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ペンタハイラント〜5人の救世主〜  作者: 赤麦茶
5人の少年、少女
2/16

ティアリ


汚い和服を身につけ、和傘をさした男が砂浜を歩いていると、老婆が反対側から歩いてきた。

「お婆さんよ。港はどこだい。遠方にあるクスト国まで行きたいのだが。」

と男は老婆に尋ねる。

「おやおや。そんな遠くまで行くのかい?」

「あぁ、ちょっと野暮用でな。」

「そうかい。気をつけるんだよ。港は向こうにもう少し歩くとつく。」

指を指して男に教えた。

「助かった。ありがとう。では。」

と言うと、男は少し足早に港へと向かった。

そして、持っていた和傘を捨てると、胸から眼帯を取り出し右目につけた。




空は雲一つ見えない晴天。

そして、特徴的な色のレンガで出来た家が建ち並ぶ小さな街。

人口で言えば2000人程度だろう。

アギル国のはずれにある。

小さいが賑わっている街だった。

買い物をするたくさんの街の人々。

そんな空気を切り裂くような弓音が空からした。

グサっ

放たれた矢は人に刺さった。

突然の事に混乱し、騒ぎ、逃げ惑う人々。

それをだんだんと消していく弓音。

精確に矢は人々に刺さっていく。

一本の矢すら無駄にしない。


「ティアリ様!ティアリ様!!ティアリ様ー!!!」

慌てて兵士が名を呼ぶ。

「なんですか。うるさいですよ。」

兵士の声に答えたのは、美しい女性。

金髪に輝く髪に、美貌、華やかな洋服を着ているそれがティアリだ。

「すみません…」

土下座をして苦しい顔で謝る兵士。

「な、なんですかいきなり。」

少し驚くティアリ。

「くっ」

拳を握る。

「何があったら言ってみなさい!」

「くっ…我々兵士がいながらこの国を守れませんでした!」

叫ぶ兵士。

「それで、何があっ…」

ティアリの声をかき消し、兵士はこう言った。

「街の人口の半分以上が、何者かの手によって殺されてしまいました!」

泣き崩れる兵士。

「!?なんてこと…半分…以上が?何があったんですか!?」

驚き少し動揺しているティアリ。

泣き崩れた兵士ではない別の兵士が頼んだ。

「空から矢が降ってきたのです。私達では相手にならない相手です。ティアリ様の力を使って街の人々を守ってください!」

「わかりました。私が戦います。」


ティアリはこの街を統べる者。

ティアリの祖母もそうだった。

この街を愛し、どんな事からも守ってきた。

しかし、その街が今崩されそうなのだ。


「ティアリ様気をつけてください。いつどこから来るかわかりません。」

「私は1人で充分です。そこにいてください」

街の中心に現れたティアリを待っていたかのように、矢が放たれた。

ティアリはその方向に素早く反応し。

矢に向かって手を伸ばした。

そして手が光りその矢をはね返した。

これがティアリの能力の魔法である。

次の瞬間、数え切れない程の矢が放たれた。

全てティアリに向かってくる。

ーそんな!この量は私の魔法では対処できない

ティアリは死を覚悟した。


グサ、グサ、グサ、グサ、グサ


ぐはっ


その時。


さっきまで泣き崩れていた兵士が。

ティアリを守った。

驚くティアリ。

苦しみながら兵士はゆっくり口を開いた。

「ティアリ様が死んでしまっては、この街は終わってしまいます。この街の皆はティアリ様…」

途中で言い切れず死んでしまった。

「そんな、私は何もできない。誰も守れない。そんな弱い私をなぜ。」

ー守りたい。これ以上人を死なせない。

心の中で思った事が。形になった。

ティアリを柔らかい光が包む。

その時また矢が放たれた。

しかし、それはティアリの光に触れると光る砂になって消えた。

そして、ティアリの街と街の人々を思う気持ち、強い愛情が、大きな光の盾となった。

そしてその盾がさらに巨大化し、この街全体を包み込むように覆った。

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