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2.嬉しくないの?

「さて、さて!!勇者も来た事だし王都へ向かいますか〜!!」

そう意気揚々としているのはキユリ。

彼女の明るさは今も最後もずっと健在しているようである。


「!!っ、、わ?!」

唐突にキララの驚いた声が聴こえる。

この様子を見ると、恐らく茂みから何かが出てきたのだろう。

「スライム、、きた!」

目の前にいるのは人間の頭サイズのミニスライム。

「かわいい〜スライムってペットに出来まし_____」

ザシュ、という斬撃音は僕の手元から発せられた音である。

ソウは薄めていた目を見開き

「、、、」

「ああっ!!人が話してる最中にぃ!!」

とショックを受けているようだ。

というか、、、

今気づいたが、僕の力は確実に弱くなっている。

なぜ僕は先ほど冷静だったのか。

仲間と再会した時のあれは恐らく_______


僕が戻ったのではなく、記憶のみが過去に送られているから?


現に、本来はスライムなど近づくだけで僕の魔力により爆散するはずなのに、のこのこと近づいてきた。

それに、あんなに再会を望んでいた仲間達に出会えたのに感情の起伏を感じない。

勿論、再会の瞬間はあらゆる気持ちが吹き出てきたが今は何も感じない。


僧侶の言っていた、"無口な上に人とも関わりを持つのが好きでない"頃の僕に精神も身体も戻っているのだろう。


「スライム死んじゃった〜!私がやろうとしたのに、、、」

「てかさ!スライムなんか相手にしてないで早く王都に行かなきゃ!!」

王都、、、世界で最も大きな国の王であり、僕たちに旅させる事を命じた王がいる所だ。

そして前回僕らを裏切り、最後の最後でキララを殺し"魔王討伐の名誉"を奪い取ろうとした者でもある。

「そうだね。早く王に、、、挨拶をしなければ。」

本当なら、今すぐにでも奴の首をとってやりたい。

なんなら今殺してしまった方が民のためにも良いのではないか。

「勇者様顔むすっとしすぎですよ〜表情筋鍛えていきましょう!!」

仲間に気づかれるのは厄介だ。隠し通さなければ。

「さてさて!では王都へ向かうとしようではないかー!!!」


__________________


「おお〜どでかい門!!!流石王都、ってカンジ!」

「キユリは極東出身だったよね。王都に来るのは初めて?」

僕の発言にキユリはきょとんとした顔を向けて

「??勇者に出身地なんかいったけ?」

まずい、早速ボロが出そうになった。いやもう出てるか。

「極東ですか〜、僕は基本王都で暮らしてたので、、、見てみたいですねぇ〜」

「まぁ、今来ても何もないし楽しくない気もするけどね。」

そう話す彼女の顔はどこか寂しげだ。

僕は彼女の事も、他の仲間の事もあまり知らない。

彼女の故郷が極東で、そこで何があったのかもわからない。

歩きながらそんな雑談を交わす僕たち。


そこへ現れたのは、この国の兵士。

「名を名乗れ!」

門の検問と思われる。

「勇者一行です!◼︎◼︎◼︎◼︎とー!あ!私はキユリでこっちはソウ、、、」

勇者一行と名乗るだけで兵士の顔色が変わる。

「失礼しました!!是非こちらの馬車へお乗り下さい。王が待っております。」

憎き王との対面だ。僕は殺意を抑え切れるだろうか。

しかし、今の僕は勇者といっても前回に比べ相当弱くなっている。

大人しく対面するとしよう。


仕方がなく、僕はこの殺意を抑える事にした。


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