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精霊士養成学園の四義姉妹  作者: 霧島まるは


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103/142

103.キロヒ、休暇の予定が決まる

「そもそもこんなぬるい奴が、北方の寒さに耐えられるワケがねぇ。おとなしく、秋の人間を探せよ」

 ニヂロは、かなりキロヒの希望通りの話を展開した。話の前半では、彼女を貶めていたが。

「ふむふむ、では北方の少し手前のあたりがちょうどいいかもしれない。仲のいい同級生でその辺りの出身はいないか?」

 それを受けてキーが、現実的な話を詰め始める。しかし、内容は現実的ではなかった。

 仲のいい同級生──それそのものが難易度を跳ね上げているのである。キロヒの交友関係は狭い。出身を知っているのは、スミウとクロヤハ(眼鏡)だけである。

「キロヒ、一人いる」

 そこにクロヤハが入ってきた。

シテカ(狩人)だよ」

 誰のことかと思ったら、まさかの彼である。

「そういや、方向は一緒だったな」

 ニヂロが言う。シテカは手前の協会で下りたらしいが。彼の相棒は春の精霊。けれど、出身は少し寒いところのようだ。

「ああ、そういえばイヌカナの方にいたか。では、今度の秋休暇はシテカを頼って一緒に行くといい。宿泊や食事は、協会に申請をして亜霊域器を使えば無料だ」

 キーがさらっとキロヒの予定をまとめてしまった。今度の長期休暇と言えば、サーポクに島に誘われていたのだ。イミルルセも一緒に。

 これが「ある人物の自由を犠牲にすれば」ということか。キロヒは気分が重くなった。二か月も知らない土地で、一人かもしくはシテカと二人というのは荷も重い。

「二か月は長すぎます……」

「私もそう思う」

 キロヒの不満を、キーはあまりに簡単に受け止める。自分が言い出したというのに。

「長期休暇なので、少し融通は効かせられませんか?」

 クロヤハの優しい言葉に、キロヒはありがたく思いながら、首を上下に振った。

「見合いが成功した場合は、この長期休暇を有効に使いたい、というのがある。学園では授業も行われておらず、残っている生徒も少ない。人目が少ない内に、直接精霊と引き合わせて友人にしてしまいたい」

 キーの要望は強行軍だ。長期休暇でキロヒは北方へ向かい、謎精霊の相手を探し、成立したら学園に連れて戻る──誰かの協力なしでは不可能である。

「では見合い相手が見つかったら、連絡板で私に連絡したまえ。迎えに行く。その後、学園に連れて行き精霊と友人になり、それぞれ行きたい方向へ送る。これならいいか?」

 譲歩。圧倒的譲歩である。幻級精霊士が、キロヒにここまで至れり尽くせりだ。実際はキロヒではなく、謎精霊を重要視しているが、ついでに好待遇なのはありがたい。逆に言えば、もうこれ以上彼女が拒むことはできない。

「わ、分かりました」

 ここで手打ち。取引としては、十分勝利だとキロヒは納得した。見合い相手の子供も、きっとキーが保護なり何なりしてくれると丸投げできる。

「君たちのところにいると、本当に退屈しない」

 幻級精霊士は、ほんの少しうらやましそうに上弦の三日月の目を細めて二日月にした。


「というわけで、キロヒの長期休暇は、一度シテカの故郷に一緒に向かうことになったよ」

 夕食時、クロヤハの説明のおかげでキロヒは楽をした。今日も夕食時間を超えるほど、キーが図書室にこもっていたせいで、ばたばたと食堂で集合することになった。

「……」

 シテカがスプーンの手を止めてキロヒを見る。

「よろしくお願いします」

「案内はする。構えない」

 キロヒの定型文のお願いに、本音で「何のお構いもできません」と返される。案内をしてもらえるだけ、マシだと思うしかない。

「シテカ……相手が見つかったら、あの人が迎えに来るよ」

 小声で内容をぼかしつつも、クロヤハがキーの話をする。ぴくりと、スプーンを持つ手が動く。

「森で戦えるのか?」

「い、いや……それはどうだろうか」

 クロヤハとしては、キーと会えるだろうから少しはキロヒの手伝いを頼む、という形にしたかったのだろう。しかし、相手はシテカ。キーが来るなら、森での戦いを知りたいと思っているのだろう。

 キロヒは思わず無言で首を振った。幻級精霊士を、実践で戦わせないでほしい、と。森が吹っ飛んだらどうするのか。

「戦えるんなら、ワイも行く」

「迎えにだから。迎えに。戦いに行くわけじゃないよ」

 そこへ、おかわりを抱えて戻ってきたヘケテが参入するので、クロヤハは慌てて止めた。キロヒは見合いに同席する親戚くらいの感覚だというのに、彼らは武器を持って乱入しようとする。

 言葉の噛み合わないシテカと同道することに、キロヒはいまから心配を覚え始めていた。

「キロヒは、うちの島には来ないと?」

「いまの話からすると……早く終われば来られるのかしら?」

 サーポクとイミルルセの会話に、キロヒは癒しを覚える。

「早く終わったら、南に向かえるようにします」

「待っとるとよー」

「無理はしないでね」

 柔らかい二人に言葉を受け止められ、キロヒは頬を緩めた。

「休暇中、ニヂロの連絡板を借りられないかしら?」

 イミルルセが次に話を振ったのは、一人で北方へと帰るニヂロに。

 連絡板は現在、三対。

 一対目はキロヒとニヂロが共同開発したもの。二対目は、キロヒとキー。三対目がクロヤハとキーだ。

 途中参加するキロヒがいつ到着するかなど、確かに連絡板があれば都合がいい。ニヂロに借りられれば、それが一番簡単だった。

 ニヂロは少し不機嫌な顔になってこう言った。

「いいぜ、いくら出す?」

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