の同盟国である大陸東部の貴族制国家、琥邑帝国と西の強国、プロシャの戦争において琥邑と共同戦線を張る条件として皇国側に割譲された領土である。
プロシャを初めとする西方諸国と琥邑を初めとする東方諸国は、大規模な衝突こそ無いものの、絶えず小競り合いを繰り返している。
皇国も例に漏れず、時折発生する破壊工作に対処するために、大陸領の入り口たる港湾都市玉燕に守備隊が置かれたのである。 そしてそれこそが、今回和真が配属された皇国水軍玉燕方面守備隊なのである。
更新が遅れてしまい、読者の皆様(いるのかな?(汗))には大変迷惑をかけてしまい申し訳ありませんでした。現在蝸牛は定期考査を目前に控え、なかなか携帯にさわる機会がありません。しばらくはこんなペースですが、時間を見つけて少しずつ更新していくので気長に待っていて下さると幸いです。