1/16
序章
「やっぱり、お前の瞳は緋色がいいわね」
初めて見たものは、眼前を覆いつくす少女の顔だった。
満足そうに微笑むその瞳は、愛しそうに『自分』の顔を見つめている。
それは、その小さな手と細い指で、『自分』を作り上げていく存在だった。
大きな黒い瞳と、とても長い黒い髪。小さな手と可愛らしい指を器用に動かせば、何かがどんどんと広がっていくのが分かる。
広がっていく外と、『自分』という内側。
ああ、これが『世界』なのだ。直感的に、そう思った。
ふと、声が聞こえた。
「……お前の名前は、『コクウ』よ」
可憐な、まるで鈴のような声。
まるで熱に浮かれるかのように、声は、『自分』へとそう語りかける。
「『紅空』――きっとお前には、何よりも広い空が似合うわ」