ひとなんてものはね
ひとはいさ こころもしらず
ふるさとは はなぞむかしの かににおひける
土佐日記で有名な紀貫之の和歌です。
私なりの現代語訳ではこうなります。
あなたの心なんてどうかは知らない。
だけど故郷には今も昔と同じ梅の匂いが香っているよ。
今日、職場の前の梅が咲いているのを見かけて、こんな歌を思い出しました。
この歌を知った高校生のときにはなんとも思わなかったのですが、今、昔というものを少しは想像できるだけの年齢になってみると、少し感慨深いものがありました。
紀貫之は数十年の昔に思いを馳せてこの歌を詠んだのでしょう。
だけどこの歌が定家に見いだされ、今の時代にも百人一首として多くの人が知ることになったのです。そうしてみると、紀貫之の歌う昔というのが、もっと壮大な話に思えて、今さらながらに感銘を受けてみたりして……
きっと紀貫之が感じた梅の香りと、私たちが感じる梅の香り、そんなに違いはないのでしょうね。
人のありようは変わったとしても、花の香りは昔から変わらない。なんだかとっても雅な気がします。
ひとはいさ こころもしらず
ふるさとは はなぞむかしの かににおひける
ちなみにこの歌は、久しぶりに故郷に帰った紀貫之に、知り合いが「ずいぶんご無沙汰で」的な嫌みを言って、それに嫌みを返した歌らしいです。確か。
……つまりぜんぜん雅じゃないね笑