始まりの朝に
古風で現代っ子な相棒との出会いから今までの『無敵物語』
時には不協和音を奏でながらも並んで歩く
それはまるで行進曲のように────────
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台風が来るという予報が出ていた、或る夏の朝のこと。
親孝行し過ぎてなかなかお嫁に行けなかったルクリアは、母のヴァイオレットに思い切ってこう切り出してみた。
「お母さん…私ね、実は…その…どうしても逢いたい人が居るの…」
「駄目よ!?この間も鶏頭父さんに携帯を取り上げられて真っ二つにされたばかりじゃないの!?」
「お母さん、お願い!携帯貸してよ!自転車の鍵もお父さんに取られちゃったんだよ!自転車の鍵返してよ!私だって誰にも邪魔されずに普通の恋愛したいんだよ!!!」
「鶏頭さんは、ルクちゃんの為を思ってしたことなのよ!?何故分からないの!?」
「………お父さんもお母さんも私を手放したくないのね…分かった…」
私は一体いつ、あの人に出逢えるのだろうか…
まだ私達はメル友だ。
でも私としては真剣なメル友のつもりでいる。
この間、ようやく声を聴けた。
酔った勢いで、少しだけ電話してくれたのだった。
「はは…あはは…声、可愛いですね///……じゃ」
ガチャン。
はあ……
ようやくレッディル様から掛けてくれた電話…
ほんの数秒間か…
でもいいんだ。
いつかレッディル様が、デルフィニウムとトルコキキョウとカサブランカの花束を目印に、梅鉢屋の干菓子をお土産に、中間のあの蔵の街で、少し恥ずかしげに私を待っていてくれる日が来るから。
その時が来たら私は、今度こそ赤い薔薇と匂い水仙をあの人に渡そうと思う。
四つ葉のクローバーを栞代わりに詩集に挟み、今日も黄色いパンジーの花を見つめて過ごした。
私は、家族間ではアッサムニオイザクラという意味の【ルクリア】と呼ばれているが、本当は勿忘草の花なのだ。
“Please forget me not,Mr.Reddill...”
そっと英語で呟いてみた。