↪︎やり直し勇者は今度こそ世界を救う。

勇者はなぜ人を救い助け圧倒的な善として生きるのか。
ある勇者は、自我よりも勇者として生きる事をずっと優先してきた。
困っている人がいれば助けるし、魔王がいるならば必ず討伐へ向かう。
なぜ彼がそんな善行をするのかと問われれば「勇者だから」と答えるしかない。
なぜなら彼は勇者だから。
そして彼はこの世で最も強くなった。
王の命に従い、誰も疑う事なく、民衆に嫌われても
最後には魔王を討伐するという偉業を成し遂げた。
しかし最後に残った物は何もなかった。
残った物は旅をした過程で得た「勇者以外の側面を持つ自分」のみ。
魔王を討伐した今勇者の肩書きは無意味に等しい。
魔王を倒した時の死に際に彼は後悔する。
あまりにも失う物が多すぎた。
仲間の命も自らの命すらも失ってしまった。
故に死の間際、勇者は「やり直し」を願った。
これは勇者でない彼が今度こそ、世界を、仲間を救う話である。