強さの代償
違う世界に行っても、どこか別の場所に行っても、人間は何も変わらない。いつも誰かの何かの上に立ってないと気が済まない。
どこかに綺麗な人間は居ないのか?人間は綺麗にはなれないのか?そんなぼんやりとしてうまく表現できないようなことを考えながらも俺はモンスターを倒しては吸収倒しては吸収を繰り返して居いた。
村であった少年はとても綺麗な人間だと思う。だが、あの少年もいつかは…。
「ん?なんだこれ?視界が白く…」
そこで俺はある変化に気づく。ホワイトタイガーと言う白い毛並みのモンスターを十数体吸収した時だった。その異変に気付いたのは。
「髪が…白くなってる⁉︎」
【吸収】による副作用的なものは今まで何も起きなかった為に油断して居た。吸収した物によって体が変化するなら、俺はいつかモンスターに…。
これはシーク王国に戻ったら調べないといけないな。まぁ、もう十二分に強くはなったはずだ。訓練所の人間は誰1人として探しには来なかった。来られても復讐がしにくくなるだけだ、来なくて良かった。
そんな時だった。何かの大きな物が木に激突し鈍い音を立てた。
「グッ!まだ…やられる訳には…」
長い黒髪の少女が魔物の群れに囲まれて居た。俺は奴を知っている。ヒョウドウミユキ。同じクラスの人間だ。喋ったことも何かで関わったことも無い。あいつも他の奴と一緒だ助ける理由なんて…。
「まだ、私は。彼に…会わないと」
彼とは誰か?俺以外の何物かだろう。どっちにしたってあんなにフラフラなんだ。長くは持た無いだろう。
「彼に、イカルガ君に会って謝ら無いと…」
俺…だと⁉︎多分間違いない、イカルガなんて名前の奴俺以外にそうそういない。だが、あいつも俺を見捨てた…いやしかし⁉︎
考えがまとまる前に俺の体は動いていた。理由は2つヒョウドウに向かってモンスターが攻撃を仕掛けたから。もう1つはヒョウドウの言葉が気になったから。
とりあえずはそういう事にしておこう。そうじゃ無いと俺の頭がどうにかなりそうだった。
モンスターの数は6体。1人で相手をするには厳しい数だ。コボルトと呼ばれる二足歩行の犬っぽいモンスター1体とゴブリン2体。最後にホワイトタイガーが3体だ。
「おい、魔力は余ったるか?」
「え、えぇ。少しなら」
「ならモンスターどもの足を凍らせろ。後は俺がやる」
俺の指示でヒョウドウのスキル【氷の王】が発動する。そしてモンスターの足を凍らせ、身動きを取れなくする。その先に俺は【龍化】によって人外の脚力を使って素早くセツでモンスターの首を斬る。
ヒョウドウを助けて良かったのか。そのことを考えると頭が痛くなってる。助けた理由は1つだ、こいつの言葉を確かめる。それだけだ。