表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/6

物語の過去~ハジマリ 

己の頭上を掠めるような気がして、少年は首を竦めた。

少年の周囲から大気が震えるような歓声が沸き上がる。

五機の戦闘機は寸分違わず、同じ間隔を保ちながら空を滑っている。

轟音と共に天に向かって突き上げる姿を、今度は身を乗り出して少年は見つめた。

ひらりと機体が翻る。黒っぽく見えていた戦闘機の、この銀色に輝く瞬間が少年は大好きだ。

「シン。引っ張るな、頭が痛い」

渋い声音で抗議するのは、少年を肩車した男だった。その灰色の髪を興奮した少年が引っ張ったらしい。

「ごめんなさい、おじちゃん」

少年は素直に謝った。でも、興奮した少年は再び男の髪を引っ張る。今度は、男は抗議をしなかった。無理もないと思ったのだろう。少年の父親が、あの戦闘機に乗っているのだ。

再び、歓声。

天頂に達した五機が、急降下を始めた。




オオオオオオ




それは怒号と称すべき、震えだった。

五機の戦闘機は地面すれすれで機首を起こし、観客達の間近を低空飛行してみせる。爆音。

再び上空へ一気に駆け上り、高く上がっていく。

大きく空中で旋回し、隊形を変えていく。滑空しながら徐々に間隔を開けていく五つの機影。そし、五色に色分けされた飛行機雲が、空に孔雀の羽を作った。

と、不意に一機が妙な動きをした。

左から二番目の機体だ。

折れる角度が必要以上に大きい。

そして、誰もが息を呑む惨状が起きた。

吸い寄せられるようにその戦闘機は、一番左の戦闘機に寄り添ったのだ。


接触。


ちかっと光が散った。


ボンとかゴンとか、そんな大きな音がした時と、観客の悲鳴が折り重なる。

二機の戦闘機は、二匹の蝶のように、空をひらりと横に舞い飛んでいく。

白い煙が黒く変わった。

赤とオレンジの炎が吹き上がる。

そして――地鳴りのような音がして、観客達の頬を熱い風が撫でていった。





そして、月日が流れた――




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ