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ジャポの国物語  作者: 作・Sebastian SALAMI Rodriguez 訳・丹羽埜 緑
2/2

その2 語り部爺の話

また、来たんかい。

よっぽど暇なんじゃの。

まあ、今の世の中、目的を持って過ごしているやつなんておらんじゃろうがな。


この間の話の続きかい?

なんじゃっかの?

おうおう、ジャポの国の話か。

こんな話が面白いかの。


いや、よかろう、話してやろう。


ジャポでは、人手が足りんようになって、たくさんの会社が潰れてしまった。

そうじゃ、働き手がおらんから、物を作れんし、売る者もおらん。

だから、会社は潰れてしまった。


え、会社って何かって?

そうか、会社を知らんか。

まあ、無理もない。

会社ってのは、お前さんが何か人を幸せにするものを作れるとするじゃろ。

だが、お前さんが1日に作れるのは、3つが限度じゃ。

で、誰かに頼んで一緒にやれば、1日に6つは作れる。

一人で作っていては、1日に3人しか幸せにできなかったのに、二人でやれば倍じゃ。

多くの人が喜ぶの。

すると遠くからも、その幸せになれるものが欲しいと言ってくる。

と、その話を聞くので、お前さんは1日に2つしか作れんようになってしもた。

で、どうするね?

そうじゃ、また一人仲間を増やして、今度は話を聞く係にすれば、また、お前さんは物づくりに集中できる。


と、言う具合にお前さんの作るもんをみんなが欲しがれば欲しがるほど、たくさんの仲間に力を貸して貰わんと期待に応えられなくなる。

そのうち、物を作るのに馴れてきたもんはお前さんより上手に1日5つも作れたり、馴れんもんは2つしか作れんなどとなり、仲間に渡すお礼に差を付けたりせねばならなくなったりするんじゃ。すると、お前さんは仲間の様子を見たり、作ったもんを届けたり、果ては新しい幸せにするもんを考えたりする事が、やらなければならないことになっていく。

もともと、最初に考えた幸せにするもんを、ただ、作っていたかっただけなのにのう。


まあ、そうやって仲間を増やして行くと、その集まりが運命共同体になって行く。

これが会社じゃ。

仲間に家族ができたりすれば、それも仲間みたいなもんじゃ。


でもの、仲間を増やして、いろいろと自分のやらなくてはならないことを仲間に頼んでいっても、どうしても、お前さんがやらねばならんことがある。

それはの、皆を幸せにできると思って作ったもんが、人を幸せにできなかった時に、どうするか。

届けると約束した日に、物が届かなかった時にどうするか。

そういったうまくいかなかった時にどうするかを考え、なんとかせねばならん。

言い出しっぺとして、その責任を取らねばならんのだよ。

気がつくと、みんなを幸せにするものを作ることではなく、仲間を守る、会社を守ることが、お前さんの目的になってしまうようなことも起きるのじゃ。


と、そのうちな、お前の考え出した、皆を幸せに出来ると思っていたものが、実際には皆を幸せに出来ない事がわかったりしての。

しかし、運命共同体は守らなきゃならん。

だから、お前は嘘をついて、幸せに出来るものは本物ですよ、と言い続けるしかなかったりするんじゃ。


どうじゃ、会社ってもんも、なかなかどうしてめんどくさいもんじゃろ。


でじゃ、ジャポの国では、それなりに皆が幸せに暮らしておったんじゃが、とにかく新しい幸せにするもんを創りださなにゃならんと言う雰囲気作りに力が入れられての。

その為に、まだ、役に立つものは壊され、役に立たないもんを役に立つもんじゃと謀っていくことを進めたんじゃよ。


と、なれば本当に役立つもんはなくなって、どうでもいい役に立たないもんだらけの世の中になるじゃろ。


さっき会社の話をしたが、紛い物のもんを売る会社でも、仲間がいなければ、会社は成り立たんし、周りからも信用されん。

ただでさえ、国の人数は減って働き手はおらんのだから、ちゃんと人を幸せにするもんを提供することができなくなって行ったんじゃ。


ん。

なんで国の人数が減って行ったんじゃかと?


それは、また今度のう。

年寄りはもう寝る時間じゃ。

いやいや、まぶたがくっついて眠くてたまらん。

また、今度じゃ。

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