1.勇者と僕
______きて、、、
誰かの声が聞こえる。
天使様からのお迎えってところかな?
大丈夫、今行_______
起きて!!!!!!!!
次の瞬間、僕のお腹にとてつもない衝撃が走った。
「うぶぉあ!」
既視感のある天井。
僕がこれまでの人生の半分はこの天井から始まっている。
「◼︎◼︎◼︎◼︎!!朝だよ!なにしてんのまじで。」
そう言うのは僕の妹。
あぁ、妹はどうしているのかな。
僕はもう会うことが出来ないけれど、、、。
「なに?なんでさっきからボケッとしてるの?ビンタするよ?」
ベチベチベチベチ
往復ビンタをされている。痛い。
これは現実?
「あのさぁ!今日は魔王討伐の旅に出る日じゃないの?!もう遅刻の時間だよ!人様待たせんな。」
まさか。
信じられないけれど、僕は戻ってきたのか?
魔王を討伐した、あの旅の始まりへ。
「キーーーッ!!!!!もうさぁ!さっきから人の事無視しないでよぉ!いくらクールな無口(笑)だからって人の事無視しないでよ!!」
「あっ、、、ごめん。」
妹にせかせかと準備をするように言われる。
どうして?僕は何故戻ってきたんだ、、、。
現状があまり把握できない。
でも、本当に戻ってきたのならば、また。
仲間も、本当の意味で国も救える。
「はいいった行った!!爆速で走って!」
「うん、、。」
意外に自分は冷静だった。
困惑よりも先に仲間や国を救う事が思い浮かんだ。
これも勇者の運命ってやつかな。
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「ねー、勇者ってこんな遅く来るもんなの?」
ヤマトナデシコ、と言われていそうな艶のあるストレートな長い黒髪をいじいじしている女の子。
「、、、遅刻魔、、、」
深くフードを被り自身の身長より大きい杖を持つ彼女はきっと魔法使いのあの子だ。
「まぁ噂によれば勇者様は無口な上に人とも関わりを持つのが好きでない人らしいですし。
パーティなんか組まず単独で行っちゃったんじゃなぇすかぁ?」
そう言う彼は端正で中性的な顔立ちをしている。
男にしては比較的長い銀髪が特徴的だ。
間違いない。
「えー!!困るよー。私たちどうすればいいのさ!」
景色が徐々に早くなる。
僕の足は自然と浮き足立っていた。
遠くに見えるのはいつか僕と共に旅をした仲間達。
あの様子だと随分と僕は遅刻しているみたいだ、、、。
懐かしい思い出が蘇る。
海とサクラを見た時のキユリのあの嬉しそうな表情。
変なキノコをソウと食べ、初めて年相応の感情を感じた記憶。
キララと、みんなと見た都会では見られない満点の星空。
どれも大切な思い出だ。
"前回"、僕は約束の3時間位前から待っていたっけ。
人とあまり関わらなかった故の悲劇だ。
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「マジ!?3時間前から待ってたの?嘘でしょ?」
「あははははは!!僕らの勇者様は思ったより愉快な方のようで。」
(え、、、時間は早ければいいはずでは。
こんな事なら妹に聞くべきだった)
「、、、、、自己紹介、、、しよう」
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「、、、あの人、多分勇者」
「マジで!あ、絶対そうだよ!」
見慣れた顔、鼓膜に焼きついたあの声。
間違いなく、僕の仲間達だ。
「勇者様〜初手から遅刻とは、中々にやりますね」
でも、様子を見るに彼らに記憶はなさそうだ。
だけど
こうやって会えた事が奇跡なんだ。
もう二度と叶わなかったはずの再会。
あらゆる気持ちがとめどなく溢れてきて僕の喉から我先にと主張しようとしてくる。
そんな気持ちを押し込めて、僕は君たちに言うんだ。
「、、、、っ遅刻してごめん。僕の名前は______」
(速すぎる?そんな事はいい。僕の名前は_______)
◼︎◼︎◼︎◼︎____________これから君たちと共に旅に出る勇者だ。




