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人じゃなくていいのかもしんない


 カミングアウトしよう。


 私は重度のコーヒー中毒者だ。

 カフェイン中毒者ではない。コーヒー中毒者である。そこんとこよろしく。


 そんなわけで、私はシラフでは仕事ができない。


 カフェインが切れると落ち着かなくなるからだ。仕事に集中できなくなる。


 休憩室のマグカップの中にコーヒーが入ってないと不安でしょうがない。仕事で失敗しちゃうんじゃないだろうかとビクビクしてきちゃう。

 そんなレベル。完全に依存症だ。やばいよね。



 一時期、絶望的に人手不足な中、補充とは名ばかりの人員補填をしてもらった。

 結果的には予想通りほとんど戦力にはならず、余計な仕事と心労とストレスが増やされるだけで、より過酷な精神的ワンオペ地獄を経験した。


 職場ではいつもインスタントコーヒーを常用しているが、日々の激務でポンコツ化していく私の心と舌と鼻は、次第にインスタントコーヒーの香りも味も感じなくなっていくのであった。


 そのため、職場で飲むコーヒーをグレードアップしてドリップコーヒーに変えた。


 日常に彩りを。

 地獄に華やぎを。

 職場に喫茶店を。



 そんなこんなで選んだのが、AGF㈱の『ちょっと贅沢な珈琲店』シリーズだった。


 知ってる?

 ちょっと贅沢な珈琲店シリーズには、購入者だけが味わえる特別な秘密があるんですよ。


 何の気なしに家からピックアップしてきたドリップパック。もちろん贅沢な珈琲店のやつです。気分を上げるためにもスペシャルブレンドです。


 深みのある藍色に、ゴールドがよく映える素敵な外装パッケージです。さすが贅沢と銘打つだけの見た目です。



 職場のマグにセットしようと袋を開けようとして、ふと気づきました。


 パッケージに喫茶店のマスターみたいなおじさんのイラストが描いてあるんです。


 そこにいるマスターが、私に語りかけてきたんです。


『一人で抱え込んではいけませんよ』って。


 ……え? マスター……?

 マ……マ……マスタ――――――――っ!!(号泣)


(この瞬間からBGMはMETALLICAのMaster of Puppetsでよろしく)


 マスター! マスター! なんで私が大変なこと知ってんの?

 マスター! マスター! そうなんだ! もう辛くて仕方ないんだ!

 マスター! マスター! わかってくれるのはマスターだけだよ!

 マスター! マスター!



 その日から毎朝、職場でマスターから優しい言葉をかけてもらうのを糧に仕事をがんばりました。


 おみくじよろしく、ランダムで選んだドリップに書かれてるマスターの言葉を、今日一日のオラクルとして胸に秘め、仕事を耐え抜くのです。


 そして日常ルーティンが終わり、職員がみんな帰ったあと、もう一杯コーヒーを淹れ直し、素敵なマスターから労いの言葉をもらって泣きそうになりながら、日中に手をつけられず、たまりまくった管理業務にとりかかるのでありました。



 不思議なもんで、優しい言葉っていうのは、別に人からもらわなくても嬉しいものなんですね。

 

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