バット
ヴィット国とヴァーラ国は、ついに同盟を結び共に世界を統べよう!
と考えているのはヴァーラ国だけだった。
ヴィット国は利用して自国にヴァーラ国を吸収するのが本音。
しかし、それに頭の悪いヴァーラ国の者は気づいているものはごく僅かだった。
一つの丸い机を囲み5人程の人が座っている。
小さな会議室のようだ。
「ヴィット国と同盟を結んではだめだ!あいつらは頭が良すぎる。我々ではあいつらに利用されて捨てられるだけだぞ!皆それでいいのか!」
と1人反対する者がいた。
「でもな、やっぱり今の状況はまずい。全ての国の武力が均衡している。それでは戦争は終わらず無駄な死者が出るだけなんだ。わかるだろ?バット。」
反対の声に答えた男は言った。
逆立った金髪の男はバット。バットが言った。
「わかった。皆の意見はそれでいいんだな。俺は…俺は!…俺はもうヴァーラ国民ではない。皆さらばだ。」
少し泣きながらも強い口調で、言葉を詰まらせながら言った。
「おい!バット待ちなさい!」
慌ててバットを止める者。
「うるせぇ!俺はもうお前らとは違う!止めんな!」
制止の手を振りほどくバット。
そして会議室を出た。その決断をもう止める者はいなかった。
辺りは砂漠。何もない。バットは食料を探していた。
「はぁ、出て来たのがいいが。腹減った。」
バットは悔やんでいた。
ー 俺にもっと力があれば…そしたら国を出ることもなかった。強く強くなりたい。
「え〜ん、え〜ん。」
バットが考えている時、子供の泣き声が聞こえた。
「ん?子供か。」
岩の後ろに子供は居た。
「君、大丈夫か?」
とバットが問うと。
「おじちゃんだれ?」
と子供が。
「うーん、俺はなぁ。まぁ家出中だな。」
「おじちゃんも?僕もだよ。」
「君みたいに小さな子が家出なんてしちゃダメだろ?」
バットは笑顔で子供の頭を撫でる。
「お父さんも、お母さんも、お爺ちゃんも、お婆ちゃんも、お兄ちゃんも皆。死んじゃったんだ。」
ー この戦争のせいでこんな子供まで…守れないなんて。俺に力があれば…
その時、バットの体を強く優しい光が覆った。
「君は俺が守る。絶対に死なせない。」
「おじさんありがとう。僕の名前はイブルだよ。」