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プロローグ

何を意味するのかは解らないが、俺は最近夢を見ていない。

つい三週間ほど前までは、四日に一回は見ていたというのに。


(…今夜も見れそうにねえな)


所々綿が飛び出た薄汚いソファから、不機嫌そうにのそりと上体を起こす。

一メートルほど離れた所にあるテーブルの上、レーションの空き袋やらマグカップやらが乱雑に置かれた中に、ディスプレイをライムグリーンに光らせながら振動している通信機が埋もれていた。

手を伸ばしても届かない事に苛立ちながら、膝立ちでにじり寄って通信機を取り上げる。

通話ボタンを押した途端、僅かにノイズの交じった大声が鼓膜を揺らす。


「出撃命令だ!十分後にフル装備の状態で集合!」


「出撃」という言葉を聞いた瞬間、今までの眠気は吹き飛び、身体が反射的に戦闘準備を始める。

洗面台で乱暴に顔を洗い、タンクトップの上に上下の戦闘服を着込む。

胸ポケットの四角い膨らみを上から触って確認し、部屋を飛び出す。これで「フル装備の状態で」の指令は九割方履行出来た。

あとやる事は一つだけ。


明かりも無く暗い半地下の通路を、出来る限り静かに走って行く。三十秒ほどで目的地に着く。

そこは廃墟となった体育館だった。天井には幾つかの穴が開き、薄い青の月光がスポットライトの様に地面を照らしていた。

埃と瓦礫に埋め尽くされ、使われていた頃の面影を既に失った床を、器用に瓦礫の間を縫って走る。


(後…六分ぐらいしか無いな。急がねえと)

体育館の隅、カーキ色のビニールシートで覆われた「装備」の前で俺は立ち止まった。

勢いを付けて一気にビニールシートを取り払う。舞わない埃がこの装備の使用頻度を物語っていた。

シートの下にあったのは、金属の塊。

高さ約三・七メートルの、人型をした「装備」。

名称を「鉄の着ぐるみ(リビング・ドール)」と言う。



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