一張羅
「五円ってあるでしょ?あれに東京の人はリボンをつけとんの」
「へぇ・・・そりゃまたけったいな」
近頃増えた舞妓たちは、新しく東京から来たと言う、静香の話に首ったけだった。
静香は詩吟を得意とするのだが、最初からお偉いさんたちに認められて、ついに一張羅の着物を着て舞っている。
「その紅はどこで買ったん?」
舞妓たちに聞かれて、静香は少し得意そうに胸を膨らませた。
「六本木ってありまっしゃろ」
その言葉に舞妓たちはうなづく。
「パトロンが連れて行ってくれ・・・」
そこで、静香はゴホンと咳ばらいをした。
「パトロンが連れて行って・・・くれ・・・た」
「へぇ・・・」
舞妓たちが素直そうに感心した素振りをしたので、静香はホッとしたが、もちろんそれは顔には出さない。
「お前たち!」
そこでおかみが手を叩いた。
「五条大橋でどざえもんが出たってよ。ちったーちったー」
おかみがもう一度手を叩くと、舞妓たちは急いで部屋の中に戻って行く。
花が買い物から戻って来たところで、静香にかちあった。
「どこへ行く?」
花が聞くと、「何やら五条大橋で・・・」と静香がこそこそと出て行こうとした。
「行かない方がいいよ」
花は、玄関に買い物してきたものを置いた。
「いや、何、今日は店はやらんのじゃろ?」
静香は一張羅の着物のまま草履を足に合わせている。
「行くと、憑りつかれる」
言ってから花は大声を出した。
「いかん!アイスがとけるわ!蛍ーー?!」
「何ごとじゃ?」
蛍がすぐ目の前の部屋から顔を出した。
「アイス買うてきた!」
「食うべし!急ぐべし!静香はどないしたん?」
花は、草履をぬいで部屋に入った。
「じゃじゃ馬やじ馬、静香に小判じゃ」
蛍はそのままアイスの入った袋を持って行った。
そのあとを静香はすごすごとついて行った。
「おこぼれは次回にまわしべし」




