生存を信じて
3年D組視点です
シーク王国、その片隅にある訓練所。オルガ・バスターソードが教官を務め、現在は元3年D組の生徒達が勇者候補として訓練している。
訓練所の食堂で、生徒達は食事をとっていた。贅沢な食事では無いが、バランスのとれた健康的なメニューだ。皆が席に着きご飯食べ始めようとすると1人の少女が食堂がら出ていく。
「ヒョウドウさん、良かったら一緒に食べない?」
「ごめんなさい、部屋で食べるわ」
ヒョウドウミユキ。【氷の王】と言うスキルを持っている。氷を出現させ、操る。使い方次第で様々なことに利用できる便利なスキルだ。
「そう言わずに一緒に食べようよ」
「お願いだから、話しかけないでもらえないかしら」
「どうして、そんな事を言うんだい」
「どうして…そんな事も分からないの。人が死んだのよ、それも訓練所の人間が!」
ヒョウドウの発言で全員に重い空気がのしかかる。イカルガシズクが馬車から落下したあの事件から2週間が経過して居た。
「なのに…あなた達は何も無かったかのように。自分が死ななくて良かったと思っている人もいるはずよ。私はそんなに心無い人間と一緒に居たくはないわ」
「お前だって、イカルガを、助けようとしなかったじゃねぇか!」
コンゴウがヒョウドウに向かって怒鳴る。しかし、その発言は食堂いる全員に対しても言える事だった。
「えぇ、だから今もオルガさんにも協力してもらって生きているなら救助に、死んで居たらせめて遺品だけでもと…」
ある者はイカルガの件から目を背け。ある者は自分じゃ無くて良かったと思い。ある者はイカルガの分も生きようと思い。
しかし、ヒョウドウ以外は誰1人としてイカルガ自身、あるいはイカルガの遺品を探そうとする人間はいなかった。
「私は、あなた達のような人間にはなりたくは無いわ」
そんな時だった。訓練所のドアを乱暴に開け1人の男が食堂に入ってきた。
「イカルガらしき少年を見たって情報が入ったぞ!」
「イカルガ君がみつかったんですか!」
「あぁ。シーク王国から一番近い山、シネイクト山の麓にある村だ」
それを聞くとヒョウドウは自身の部屋へ向かった。部屋についたヒョウドウは自身の武器である刀を腰につるし、訓練所を飛び出した。
彼に会って謝らないといけない。助けに行かなかった事と、見捨ててしまった事を。