ヘイト
薄汚い和服を身に付け眼帯をした男は、目的地のクスト国を目指して海に出ていた。
「兄ちゃんよ。いや、おっさんかのぉ。ほほほほ。どうしてそんな遠くに行くんじゃい?」
船を漕ぐ老人が聞く。
「それは言えないんだが、昔の友人に会いにな。」
「その眼帯は怪我かい?」
「これも…言えねぇ。」
「いやぁ、すまんのぉ。あ、向こうの島が見えてきたのぉ。」
ー あそこに………
「師匠。本当に行くのか?」
暗い部屋の中声がする。
「あぁ、あまりワシの趣味ではないが、この戦争は酷すぎる。」
低い声で答える。
「おいヘイト!お前は全く…いつになったら師匠に敬語使えるんだ?」
高い声でしかる声。
「俺に尊敬する人などいない。だから敬語を使う必要はない。」
「お前は全く…。すいやせん師匠。」
「いやいや、いいんだよ。師匠って呼ぶって事はそれなりに尊敬してるんだろ?ワハハハ。」
「確かにそうっすね。ハハハッ。」
「うるさい。」
「おいヘイト。ちょっとこっちに来な。」
(ワシの継承者はお前しかいない。お前の先輩であるジャックも認めてくれるだろう。お前は天才だ、昔の俺にはなるなよ。その才能を世界や仲間のために使え。)
師匠はヘイトの耳元でもう言うと、外に出た。
激しくぶつかり合う戦場。
剣がぶつかり合う音。
剣で人を切る音。
銃声。死に行く人の叫び。
さまざまな音が聞こえてくる。
その音を掻き消すような大声。
「お前らぁぁ!いつまでこんな戦争をしてるんだ!やめないか!やめないならこのワシがこの場を破壊してやる!」
そう言うのは、2mは超えるであろう大男。黒い鎧を来て自分よりも大きな特徴的な斧を持っている。
「なんだアイツは。」
「1人で何ができるってんだ。」
「ああぁ…アイツは!?」
1人の兵士が怯えている。
「なんだ?どうした?」
「アイツは…破壊王だ!」
そう言い捨て逃げて行った。
「なんだって?破壊王!?そんなの歴史上の人物じゃ…でも教科書に載ってた絵と同じだぁ。逃げろー。」
片方の軍が引いて行く。
「へへへ。俺たちは教科書なんて知らねぇからな。誰だお前。」
兵士が笑いながら言った。
「ワシは破壊王だ。お前らいい度胸じゃねえか。」
[破壊王とは。100年ほど前世界の半分を消した男。この事件は第二次悪魔降臨と呼ばれた。その後姿を見るものはなかった。]
「師匠。そんな。」
ヘイトの顔が青ざめる。
「師匠ー!なぜあなたが!」
弟子のジャックが騒いでいる。
「なんでですか。」
ヘイトの目から涙が。
「お前。やっと敬語使いやがったな。」
その時、黒く深い闇のオーラがヘイトにまとわりついた。