3.始めよう
僕たちは兵士に連れられ玉座へとやってきた。
だが、そこで僕たちが見た物は
「うっわぁ、、、流石の私も惨すぎてびびるぅ、、、」
なんとも惨い殺害現場。
壁も床も一面にべっとりと血がついていた。
本来あったはずのレッドカーペットも血と同化して見分けがつかなくなっていた。
そしてこの血の持ち主は
「王様もなんと酷い姿になられて。これでは蘇生魔法も無駄でしょうねぇ」
そう、王である。
僕が奴を同行するよりも先に、何者かによって殺害されてしまったようだ。
「っひ!?、、、こ、ここここれ、、、王の、、、」
キララが指差す先には王の生首。
まだ殺されて間もないのかあまり顔色は悪くない。
しかし瞳孔ががっちりと開いているのできっと死亡しているのだろう。
「何事だ!!おい!そこのお前!何があった!」
兵が部屋の端で蹲っているメイドに乱暴に尋ねる。
「ま、まもの、まもの、があ、あああ
王の、、首を、、、突然、現れて、、、ひぃぃ」
彼女は身体に傷一つないもののの、かなり錯乱状態にあるようだ。
無理もない、突然こんな現場を見せつけられたのだ。
「お前は!勇者一行ではないか!」
玉座の裏に隠れていたであろう大臣が現れた。
どっしりと樽のように太った体、脂ぎっている皮脂。
王程ではないものの彼にはあまり良い印象がない。
「王を殺したのは恐らく、ヤツじゃら特例人蝙蝠じゃぁあ、、、」
大臣は青ざめた顔でそう僕らに言った。
特例人蝙蝠、あいつは四天王程ではないが僕らもかなり苦戦した相手だ。
自らを特例人蝙蝠と名乗り、人々を絶望させその顔の皮を剥ぎ取る、、、恐ろしく悪趣味な魔物だ。
きっと大臣の顔の皮も剥ごうとしたのだろうが
僕らが現れる前に逃げたから不可能だったのだろう。
「王からの伝言じゃあ、魔王をうちとれ、以上じゃ」
大臣は早口で捲し立てるように話す。
「ちょっと!まさか一ゴールドも出さずに旅にだすつもり!?」
キユリは彼女の眉間に皺を寄せている。
「見てわかるだろう!!王も殺され城も襲撃された今そのような対応をしている場合ではない!!」
どうやら、大臣も兵士も今すぐに僕たちを旅に出したいようだ。
「はぁ!!ちょっと待って!押さないで!そんな急かさないでよ!!」
僕らを連れてきたのとは別の兵士が僕たちを城の外へ連れて、いや連行ともいえるほど乱雑に扱い
僕たちはそのまま城外へと追い出されてしまった。
「そんなぁ、、、僕たちなんの支援も無しに魔王討伐するんですかぁ?それはちょっと無理があるって物ですよ!!」
キユリもソウもご立腹のようだ。
ちなみに前回は支援金を貰えたが、それもたったの100ゴールド。
薬草をいくつか買っておしまいである。
「、、、これからどうするの」
キララだけは落ち着いた様子で僕に問いかけてくる。
「そうだね。流石に魔王へ直行は厳しいから、、、」
前回と同じルートで。
早速例外が発生してしまった今、無理に未来が変わるような事はしないほうがいい。
「ここから一番近くて、通称"虚像の街"と呼ばれているライオミスへ向かおう。」
虚像の街、ライオミス。
嘘と現実が交差し、正直者も、嘘つきもみんなが得して損をする国。
「大ハプニングから始まったけど、、、私達の旅はこれからでしょ!んじゃあ行きますかー!!」
先程の凄惨な現場を見たとは思えないほどの明るさでキユリが意気揚々としている。
正直、みんな前回も王には興味がなかったしね。
それどころか殺意まで抱いていたし。
「行こうか。」
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魔王城は良い。
魔力がそこらに満ちていて、魔物なら誰しもが素晴らしいと思うに違いない。
「魔王様!!特例人蝙蝠ただいま参りました。」
私が向かっているのは勿論、この世の全てを支配しいずれ恐怖で埋め尽くすであろう方。
魔王様だ。
「おかえり蝙蝠。王は殺せた?」
魔王様はこちらへその優しい笑みを向けて問いかけなさった。
「勿論です!人間どもの居城、王都だというのにも関わらず警備が緩く、生まれたての魔子の手をひねるよりも容易でした。」
私は魔王様へ愛を、尊敬を畏怖の念を込め
報告をした。
「よく頑張ったね。」
魔王様のその笑み、その柔らかい声、それだけで私は、、、
「いえいえいえ滅相も御座いません!!!!!
あのような下賎の者、誰にだって殺す事が出来ましょう!!」
「そんな事ないよ。君だから出来たんだ。
そんな君に一つお願いがある。」
魔王様の命ならば何でも。
「勿論です魔王様!!して、その命とは。」
「勇者一行の、勇者以外を殺して。」
「勇者は殺さなくても良いのですか?」
前から思っていた。勇者が憎い。
奴は存在するだけで魔王様の気を引き、魔物を殺し
その上人助け?笑わせるな。
魔王様は長い沈黙の後仰られた。
「いいんだよ。
だって勇者は
________僕が殺すから。」




